スコットランド国民保険サービスが子宮内膜症に対するCBDオイルの治験に資金を提供

スコットランド国民保険サービスが子宮内膜症に対するCBDオイルの治験に資金を提供

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8月15日、ロンドンを拠点とするカンナビノイド医薬品会社「アナンダ・デベロップメンツ(Ananda Developments)社」は、子宮内膜症に対するCBDオイルの有効性を検証する治験のために、スコットランドのNHS(国民保健サービス)から30万ポンド(約5,600万円)の資金提供を受けたことを発表しました

子宮内膜症とは、何らかの原因で子宮内膜あるいはそれに似た組織が子宮以外の場所で発生・増殖する病気のこと。通常であれば、子宮内膜は月経周期に対応し、子宮の内側で増殖と剥離を繰り返します。しかし、子宮内膜症では卵巣、腹膜、ダグラス窩(直腸と子宮の間に存在するくぼみ)など、別の場所で子宮内膜様の組織が増殖を繰り返したり、炎症や癒着を引き起こしたりします。

子宮内膜症は20〜40代の女性に好発し、日本における有病率は約10%。女性ホルモンの1つであるエストロゲンの分泌量が増加したり、体内に大量の月経血が溜まることにより発症リスクが高まります。そのため、早めの初経、短い月経周期、経血が多いことは、子宮内膜症のリスク因子となります。

不妊と痛みが2大症状であり、痛みには月経を重ねる度に増強する月経痛、慢性骨盤痛、性交痛、排便痛などが含まれます。

治療としては、性ホルモンに働きかける薬が使用されます。病巣部がはっきりしている場合には、手術を行う場合も。痛みに対しては鎮痛剤が用いられます。

大麻や大麻に含まれる成分CBDは鎮痛作用を有することで知られています。このことから、今回アナンダ・デベロップメンツ社は、同社が特許を申請中のCBDオイル「MRX1」が子宮内膜症の痛みを緩和するかどうかを検証することにしました。

MRX1にはCBD以外のカンナビノイドは含有されていませんが、ミルセン、カリオフィレン、オシメン、リモネン、αピネンなどのテルペンが含まれており、アントラージュ効果が期待されます。

イギリス北部のスコットランドにあるエディンバラ大学の産科婦人科臨床講師であるルーシー・H・R・ウィテカー(Lucy H R Whitaker)博士が率いるこの研究では、子宮内膜症に関連した骨盤痛を有する女性100名を対象とした12週間の臨床試験が行われます。

参加者はランダムにCBD群とプラセボ(偽薬)群に振り分けられ、それぞれの薬を服用。その後、参加者は症状に関するアンケートに回答し、これをもとに有効性の評価が行われます。できる限り正確に評価を行うため、参加者と研究者はそれぞれどの薬を使用しているのか分からないようにされます(二重盲検ランダム化比較試験)。

この研究を行うために、NHSスコットランドは30万ポンドの資金をアナンダ・デベロップメンツ社に提供。この治験が成功すれば、今後イギリスにおいて、子宮内膜症に対するCBDオイルの処方が保険適用となる可能性があります。

アナンダ・デベロップメンツ社のCEOであるメリッサ・スタージェス(Melissa Sturgess)氏は「私たちの目的は、子宮内膜症に伴う疼痛に対する効果的で費用対効果の高い治療法として、NHSにMRX1が含まれるようにすることです」

「MRX1を用いたこの臨床試験にNHSから資金提供を受けることは、公衆衛生上の問題としての子宮内膜症の重要性を明確に表明するものであり、イギリスの公衆衛生機関が子宮内膜症やその他の複雑な慢性炎症性疼痛の潜在的治療薬として、CBDの使用に関心を寄せていることを明確に示すものだと考えています」

「慢性的で複雑な炎症性疼痛市場は最近、英国だけで少なくとも年間50億ポンド(約9,300億円)の価値があると推定されました」と述べています。

今回行われるのはCBDの有効性を検証する研究ですが、大麻そのものにおいては、すでに子宮内膜症に対し有益である可能性がいくつか示されています。

子宮内膜症の女性を対象としたカナダの調査では、大麻の使用により骨盤痛、胃腸障害、けいれん、吐き気、抑うつなどの症状が改善されたことが報告されています。

カナダのブリティッシュコロンビア大学の研究チームは今年4月、慢性骨盤痛を有する女性135名を調査した結果、大麻使用している女性のうち68.9%が高い鎮痛効果を実感し、73.8%が鎮痛薬を減薬していたことを報告。それ以外にも大麻の使用により、気分(75.4%)、睡眠(91.8%)、身体的健康(62.3%)、身体の可動性(70.5%)、メンタルヘルス(77%)、家庭生活(67.2%)、QOL(96.7%)において改善が報告されました。

また、イギリスでは、医療用大麻の保険適用を目的とした様々な治験が承認されています。

トップレベルの大学として知られるオックスフォード大学は、世界にある様々な医療機関と協力し、統合失調症などの精神病に対するエピディオレックスの有効性を検証する国際的な治験を今年中に開始する予定

今年5月には、国営病院が脳腫瘍患者を対象とし、大麻由来医薬品「サティベックス」を用いた大規模な治験プログラムを開始しました

今月初めには、最大5,000人の慢性疼痛患者を対象とした大規模治験を承認。この治験では、吸入用の大麻製品が用いられます。

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廣橋 大

精神病院に勤める現役看護師。2021年初頭より大麻使用罪造設に向けた動きが出たことをきっかけに、麻に関する情報発信をするようになる。「Smoker’s Story Project」インタビュアー。

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