10月25日、ドイツの大麻企業がスイスで行なわれている嗜好用大麻の試験販売プロジェクトの一環として、バーゼル=ラント準州において嗜好用大麻のディスペンサリーをオープンすることを発表しました。合法的な嗜好用大麻の専門販売店が誕生するのはこれがヨーロッパで初めてのことです。
2021年、スイスは嗜好用大麻の試験販売プログラムの実施に向けた改正法案を施行。このプログラムは、嗜好用大麻の合法化が大麻の消費パターンや健康に与える影響などを調査することを目的としています。
このプログラムはすでにバーゼルとチューリッヒで実施されており、今後ローザンヌ、ベルン、ジュネーブでも開始される予定。いずれも大麻の販売は薬局やソーシャルクラブにおいて行なわれることになっています。
今回新たにスイス連邦公衆衛生局(FOPH)は、バーゼル=ラント準州のプログラム「Grashaus Projects」を承認。同州はスイスで嗜好用大麻の試験販売を行う6つ目の地域となりますが、他の地域とは異なり、ややユニークな特徴を有しています。
バーゼル=ラント準州のプロジェクトはスイス公衆衛生・依存症研究所(ISGF)の主導により行なわれますが、大麻の販売はドイツを拠点とした大麻企業「サニティー・グループ(Sanity Group)」によって行なわれます。このようにして国外の企業がプログラムに参加するのは、今回が初めてとなります。
さらに、他の地域のプログラムとは異なり、嗜好用大麻の販売は2軒のディスペンサリーにて行われる予定です。ヨーロッパではマルタとルクセンブルクが嗜好用大麻を合法化していますが、現時点で大麻の販売は行なわれていないため、このような店舗はヨーロッパでも初となります。
店舗の運営は国外企業により行なわれますが、販売される大麻に関しては他の地域のプログラムと同様、スイス国産のオーガニックな大麻製品が用いられます。大麻の花製品の小売価格は、THCの含有量によって8〜12スイスフラン(約1,300〜2,000円)になる見込みです。
同プログラムのために大麻の生産を行うスイスエキストラクト(SwissExtract)社のCEOステファン・ストラッサー(Stefan Strasser)は「私たちの主張は、健全な科学的研究の基礎として、高品質の製品を高い納品信頼性で提供することです。オーガニックの品質、”スイスらしさ”、そして透明性を重視しています」
「基本的な原材料の栽培には天然物質のみを使用しているため、汚染物質のない製品を保証します。当社ではバリューチェーン全体がひとつの屋根の下で統合されており、栽培、加工、包装はスイスで独占的に行われます。さらに、大麻の種子から最終製品までの製造工程も記録しています」と述べ、大麻製品の品質と安全性を強調。
プログラムにはバーゼル=ラント準州に住む健康な成人3,950名までが参加できますが、この人数は他の地域と比べて大規模となっています。承認された参加者はカードを掲示することで、合法的に大麻を入手することが可能です。
プログラムは年内に開始され、5年間実施される予定。大麻の消費行動や参加者の心身の健康に関する調査は、3〜6ヶ月ごとに行なわれます。
スイス公衆衛生・依存症研究所の科学責任者であるマイケル・シャウプ(Michael Schaub)博士は、プログラムについて「この研究から得られる知見は、大麻の責任ある使用に関する情報に基づいた健康政策の議論に貢献し、長期的な規制に関する意思決定の基礎となります」
「さらに、メンタルヘルスに問題を抱えているような高リスクの使用者に対し、適切な州のケアセンターを紹介するために良いアクセスを提供できるかどうかを調査したいと思っています」と説明。
サニティー・グループのCEOであるフィン・ヘンゼル(Finn Hänsel)氏は「バーゼル=ラント準州での研究が承認され、大麻植物とその多様な用途に関する社会的受容と知識の伝達に貢献する機会を得たことを嬉しく思います。 国際的な大麻企業としての知識と経験を活かし、スイス公衆衛生・依存症研究所のパイロット・プロジェクトを支援するという私たちの野心は、主に大麻分野の研究促進に基づいています」
「会社の設立から変わらず、私たちの目標は大麻の利点をさらに研究し、大麻の汚名を返上することです。私たちはスイス公衆衛生・依存症研究所とともに、健康保護、未成年の保護、予防に基づいた(大麻の)安全な販売のためのコンセプトを開発しています。研究から得られる興味深い結果に期待しています。この研究結果は国際的にも注目されるでしょう」と述べています。
スイスと同じように、ヨーロッパでは嗜好用大麻の試験販売を実施しようとしている国が他にもあります。
オランダは今年12月より、国内で大麻の購入・使用が容認されている「コーヒーショップ」において、合法大麻の試験販売を開始する予定。
今年7月に個人使用目的での嗜好用大麻の所持・栽培を合法化したルクセンブルクは現在、嗜好用大麻の試験販売に向けた規制の確立に向け動いています。
ドイツは現在、嗜好用大麻の合法化法案について国会審議を行っていますが、年内には嗜好用大麻の試験販売に向けた法案も発表される見込みとなっています。
ヨーロッパで初めて嗜好用大麻を合法化したマルタでは、嗜好用大麻を合法的に購入することができる非営利の「大麻クラブ」の利用が認められています。現時点でまだ利用可能な大麻クラブは存在しませんが、早ければ来年3月までに国内初の大麻クラブが誕生する予定です。
なお、スイスは10月9日、HHCP、デルタ9THCP、デルタ8THCP、H4CBDなどの半合成及び合成カンナビノイドを麻薬に指定。これらの製品の製造、取引、流通を禁止しています。
一方、スイスの首都ベルンは6月、コカインの試験販売プログラムの実施に向けた法案を可決。ただし、プログラムの実施にはスイス連邦政府でも同様の法案が承認される必要があります。
Sanity Group「First legal cannabis dispensaries in Europe: Sanity Group and ISGF get green light for a cannabis study in Swiss canton Basel-Landschaft」https://sanitygroup.com/en/2023/10/25/press-release-graushaus-projects-green-light-for-cannabis-study-in-switzerland-basel-landschaft/
MJBizDaily「Recreational cannabis stores coming to Switzerland as part of experiment」https://mjbizdaily.com/recreational-cannabis-stores-coming-to-switzerland-as-part-of-experiment/
leafie「Europe’s first legal cannabis dispensary to open in Switzerland this year」https://www.leafie.co.uk/news/europes-first-cannabis-dispensary-switzerland/
Newsweed「La Suisse interdit les derniers cannabinoïdes synthétiques (HHCP, THCP, H4CBD…)」https://www.newsweed.fr/suisse-bannit-derniers-cannabinoides-synthetiques/