イギリスの大麻由来医薬品の処方、年間45%増加

イギリスの大麻由来医薬品の処方、年間45%増加

/

イギリスの医療サービスには、国が運営する国民健康サービス(NHS)と、私立病院や民間クリニックが運営するプライベート医療サービスの2種類があります。

NHSは税金で運営されており、加入者はGP(General Practitioner:日本で言うところのかかりつけ医)による診察料が原則無料。一方、プライベート医療サービスは自由診療となるため、医療費が高額という特徴があります。

イギリスでは2018年より医療用大麻が合法化されていますが、NHSで処方を受けることができるのはエピディオレックスナビロンサティベックスの3つの大麻由来医薬品のみとなっています。

最近新たにNHSのデータが公開され、2021年から2022年にかけ、これらの大麻由来医薬品の処方数が45%増加していたことが明らかとなりました。

最も多かったのは、多発性硬化症に関連した成人の筋痙縮に対し処方されるサティベックスで1,612件から2,546件と57%増加。

化学療法の副作用による悪心・嘔吐に対し処方されるナビロンは、398件から371件とやや減少。

難治性てんかんに処方されるエピディオレックスに関しては、わずか6件しか処方されていませんでした。

化学療法の副作用による悪心・嘔吐に対し処方されるドロナビノールなどの非正規医療大麻製品は、281件から407件へと増加していました。

このように、全体としてNHSによる医療用大麻の処方数は増加していたことが分かります。

しかし、労働党下院議員であり、医療用大麻の処方に関する全党議員団の共同議長であるトニア・アントニアッツィ(Tonia Antoniazzi)氏は議会で、保健省大臣であるスティーブ・バークレイ(Steve Barclay)氏に対し、「この状況は、相変わらず耐え難い状況です。製品の供給とコストの両方が家庭に大きな苦痛を与えており、子どもたちは絶望しています。私は保健相に対し、アクセス不足の危機に対する解決策を見出すための円卓会議を招集することを議論するよう強く求めます。2023年1月18日以降、私は大臣からの回答を未だに待ち続けています」と述べました。

ロンドンにある医療用大麻クリニック「サファイア・メディカル(Sapphire Medical)」が3月8日に公開した世論調査では、約180万人のイギリス国民が、慢性疼痛を緩和するために違法な大麻製品を使用していると推定され、2019年のパンデミック前の水準から29%の増加を示唆。

大麻製品が合法的に処方されることを約4分の1(24%)が知らず、41%が入手が困難だという印象を持ち、29%が高価だと思っているなど、大麻製品に対する認知不足とアクセスの困難さが露呈されました。

慢性疼痛のために違法な大麻を使用している人の平均費用は、月に156ポンド(約2万5千円)。一方、サファイア・メディカルで同じ用途でかかる費用は月平均で135ポンド(約2万1,700円)とより安くなっていました。

調査結果の中では、「違法に調達された大麻は、人が摂取しても安全なように製造されていることを保証するものがないため、個人の健康に対して潜在的なリスクがあること、また、犯罪行為に手を染めることで個人を危険にさらすことを患者や一般市民に啓蒙していきたいと考えています」と述べられています。

また、サファイア・メディカルの共同設立者であるミカエル・ソーダーグレン(Mikael Sodergren)医師は「専門医の処方により合法的な大麻で治療を受けることができるにも関らず、多くの人々が不必要に自分を危険にさらしているという事実は、イギリスにおける患者および医療関係者の意識が大きく欠如していることを示しています」とコメント。

認知不足もありますが、イギリスにおけるNHSによる医療用大麻へのアクセスはかなり限定的であり、多くの人がブライベート医療で高い費用をかけて、未承認の大麻製品にアクセスしているという現状があります。そのため、様々な民間クリニックが、医療用大麻をできるだけ安価に提供しようと奮闘しています

最近、イギリスでは国内初となるオンライン医療用大麻クリニック「トリートイット(Treat it)」が開設されたため、これにより今後アクセスや認知度がさらに改善されていくことが望まれます。

BusinessCann「NHS Licensed Medical Cannabis Prescriptions Grew 45% Last Year, But ‘Situation As Intolerable As Ever’」https://businesscann.com/nhs-licensed-medical-cannabis-prescriptions-grew-45-last-year-but-situation-as-intolerable-as-ever/

Sapphire Medical「Sapphire Clinics Updated Research on Illegal Cannabis」https://www.sapphireclinics.com/sapphire-clinics-updated-research-on-illegal-cannabis/

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

Recent Articles

米国医師会、違法薬物の非犯罪化を支持

現地時間6月12日、米国医師会(AMA)はシカゴで開催された年次総会において、違法薬物の非犯罪化を正式に支持する決議案を採択しました。 米国医師会は世界で最も権威ある医学会の1つであり、...

THC使用が終末期患者の生存期間延長と関連

ドイツの終末期患者のデータを分析した結果、THC治療を受けていた患者ではそれ以外の患者よりも生存期間が長かったことが明らかにされました。論文は「Medical Cannabis and Cannabinoids」...

南アフリカ、嗜好用大麻を合法化

現地時間5月28日、南アフリカ共和国のシリル・ラマポーザ(Cyril Ramaphosa)大統領は個人使用目的での大麻の所持・栽培を認める「私用目的の大麻法(Cannabis for Private Purposes Bill)」に...