ニュージーランド初 研究目的でのマジックマッシュルーム栽培を許可

ニュージーランド初 研究目的でのマジックマッシュルーム栽培を許可

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10月26日、ニュージーランド先住民が主導する共同研究チームと製薬会社「ルア・バイオサイエンス(Rua Bioscience)社」は、研究目的でマジックマッシュルームを栽培するライセンスがニュージーランド保健省によって承認されたことを発表。このような認可はニュージーランド国内で初めてのものとなります。

マジックマッシュルームとは、主に幻覚成分「シロシビン」を含むキノコのことを指します。

近年シロシビンは様々な研究により、うつ病、不安障害、PTSD、依存症などの治療において有望視されてきています。実際にオーストラリアは今年7月より、難治性のうつ病に対するシロシビン治療を合法としました

シロシビンはニュージーランドでクラスAの違法物質として扱われています。しかし、ニュージーランドの医師は医薬品の規制・監督を担当する政府機関「Medsafe」から許可を得ることで、シロシビンを含む未承認薬を投与することが可能となっています。

とはいえ、現在までにニュージーランドでシロシビンを処方された人は存在しません。一方、臨床試験でシロシビンを使用するための申請はこれまで3件あり、いずれも過去1年半以内に申請が行なわれています。

マジックマッシュルームには種類がありますが、今回栽培が承認されたのはニュージーランドの固有種である「サイロシベ・ウェラロア(Psilocybe Weraroa)」です。サイロシベ・ウェラロラには何千年もの間、マオリの人々(ニュージーランドの先住民)によって宗教的儀式などで用いられてきました。

ランギワホ・マラエ(Rangiwaho Marae)が主導する共同研究グループはこれまで、シロシビン等を用いた臨床試験の計画を主導(※マラエとは、マオリ民族の中心となる場所であり、集会や儀式などが行なわれる)。

この共同研究グループには、ロンゴア(マオリ文化における伝統的な自然療法)の開業医ネットワーク、健康科学研究所(ESR)、オークランド大学ワイカト大学、地域の関係者などが含まれます。

今回承認されたライセンスはマジックマッシュルームの栽培研究のみを可能とするものであり、臨床試験を実施するにはまた別途ライセンスが必要となります。

健康科学研究所は栽培研究において、ニュージーランド固有のマジックマッシュルームに含まれるシロシビンやその他の化合物の含有量を測定する分析試験サービスを提供する予定。これにより、将来行なわれる臨床試験においてマジックマッシュルームの正確な投与を可能にすることを目指します。

ライセンスを取得した共同研究グループとルア・バイオサイエンス社は特に、シロシビンが覚醒剤やその他の依存症に苦しむ人々を救うことに期待しています

ランギワホ評議会のジョディ・トロア(Jody Toroa)氏は「私たちのファナウ(マオリ文化における家族やコミュニティ)のために、この機会が得られたことを大変嬉しく思います」

「これらのタオンガ(貴重なもの)はアトゥア(神)から賜ったものであり、私たちは何世紀もの間、癒しと健康のためにこれらを使ってきました。私たちはトフンガ(専門家)から、タオンガがどのようにして染み付いた習慣や役に立たない考え方を変え、新たな可能性を開くのに役立つのかを学んできました」とコメント。

ルア・バイオサイエンス社のCEOであるポール・ナスキー(Paul Naske)氏は「オーストラリアや他の管轄区域が、シロシビンを用いた革新的で人生を変える可能性のある医学研究を受け入れているのを見るのはエキサイティングなことであり、ルア・バイオサイエンス社がこのような素晴らしい国家的共同研究の一翼を担えることを嬉しく思います」と述べました。

なお、ルア・バイオサイエンス社はヨーロッパやオーストラリアにおいて、大麻由来の医薬品も販売しています。

同社でプロジェクトの規制顧問を務めるマヌ・カディ(Manu Caddie)氏は、保健省がマジックマッシュルームの栽培許可を出したことは、サイケデリクス(幻覚剤)とその潜在的な治療価値に対する世界的な考え方の変化を反映していると語りました。

ニュージーランド政府は現時点でサイケデリクス治療を支援する意欲を示していないものの、政府機関であるニュージーランド保健研究評議会は独自にサイケデリクス研究を支援しています。

例えば、同政府機関はランギワホ・マラエの臨床試験プログラムに対し、1年半で30万ドル(約4,500万円)の資金提供を行っています。

シロシビンを始めとしたサイケデリクスの有望性は、世界レベルで日々高まっています。

米国食品医薬品局(FDA)はMDMAとシロシビンによる治療を「画期的治療薬(Breakthrough Therapy)」 に指定しており、今年5月には米国医師会(AMA)がこれらの治療に対する医療コード(CPTコード)を承認

最近では新薬誕生に向けた最終段階の治験である「第三相試験」において、MDMAを用いた治療が中等度〜重度のPTSDに奏功したことが再度報告され、早ければ来年にもFDAに承認される可能性が出てきています。

また、今年5月に米国国立衛生研究所(NIH)は、物質使用障害に対するサイケデリクス治療の研究に150万ドル(約2億2,500万円)の資金提供を行うことを発表

ヨーロッパでも、欧州議会議員らがEU(欧州連合)でサイケデリクス治療を推進するための新たなグループを発足するなど、活発な動きが見られてきています。

日本でも大手製薬会社である大塚製薬が最近、幻覚剤医薬品企業の買収を明らかにしました

New Zealand Doctor「First Licence for Psilocybe (Magic Mushroom) Cultivation in NZ」https://www.nzdoctor.co.nz/article/undoctored/first-licence-psilocybe-magic-mushroom-cultivation-nz

NZ Herald「First medicinal licence granted for indigenous magic mushrooms: can they help P addicts?」https://www.nzherald.co.nz/nz/first-medicinal-licence-grants-for-indigenous-magic-mushrooms-can-they-help-p-addicts/XDU5B5RNQFEBHOE5KGXNTINW2E/

High Times Magazine「First Shroom Cultivation License in New Zealand Granted to Māori Group」https://hightimes.com/psychedelics/first-shroom-cultivation-license-in-new-zealand-granted-to-maori-group/

Mugglehead Magazine「Māori group receives first psilocybin cultivation license in NZ to treat substance use disorders」https://mugglehead.com/maori-group-receives-first-psilocybin-cultivation-license-in-nz-to-treat-substance-use-disorders/

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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