EU加盟国の中で一番規模の小さな国であるマルタ共和国では、現地12月14日(火)に賛成36票、反対27票で成人の嗜好用大麻合法化法案を正式に議会で承認していましたが、12月18日(土)にジョージ・ヴェラ(George Vella)大統領が法案に署名し、正式に法案が発効されました。
法改正を伴って合法化を行ったのはヨーロッパで初めてのことです。(オランダを筆頭に合法化を感じさせる国がヨーロッパにはありますが、それらは法律上は違法のままでありながらも個人使用目的では取り締まらないという寛容政策を取っています。)
野党は法案の阻止を求め、大統領に署名を行わないよう求めていましたが、大統領は議員向けの演説とプレスリリースの中で、大統領の基本的な役割は政治的な安定を維持することであると説明し、以下のように述べています。
「どんな大統領でも、議会で民主的に可決された法律を無視し、気まぐれに憲法上の危機を作り出し、政治的な不安定さを引き起こすことはできません。私たちの憲法は、大統領に法律の最終決定権を与えるものではありません。さもなければ、何が法律になるかを気まぐれに決める独裁者を作り出すことになります。」
マルタの嗜好用大麻法案の重要箇所は以下の通り。
■ 18歳以上の7グラムまでの大麻の所持を認める
■ 居住人数に関わらず1世帯4株までの自宅での栽培を認める(他人から見えないようにすることが条件)
■ 乾燥大麻を50グラムまで自宅で保管することを認める
■ 自宅で栽培できないまたはしたくない場合に、非営利団体として特別に設立された個人のみを会員とするカンナビスクラブでの購入を認める(18歳未満は、会員になることも施設内に入ることもできない)
■ 大麻に関するライセンスを発行する規制機関を新たに新設し、同機関がカンナビスクラブの大麻の栽培、乾燥、輸送など品質に関する要件を定義する
■ カンナビスクラブは、新たに新設された大麻規制機関に登録し許可を得なければいけない
■ 学校や若者が多く集まる場所から250メートル以上離れた場所にカンナビスクラブを設置しなければならず、大麻の宣伝や大麻文化に関連する看板や文字、絵などを表示することはできない
■ 会員制でカンナビスクラブは運営され、会員1人につき乾燥大麻を1日に7グラム、1ヶ月に50グラムまで、大麻の種子を月に20粒までを上限に販売が可能。また、複数のカンナビスクラブの会員にはなれない
■ 各協会の会員数は500人を上限とし、最大保管量は乾燥大麻500gまで
■ 会員の名簿は匿名で運営される
■ 7グラム以上の所持は50〜100ユーロの罰金
■ 18歳未満の目の前で大麻を使用した場合、300~500ユーロの罰金
■ 公共の場での喫煙は禁止
■この法案で認められている内容での大麻に関する犯罪履歴がある場合は、犯罪記録を簡単な書面申請のみで抹消することができる
■ 現在の法律でインド麻(Indian Hemp)と呼んでいる名称をカンナビスとし、THC含有量0.2%以下の製品はカンナビスに含まない
また、マルタ共和国の合法化法案では非営利のカンナビスクラブ以外の販売許可はされませんがドイツは販売も含めた嗜好用大麻合法化を行うと現在の連立与党が発表しています。
ルクセンブルクは、マルタ共和国と同様に個人の栽培と使用を合法化する法案を提出しており2022年初頭に国会で採決予定で、可決される見込みです。
2022年は、ドイツ、ルクセンブルクを始めヨーロッパ各地で大麻の法改正が行われる可能性が高いと予想されています。
嗜好用大麻は、国単位では2013年にウルグアイが世界で初めて合法化を行い、その後2018年にカナダが合法化。米国では州単位での合法化が進んでいます。