マサチューセッツ州、シロシビン非犯罪化の6番目の都市誕生
セーラム魔女博物館

マサチューセッツ州、シロシビン非犯罪化の6番目の都市誕生

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5月11日、「セイラム魔女裁判」でも知られる米国マサチューセッツ州のセイラム市において、マジックマッシュルーム(幻覚成分シロシビンを含むきのこ)を非犯罪化する決議案が、9対0の全会一致で承認されました。同州においてシロシビンを非犯罪化した都市は、セイラム市で6番目となります。

厳密に言えば、この決議案はマジックマッシュルームに対する刑事罰をなくすものではなく、シロシビンを含む菌類の使用、所持、栽培、購入、輸送、配布、行為への関与に対する逮捕や調査を、セイラム市において「最も低い法執行優先事項の1つ」とするものです。

しかし、決議案では「成人によるシロシビン含有菌の使用と所持に刑事罰を課す法律の執行を支援するために、セイラム市のいかなる部局、機関、委員会、役員、職員も、市の資金や資源を使用すべきではない」と述べられています。

同決議案は地方検事に対し、サイケデリクス支援治療サービス、マジックマッシュルームの所持、共有、栽培などに関わった人々に対する訴追の優先度を下げることを要求。さらに、市長に対しては、マジックマッシュルームの非犯罪化を支持するために、市、州、連邦のパートナーと共に働くことを市職員に指示することを求めています。

また、同決議案はPTSDや依存症などの精神疾患治療においてシロシビンが大きな可能性を有していることや、シロシビンを犯罪とする政策は失敗であり、刑事司法制度における大量収容や人種格差を助長していることなどについても指摘しています。

この改革に取り組んだのは、権利擁護団体「Bay Staters for Natural Medicine」です。同団体は、麻薬戦争に終止符を打つとともに、幻覚作用のある植物や菌類などへの公平なアクセスを目指す活動を行っており、マサチューセッツ州ではこれまでサマービル、ケンブリッジ、ノーサンプトン、イーストハンプトン、アマーストにおいて、これらの物質の非犯罪化に貢献しています。

なお、これらの地域の中でシロシビンのみを非犯罪化した都市はセイラム市だけであり、それ以外の都市はアヤワスカやイボガインなどを含むサイケデリクスを非犯罪化しています。

セイラム市議会議員のアンドリュー・ヴァレラ(Andrew Varela)氏は「セイラム市が1つに焦点を当てるのは本当に賢い」と述べ、「(他の地域にとって、これは)シロシビンのような大きな影響を持つものから、小規模で始めるというモデルになるかもしれません。このような物質に関して、連邦内でもう少し変化が見られることを期待しています」とコメント。

セイラム市の警察署長であるルーカス・ミラー(Lucas Miller)氏もこの改革を支持し、「シロシビンがオピオイド中毒に役立つという指摘は、無視できないものです」「セイラムでは、年間約20人がオピオイドの過剰摂取で亡くなっています」と述べています。

アメリカの違法オピオイド使用者44,000名を分析した2017年の研究では、サイケデリクスの使用経験が過去1年間のオピオイド依存リスクの27%の減少、オピオイド誤用リスクの40%の減少と関連していたことが報告されています。なお、この研究では、大麻の使用は過去1年間のオピオイド誤用リスクの55%の減少と関連していました。

セイラム市がマサチューセッツ州においてシロシビンを非犯罪化する6番目の都市となった一方、州レベルでは最近、21歳以上の成人による2gまでのシロシビン、イボガイン、DMT、メスカリンの所持、栽培、贈与を合法化する法案「HB3589」、オレゴン州のようにファシリテーターのもとでシロシビンの投与を合法化する法案「HB3605」、FDA(アメリカ食品医薬品局)が今後MDMAを治療薬として承認した場合、MDMAを再スケジュールし、PTSD患者への使用を可能にする法案「HB3574」が提出されています。

2019年にFDAがシロシビンを難治性うつ病における「Breakthrough Therapy」に指定して以降、アメリカを始めとした世界において、シロシビンを巡る政策や見解に変化が見られてきています。

オレゴン州はサービスセンターにおけるシロシビンの使用を合法化。今月にはこの運用に向けて設けられた4つの事業(生産者ファシリテーター、ラボサービスセンター)全てにおいて、少なくとも1つのライセンスが承認されました。

オレゴン州と同様、ヒーリングセンターでのシロシビンの使用を合法化したコロラド州では、この具体的な規制法案が5月初めに州議会で可決。現在法案は州知事の元へ送られ、署名待ちの状態となっています。

5月2日、米国医師会(AMA)はシロシビン製剤とMDMA補助療法に対し、医療コード(CPTコード)を承認。コードは5年間有効であり、この間にFDAから承認されれば、今後これらのサイケデリクス治療が医療従事者に広く使用され、保険適用となる可能性があります。

米国麻薬取締局(DEA)は最近、様々な分野で世界トップレベルの研究実績を有するオハイオ州立大学に対し、研究目的でマジックマッシュルームの栽培を認めるライセンスを発行しています

3月に公開されたアメリカの調査では、米国民の半数以上が、MDMAやシロシビンなどのサイケデリクスによる治療やサイケデリクスの非犯罪化を支持していたことが報告されています。

なお、オーストラリアでは2023年7月1日より、医療機関による厳格な管理のもと、治療目的でシロシビンとMDMAの使用が可能となる予定。蓄積された既存のエビデンスに基づき、MDMAはPTSDに、シロシビンは難治性のうつ病に処方が許可されます。

Marijuana Moment「Salem, Massachusetts Lawmakers Vote To Decriminalize Psilocybin Mushrooms」https://www.marijuanamoment.net/salem-massachusetts-lawmakers-vote-to-decriminalize-psilocybin-mushrooms/

Psychedelic Spotlight「SALEM, MASSACHUSETTS ENDS ARRESTS FOR PSILOCYBIN MUSHROOMS」https://psychedelicspotlight.com/salem-massachusetts-ends-arrests-for-psilocybin-mushrooms/

Marijuana Moment「The ‘Most Conservative’ Massachusetts GOP Lawmaker Files Three Psychedelics Reform Bills, Including Measure To Legalize」https://www.marijuanamoment.net/the-most-conservative-massachusetts-gop-lawmaker-files-three-psychedelics-reform-bills-including-measure-to-legalize/

Live Science「FDA Calls Psychedelic Psilocybin a ‘Breakthrough Therapy’ for Severe Depression」https://www.livescience.com/psilocybin-depression-breakthrough-therapy.html

Oregon Health Authority「Oregon Health Authority issues first psilocybin service center license, psilocybin services to become available soon」https://content.govdelivery.com/accounts/ORDHS/bulletins/358c1c6

Marijuana Moment「Colorado Lawmakers Send Psychedelics Regulation Bill To The Governor」https://www.marijuanamoment.net/colorado-lawmakers-send-psychedelics-regulation-bill-to-the-governor/

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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