イスラエルで医療用大麻が「第一選択薬」として処方可能に

イスラエルで医療用大麻が「第一選択薬」として処方可能に

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8月7日、イスラエル保健省は医療用大麻へのアクセスを拡大することを目的とした改革案を発表。これによれば、イスラエルでは今年12月より医療用大麻を代替療法としての「最終手段」ではなく、「第一選択薬」として処方することが可能となります。

医療用大麻が飽和状態にあるイスラエルは、状況を改善するために昨年から新たな改革案を提案し始めています。今年1月には、国内の4つの公的医療保険機関が担当する新たな処方モデルを導入し、医療用大麻の処方を保険適用にすることを義務付ける新規定を公表。これは2024年1月より実施される予定です。

続いて6月には、てんかんクローン病認知症自閉症スペクトラム症(ASD)、進行がん多発性硬化症、エイズ、余命6ヶ月以内の末期患者など特定の病状を有する患者に対し、医師が大麻に関するライセンスなしで医療用大麻の処方を可能にする新規定も発表しました(今年12月頃より実施予定)。

今回発表された改革案ではこれらに加え、今年12月から医療用大麻を「第一選択薬」として処方することが可能となります。これまでイスラエルでは、患者が医療用大麻の処方を受ける際、標準療法で1年以上効果が認められなかったことを証明する必要がありました。

しかし、12月以降、例えばイスラエルの慢性疼痛患者は、オピオイドによる治療を受けずして医療用大麻を使用することが可能となります。このことはイスラエルにおいて、医療用大麻による治療が「代替療法」では無くなることを意味しているとも言えるでしょう。

また、イスラエルは2020年以降、CBDを「危険ドラッグ」から除外することを発表していますが、未だにこれが実現していません(法律上、自然由来のCBDのみ危険ドラッグとされ、合成されたCBDに関してはグレーゾーンで合法となっています)。

しかし、今回の規定では2024年2月以降、CBDやTHCファミリーに属さない他のカンナビノイドTHCVHHCなど)を規制物質法から除外する可能性について検討することが明記されています。

さらに新規定では、大麻の研究をより多く行うことを奨励。大麻の安全性と有効性を証明する臨床試験を行うための明確な手続きが規定され、研究承認のプロセスが簡略化されます。また、大麻の研究のための原料輸入に対する厳格な規制も緩和される予定です。

イスラエルのこのような動きは医療用大麻をより「医薬品」らしく取り扱うためであり、このような理由から広告やパッケージに関しては、今後規制が厳しくなる方針。

注目を集めるようなカラフルなパッケージデザインは認められず、均一な色合いを求める「明確な基準」が導入されます。

さらには、パッケージにTHCとCBDの含有量を正確に記載する必要がなくなり、むしろこれを禁止する可能性もあるとされています。この規定は患者が最適な製品を選ぶ上で妨げになると批判されていますが、保健省はTHCの含有量が多いほど治療効果が高いという考えを裏付ける科学的証拠はないとしています。

これらの「医療用大麻改革」について、イスラエルのモシェ・アルベル(Moshe Arbel)保健大臣は「これは何万人ものイスラエル市民と経済にとって素晴らしいニュースであり、社会的な配慮と公衆衛生の保護を兼ね備えたものとなっています」と述べています。

イスラエル政府は2022年8月時点で、国内の医療用大麻患者を約114,000名と推定。今回の改革により2024年上半期以降、この数の増加が期待されます。

Business of Cannabis「From Last Resort To First Line: Israel Announces Major Reforms To Medical Cannabis」https://businessofcannabis.com/from-last-resort-to-first-line-israel-announces-major-reforms-to-medical-cannabis/

Mugglehead Magazine「Israel to loosen restrictions on medical cannabis, revoke license requirements for patients」https://mugglehead.com/israel-loosens-restrictions-on-medical-cannabis-revokes-license-requirements-for-patients/

NORML「Israel: Regulatory Changes Will Expand Patients’ Access to Medical Cannabis」https://norml.org/news/2023/08/10/israel-regulatory-changes-will-expand-patients-access-to-medical-cannabis/

廣橋 大

精神病院に勤める現役看護師。2021年初頭より大麻使用罪造設に向けた動きが出たことをきっかけに、麻に関する情報発信をするようになる。「Smoker’s Story Project」インタビュアー。

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