10月18日、ドイツ連邦議会は嗜好用大麻合法化法案について初の国会審議を行いました。
ドイツは今年4月、嗜好用大麻合法化に向けた計画を発表。計画は2段階に分けられ、第1段階では大麻の所持と栽培を合法化するとともに非営利の大麻栽培クラブの利用を可能にし、第2段階では特定地域の少数店舗において嗜好用大麻の試験販売プログラムを実施する予定です。
7月には第1段階の計画を実現するための草案が提出され、8月にドイツ連邦内閣がこれを承認。正式な法制化に向け、法案の舞台は国会に移されました。
今回ドイツ連邦議会で開かれた第一読会では、大麻合法化法案について45分間の討論が行なわれ、活発な意見が交わされました。
ドイツ社会民主党(SPD)のカルメン・ヴェッゲ(Carmen Wegge)連邦議員は、ドイツにおいて大麻の禁止が失敗であったことを強調。違法大麻は有害物質によって汚染されていることが多く、その利益は組織犯罪の支えとなっていること、そして、規制がないために未成年がこのような大麻を入手・消費していることを指摘しました。
「これは受け入れがたい状況です」「この法案と共に、私たちは新しい道、勇気ある道、大麻を消費する人々の側に立つ道を描いています。私たちは国家による抑圧に反対し、教育と自由を与える進歩的な薬物政策を決定したのです」
緑の党のキルステン・カパート=ゴンサー(Kirsten Kappert-Gonther)連邦議員も同様に、大麻の禁止がかえって国民を危険にさらしていると指摘。闇市場は安全性を確認する検査を行なっていないため、大麻製品の成分や効能についての情報を提供していないと説明。また、大麻を合法化して販売時にIDチェックを義務付けることで、未成年へのアクセスを予防できると述べました。
「違法市場が繁栄する代わりに、私たちは今、大人が消費できる合法的な代替品を作り出しているのです」
一方、現在の法案では、大麻の栽培クラブは学校・運動場・公園から200m以内に設置できないとされています。これに対し、大麻業界の関係者らは法案の公開以降、栽培クラブの設置が事実上不可能であると批判してきました。
こういった声がある中、自由民主党(FDP)のクリスティーネ・リュトケ(Kristine Lütke)連邦議員は、法案の実現可能性について再検討する必要があるとし、今後の審議の中で法案がさらに洗練されていくことを望むと述べました。
なお、今回の国会審議に先立ち、大麻合法化を阻止するための2つの動議が提出されました。
1つ目はキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)によるもので、合法化は大麻の消費増加による危険をもたらすため、予防と教育を強化した政策を行うべきと主張。同政党は「25歳までの若者は脳が未発達であるため、特にリスクがある」とも述べました。
これに対し、カール・ラウターバッハ(Karl Lauterbach)保健相は、Xにて以下のように反論しています。
「(大麻の禁止政策の下で)”25歳まで”の消費はここ数年増え続けています。同時に、薬物関連の犯罪や有毒なTHC濃度は増加傾向にあり、(大麻に混入される)添加物も増えています。他の問題と同じように、私たちはこの問題を嘆いたまま何もしないでいいのでしょうか?」
Der Konsum „bis zu 25“ nimmt seit Jahren zu. Gleichzeitig steigen Drogenkriminalität, toxische THC Konzentrationen und es gibt mehr Beimengungen. Sollen wir auch hier, wie bei anderen Themen, das Problem beklagen und nichts tun? Wenn Cannabis, dann sicher und ohne Dealer https://t.co/9xMNHprXPg
— Prof. Karl Lauterbach (@Karl_Lauterbach) October 18, 2023
もう1つの動議は、右派政党であるドイツのための選択肢(AfD)によるもの。同政党は嗜好用大麻を合法化するのではなく、ドイツ国民の間で好評となっている医療用大麻の拡大に焦点を当てるべきだと主張しています。
具体的に、同政党は医療用大麻を国民医療法に組み込む新法を起草することを提案。これにより、大麻の恩恵とリスクに柔軟に対処することが可能となり、患者の費用負担を軽減することができると述べています(ドイツは2017年に医療用大麻を合法化している)。
このような意見について、大麻産業関係者の多くが「前進」と評価。ドイツの医療用大麻企業「Demecan」の共同創業者兼CEOであるコンスタンティン・フォン・デア・グローベン(Constantin von der Groeben)博士は、キリスト教民主・社会同盟も医療用大麻に関しては前向きな姿勢を見せており、このことは「5年前と比べて大きな変化である」と述べています。
今後、大麻合法化法案は11月6日に保健委員会にて再検討・修正が行われる予定。11月16日には第2読会と最終読会が行なわれる見込みです。
※2023年11月16日追記
11月16日に予定されていた第2読会と最終読会は、12月中に延期となりました。
現時点でドイツの大麻合法化法案では、18歳以上のドイツ国民における25gまでの大麻の所持と3株までの大麻の個人栽培が認められています。
また、18歳以上のドイツ国民は会費を負担することで、特定の施設内で大麻を集団で栽培する非営利の「栽培組合」に加入することができます。栽培組合では、21歳以上であれば1日25g、1ヶ月50gまでの大麻を受け取ることが可能。18〜20歳では30g/月までとなり、THC含有量も10%未満に制限されます。
ドイツは年内に同法の成立を目指しており、成立すれば2024年初頭から施行される予定。また、大麻合法化計画の第2段階(嗜好用大麻の試験販売)の法案に関しても、年内に発表される見込みとなっています。
オラフ・ショルツ(Olaf Scholz)首相は8月、テレビ局のインタビューで嗜好用大麻の合法化について「私たちが踏み出そうとしているこの一歩は、まさに正しいことをしています」と発言。
昨年9月に公開された調査では、ドイツ有権者のうち61%が嗜好用大麻の合法化を支持していることが明らかにされています。
Marijuana Moment「German Lawmakers Hold First Debate On Marijuana Legalization Bill」https://www.marijuanamoment.net/german-lawmakers-hold-first-debate-on-marijuana-legalization-bill/
Business of Cannabis「Germany’s CanG Bill Starts Parliamentary Process, Remains on Schedule as Key Issues Addressed」https://businessofcannabis.com/germanys-cang-bill-starts-parliamentary-process-remains-on-schedule-as-key-issues-addressed/
CannaReporter「Germany: Bundestag begins discussion on bill to legalize cannabis」https://cannareporter.eu/en/2023/10/20/germany-bundestag-started-discussion-on-the-bill-to-legalize-cannabis/
Newsweed「Le projet de légalisation du cannabis en Allemagne fait un pas de plus vers son approbation」https://www.newsweed.fr/projet-legalisation-cannabis-allemagne-approbation/