三重県議会、グリーントランスフォーメーション時代の産業用大麻の活用について議論
三重県伊勢市にある「伊勢神宮」、正式名称は知名を冠しない「神宮」。

三重県議会、グリーントランスフォーメーション時代の産業用大麻の活用について議論

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2月28日に開かれた三重県議会令和5年第1回定例会において、三重県議会議員の中嶋年規なかじまとしき議員 (自由民主党)が「グリーントランスフォーメーション(GX)時代における産業用大麻の振興」をテーマに質疑を行いました。

まず始めに中嶋議員は、三重県が現在進んでいる大麻取締法の改正時期を待たずに栽培要件の緩和を昨年決断したことを評価。

続いて、日本政府が今年2月10日に「グリーントランスフォーメーション実現に向けた基本方針」を閣議決定し、今国会には関連法案が提出されており、その取り組み内容の中心であるCO2(二酸化炭素)排出量の削減の取り組みにおいて、大気中の炭素の吸収固定化(ネガティブエミッション)の技術が不足しているとの指摘があり、2月21日の国会予算会分科会でも取り上げられたと述べ、国際的には様々な分野で産業用大麻製品が実用化されていることを紹介しました。

  • EUの研究では、5ヶ月で3メートルの成長をする大麻のCO2削減効果は、1ヘクタール当たり9トンから15トン。この数値は、森林において最もCO2を吸収固定化する幼齢林1ヘクタール相当との国会答弁もなされた
  • 今後カーボンプライシングの制度導入も国際的に進む中、産業用大麻が生み出す価値は製品としての麻以上のものが期待されている
  • 獣害もなく、連作障害はあるものの、例えば小豆や蕎麦などとの輪作による休耕農地の活用策としての期待も高まっている
  • 綿花と異なり無農薬で栽培される大麻は、環境負荷が低いという特性がある
  • 産業用大麻は繊維を綿花の代替として衣服に使用できる
  • 車体の軽量化を図るための素材として、ロータスポルシェが取り組んでいるカーボンファイバーに代わるヘンプファイバーとしての利用ができる
  • コンクリートの代替素材として2024年パリオリンピックで公共施設建築物に利用されるヘンプクリートと呼ばれる壁材としての利用ができる
  • ポリエステルに代わる住宅や建築物の断熱材としての利用ができる
  • 今後は、航空燃料、蓄電池素材、バイオコークスとしての活用も実証研究段階にある
  • 国連貿易開発会議(UNVTAD)のレポートでは、ヘンプの世界市場規模は2020年の47億ドル(約6,338億円)から2027年には186億ドル(約2兆5,084億円)にまで成長する見込みである

このような観点から、グリーントランスフォーメーション時代における産業用大麻の将来性と可能性は非常に高く、新たな産業規制の観点から「ゼロエミッションみえ」の取り組みにもふさわしいものと考えられると中嶋議員は述べました。

また、伊勢麻振興協会などが神事用の大麻栽培に取り組み、新たな産業用大麻としての可能性を模索していること。三重大学において、神事、産業用大麻研究プロジェクトがスタートしていること。もともと麻の聖地だったと言われる三重県の明和町では、産学官連携のプロジェクト「大麻でグリーントランスフォーメーション宣言」が本年3月からスタートすることを紹介。

休耕農地の活用を通じた農業振興の観点、様々な産業分野の応用の観点から、産業用大麻の将来性と可能性をどのように評価し、国への働きかけも含め、今後どのように検討して取り組んでいくべきと考えるか、大麻のCO2の吸収固定化等の特性を踏まえ 「ゼロエミッションみえプロジェクト」として今後位置付けることを検討してはどうかと質問を行いました。

更屋英洋 農林水産部長は、三重県大麻取扱者指導要領の改正により免許要件が大幅に緩和されたことから、現在栽培に取り組んでいる農業法人(1件)の栽培面積の拡大や新たな農家による参入が今後考えられるため、以下のことを行っていくと回答。

  • 市・町や農業委員会に働きかけ、地域における耕作放棄地など農地の斡旋を進める
  • 特に現在栽培に取り組んでいる農業法人が栽培面積を拡大する場合には、経営の安定が図られるよう、およそ5年先までの生産販売資金に係る営農計画の策定、経営規模や販路の拡大に向けた中小企業診断士などの専門家派遣、施設機械の導入に向けた国の補助事業や制度融資の活用などの支援に取り組む
  • 新たに大麻栽培に参入希望のある農家から支援の要請があった場合には、円滑に栽培が始められるよう、栃木県の生産者を紹介するなど研修先の確保、新規就農者の研修段階から経営開始までの収入確保や施設機械の初期投資の軽減を図る国の新規就農者育成総合対策の活用などに取り組む

「今後関係する法律の改正や国の制度運用の変更が見込まれることから、その動きにも注視しつつ、市・町などと連携しながら、栽培する農家の要望に丁寧に対応してまいります。」と述べています。

野呂幸利 雇用経済部長は、「2050年カーボンニュートラルに向けて産業大麻に限らず、あらゆる植物素材の活用が産業界で進むことは脱炭素化に向けたチャンスと考えており、長期的な視野に立って、環境や社会への配慮に前向きに取り組む事業者に対して、技術開発面での支援等に積極的に取り組んでいきます」と回答。

安井晃 戦略企画部長は、「産業用大麻のCO2の吸収固定効果が高いことが認められ、そのことがCO2吸収固定機能、経済的価値を付加し企業等が取引を行う「Jークレジット制度」のような付加価値となり、新たなビジネスや雇用創出につながるものであればゼロエミッションみえプロジェクトとして位置付け、取り組んでいくことが考えられます。」と回答。

その後、中嶋議員は「大麻取締法は、今、改正の議論が進んでおり、これからは規制から活用への段階へ入っていく。その中で、この大麻取締法の改正に先んじて、大麻栽培規制の緩和を進めた三重県はファーストランナーであるというふうに思っている。」

「今こそ、その優位性を発揮するべき時ではないか」と知事にも質問。

一見勝之いちみかつゆき 三重県知事は、「今後も産業用大麻の利用というのは出てくると思います。先手先手で様々な対応していきたいというふうに思っております。」と回答しています。

石井 竜馬

麻マガジン創設者兼編集長。標高1,000mの山の中で井戸を掘り、湧き水と共に家族で農的暮らし。珈琲焙煎士でもある。ヨガ歴20年。ワクワクするスタートアップにシードからレイターまで投資ラウンド問わず投資したいため、起業家との出会い募集中。

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