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カナダ、多発性硬化症患者の半数以上が治療目的で大麻を使用

2022年3月1日、カナダにおける多発性硬化症患者の大麻使用状況を調査した論文が公開されました。その結果、回答者の半数以上が治療目的で大麻を使用していることが明らかになりました。

多発性硬化症は中枢神経に炎症を起こす自己免疫疾患です。運動障害、視力障害、感覚障害、排尿障害などの多様な神経症状がみられ、日本でも指定難病となっています。症状が良くなったり悪くなったりするのを繰り返し、全体として徐々に病状が悪化していきます。

※自己免疫疾患とは

本来は細菌やウイルスなどの異物を攻撃するはずの免疫細胞が、正常な細胞を攻撃してしまう病気の総称。

多発性硬化症患者の大麻の使用状況を調査した今回の研究は、2018年に嗜好用大麻を合法化してから、カナダにおいて初となります。

アンケートはメールにて行われ、有効回答者数は344名でした。このうち大麻を使用していると回答したのは180名(52%)、過去に使用したことがあると回答したのは35名(10%)、未使用者が129名(38%)でした。

大麻使用者は非使用者に比べて、多発性硬化症により日常生活に支障がみられており、OOLが低いことが分かりました。つまり、重症度の高い多発性硬化症の人ほど、大麻を使用しているということになります。

大麻の入手方法として多かったのは、認可された生産者(31.3%)や娯楽用の小売店(29.4%)でした。摂取方法の内訳は喫煙(26.9%)、ティンクチャーやカプセル、スプレー(30.7%)、お菓子や飲み物(36%)でした。なお、現在の使用者のうち73.8%が、医療用の大麻製品を毎日使用していると報告しています。

大麻を使用する目的として最も多かったのは睡眠の問題(84.1%)で、次いで痛み(80%)、痙縮(68.4%)、ストレス(66.5%)、疲労(59%)となりました。現在の使用者のうち、8割以上が痙縮、痛み、睡眠の問題、抑うつ気分、ストレスに有効であると回答しました。また、5〜8割の人が不安、頭痛、疲労に有効であると回答しました。

副作用として多く報告されたのは、眠気(57.2%)、鎮静(48.8%)、集中力の低下(28.4%)などでした。ただし、これらの副作用が頻繁にみられると回答した人は20%未満にとどまっています。

多発性硬化症の治療として大麻を使用したことのない人の理由として多かったのは、効果があることを知らなかった(34.4%)、必要性がなく、興味がなかった(15%)、社会的スティグマがあったから(14.4%)、でした。

また、元使用者が大麻の使用を中断した理由として多かったのは、コストやアクセスの問題(34.4%)、求めている効果が得られなかった(28.6)、好ましくない副作用(17.1%)でした。

2019年、医療用大麻のみが合法であるデンマークでも、多発性硬化症の患者に対し同様のアンケートを実施しています。有効回答者2009名のうち、およそ半数(49%)が少なくとも1度は大麻を使用しており、主な使用理由は痛み(61%)、痙縮(52%)、睡眠障害(46%)の改善でした。

さらに多発性硬化症に対し大麻を使用していない人の約半数(44%)が、嗜好用大麻が合法化されれば大麻の使用を検討すると回答しています。これは医療用大麻が合法であっても、アクセスに困難さがあることを意味していると考えられます。

多発性硬化症は自己免疫疾患であるため、急性増悪時には大量のステロイドを使って治療が行われます。また症状がやわらいだ時でも、神経の炎症は継続しています。

大麻はカンナビノイド受容体を中心に作用することで、免疫調節作用や抗炎症作用があることが、数々の研究により明らかになってきています。今回の研究からも示されてように、多発性硬化症の人(特に、重症度が高くQOLが低下している人)にとって、大麻は代替療法の1つになると言えそうです。

なお、多発性硬化症に対しては、サティベックス(THC:CBD=1:1を含有した口腔用スプレー)というカンナビノイド医薬品が、承認された国で使用されています。

廣橋 大

精神病院に勤める現役看護師。2021年初頭より大麻使用罪造設に向けた動きが出たことをきっかけに、麻に関する情報発信をするようになる。「Smoker’s Story Project」インタビュアー。

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