がん患者、大麻食品の摂取で痛み・睡眠・認知機能の改善を報告

がん患者、大麻食品の摂取で痛み・睡眠・認知機能の改善を報告

- アメリカの観察研究

4月26日、市販の大麻エディブル(大麻食品)製品を摂取することで、がん患者において痛み、睡眠、認知機能の改善が認められたことが報告されました。論文は「Exploration of Medicine」に掲載されています。

研究を実施したのは、米コロラド大学ボルダー校(University of Colorado Boulder)の研究チーム。

アメリカでは州レベルで医療用大麻の合法化が進んでおり、多くの州ががんにおいて医療用大麻の適応を認めています。しかし、がん患者に大麻の使用を推奨するために十分な情報があると感じている腫瘍内科医は30%に過ぎず、患者は多くの場合、臨床医の具体的な指導がないまま大麻を使用しているといった現状となっています。

アメリカの連邦レベルで大麻はスケジュールⅠ(乱用の危険があり、医療的価値が低い)の規制物質に分類されています。そのため、大麻の研究には複雑な制限があり、がん患者に対する大麻の研究のほとんどが、ナビロンドロナビノールといった大麻由来医薬品か、連邦政府が認可した施設で栽培された大麻を用いています。

医療用大麻患者が利用するディスペンサリーには、ドライフラワー、エディブル、大麻濃縮物など様々な形態の大麻があり、カンナビノイドテルペンの組成も幅広く存在します。よって、これらの製品が実際にがん患者の症状やQOLに有効なのかを検証する研究が必要不可欠となっています。

市販の大麻エディブルで研究

そこで、コロラド大学の研究者らは、21歳以上のがん患者を対象とした観察研究を実施。対象となった患者は2週間、地元の大麻販売店で好みのエディブル製品を購入。摂取量や摂取頻度は指定されず、自身の判断で自由に製品を摂取しました(肺がん患者を考慮し、エディブルのみに制限)。

エディブル製品摂取開始から2週間後、参加者は痛み、睡眠、不安、抑うつ、QOL、認知機能の評価を実施。また、この期間中に大麻の急性効果についても検証。ここでは、大麻の摂取前、摂取1時間後、摂取2時間後に痛みの強度、認知機能、「ハイ」の度合い、血中THCCBD濃度について調べられました。

がん患者は、化学療法などの治療により認知機能が低下することがあり、一方で大麻も認知機能に影響を及ぼすと考えられていることから、今回認知機能も評価項目として挙げられています。

摂取から2週間後、睡眠、痛み、認知機能が改善

研究に参加したのは、25名のがん患者(平均54.3歳、女性13名)。このうち44%がステージⅣの進行がんで、がんの種類として多かったのは肺がん(28%)、大腸がん(12%)、乳がん(12%)。44%が化学療法、16%が免疫療法の治療を受けていました。

参加者は平均して8.1日間、全体で18種類の異なるエディブル製品を摂取(14名がキャンディー・グミ・チョコレート、7名がチンキ剤、2名が錠剤、1名が飲料、1名が焼き菓子)。平均のTHC総摂取量は116.4mg、CBD総摂取量は162.7mg(1日あたり、THC8.3mg、CBD11.6mg)。

2週間大麻エディブルを摂取した結果、睡眠の質、痛み、主観的な認知機能の有意な改善が報告され、特に睡眠の質と痛みに関しては、CBDの摂取量が多いほど改善度が高いことが明らかに。また、痛みの増加は主観的な認知機能の悪化と関連していることが示されました。

急性投与では、エディブル製品を摂取してから1時間以内に痛みの有意な改善が報告され、THCを多く摂取した参加者ほど「ハイ」になるという結果に。2週間の摂取による結果とは異なり、認知機能テストでは1時間以内にパフォーマンスの低下が認められました。

エディブル製品の急性投与、2週間に渡る摂取において、有害現象は報告されませんでした。

研究者も元・医療大麻患者

コロラド大学ボルダー校の心理学・神経科学教授であり、本研究を主導したアンジェラ・ブライアン(Angela Bryan)氏は、がん予防についての研究を長年行っており、がん患者の大麻使用に関する研究にも着手。しかし、大麻の研究を始めてから間もない2017年、彼女は乳がんと診断されました。

乳がん手術後、痛みのためにオピオイドを使用することを躊躇していた彼女は、医師に医療用大麻の使用について尋ねました。

彼女は「彼らは私がやりたいことにとても協力的でしたが、私に何を伝えればいいのか全く分かっていませんでした」「ただ、データがなかっただけなんです」とプレスリリースで語っています。

今回の研究で、がん患者は大麻エディブルを摂取してから1時間以内に痛みの軽減、認知機能の低下を認めました。一方、摂取開始から2週間後の評価では、がん患者は痛みの軽減を実感し、よく眠れるようになり、思考がよりクリアになることが示されました。

認知機能において相反する結果が認められたことについて、ブライアン教授は「認知機能に何らかの問題が見られるかもしれないと考えていました。しかし実際には、より明確に考えられるようになっていると人々は感じたのです」「痛みが強いと考えることが難しくなります。大麻をしばらく使用し、患者さんの痛みのレベルが下がったことで、認知能力が良くなったことが分かりました」と語っています。

結論を出すにはより大規模な比較対照試験が必要となりますが、大麻の鎮痛効果は短期的には思考を低下されるかもしれない一方で、長期的には痛みの改善とともに認知能力を向上させる可能性があると研究者らは述べています。

なお、プレスリリースでは、ブライアン教授の医療用大麻の経験談についても紹介されています。

乳がんにより手術と化学療法を受けた彼女は、エディブル製品を使用。痛みを抑えるためにCBD主体の製品を使用しつつ、痛みが強く、ぼんやりしても平気な時はTHC主体の製品を使用していました。

大麻製品を使用している間、痛みが全くなくなるということはありませんでしたが、治療中一度もオピオイドを使用しなかったと語っています。

「私はこのことについてある程度の知識を持っていたので、非常に幸運でした。ほとんどの患者さんはそうではありません」「彼らはそれが選択肢であることを知らないか、善意はあるものの情報不足の可能性があるバドテンダーからアドバイスを受けています」

ニューヨークのがんセンターで実施された研究では、がん患者163名が医療用大麻に興味を持った理由として、睡眠(53%)、食欲(46%)、痛み(47%)、不安(46%)といった症状の改善が多く挙げられました。このうち、CBD経験者は痛み(21%)・不安(17%)・睡眠(15%)の改善を、THC経験者は食欲(40%)・睡眠(32%)・吐き気(28%)・痛み(17%)の改善を報告しています。

イスラエルのがん患者324名が参加した研究では、6ヶ月に渡る医療用大麻の使用により、不安、うつ病、睡眠、QOLにおいて約60%の人が肯定的な結果を報告。痛みに関しては50%以上で改善が認められ、研究開始時、オピオイドを含むその他鎮痛薬を服用していた患者74名のうち、40%が鎮痛剤の服用中止を報告しています。

オーストラリアの研究では、コントロール不良の疼痛を有するがん患者25名が、THCとCBDを同比率で含有した口腔粘膜スプレーを使用することで、心身機能、痛み、睡眠、認知機能の有意な改善を報告しています。

デンマークの研究者らは、抗がん剤治療を受ける予定となっていた54名のがん患者を対象とし、CBD150mgを1日2回(300mg/日)オイルにて経口摂取してもらった結果、抗がん剤による末梢神経障害に対し予防効果を認めたことを報告しています

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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