10月7日、米国カリフォルニア州のギャビン・ニューサム(Gavin Newsom)州知事は、一部の職種を除く雇用主が求職者に過去の大麻使用について尋ねることを禁止する法案など、いくつかの大麻法案に署名。一方で「大麻カフェ」の営業を認める法案など、一部の法案に対しては拒否権を発動しました。
カリフォルニア州議会が先月可決した法案「SB700」は、雇用主が求職者に対し過去の大麻使用についての情報提供を求めることを基本的に”違法行為”としています。
SB700の立案者であるスティーブン・ブラッドフォード(Steven Bradford)上院議員は、同法について「21歳以上の成人に対して大麻が合法化された今、大麻の使用について開示を求めることは優秀な求職者の応募を思いとどまらせる可能性があります」とコメント。
SB700は昨年に承認された法案「AB2188」を拡大するものとなっています。AB2188では、州法に従って勤務時間外に大麻を使用していることのみを理由として雇用主が従業員を解雇・差別・罰することを”違法行為”と規定。雇用前に大麻検査を行うことも廃止としています。
ただし、これらの法律で規定されていることは、連邦政府による身元調査やセキュリティクリアランス(適格性審査)を要する職種、建築業など一部の職種では対象外となります。
両法は2024年1月1日から施行される予定です。
他にもニューサム州知事は、大麻製品のトレーサビリティのために各大麻草への取り付けを義務付けていた「使い捨てプラスチックタグ」を廃止する法案「SB622」にも署名。
同法は環境保護とコスト削減を目的としており、近年深刻な環境問題の1つと挙げられている「マイクロプラスチック」の削減にも対処するものとなります。
同法の立案者であるベン・アレン(Ben Allen)上院議員は「プラスチック製品は自治体にとって環境面や財政面への影響だけでなく、(人の)血液中からマイクロプラスチックが検出されるなど、公衆衛生面でも危険をもたらしています。私たちは可能な限り、プラスチックの不必要な使用を抑制するために責任を持って行動する必要があります」とコメントし、ニューサム州知事を称賛。
プラスチックタグに替わる大麻製品の追跡手段は具体的に示されていませんが、デジタルタグのような生態学的に健全なものが使用される可能性があると予想されています。
一方でニューサム州知事は、特定の大麻小売店が大麻製品以外の飲食物を提供したり、敷地内で音楽イベントを開催したりすることを可能にする法案「AB374」に対し拒否権を発動。
ニューサム州知事は同法案に対するメーセージの中で、「大麻小売業者にビジネスチャンスを増やし、新規顧客を獲得する手段を提供しようという立法者の意図を高く評価します」としつつも、「この法案はカリフォルニア州が長年に渡って保護してきた職場禁煙を弱体化させる可能性があると懸念しています」「労働者の健康と安全を守ることが最優先です。立法者には次の法案でこの懸念に対処することを奨励します」と述べ、法案に署名できない理由を説明しました。
これに対し、同法案の立案者であるマット・ヘイニー(Matt Haney)下院議員は「このままカリフォルニア州の合法大麻ビジネスを締め付ける不必要な規制が許されれば、違法薬物の販売とそれに伴う全ての問題が助長されることになります」「多くの人が他の人と一緒に合法大麻を楽しみたいと思っています。経済面、健康面、安全面において、州がそれを違法とする正当な理由は全くありません」と批判。
他にも、ニューサム州知事は未成年による大麻製品の使用を防ぐことを目的とし、大麻製品のパッケージにおもちゃ、ロボット、架空のキャラクターなど、子供を惹きつける画像・イラストを用いることを禁止する法案「AB1207」に対し拒否権を発動しました。
これについてニューサム州知事は、同法案の趣旨を高く評価しているものの、子供を惹きつけるパッケージの範囲が「過度に広範」であるため懸念されると説明しています。
また、ニューサム州知事は同日、幻覚剤(サイケデリクス)合法化法案に対しても拒否権を発動。
なお、これらの立法プロセスとは別に、カリフォルニア州は違法大麻市場の縮小を目的とし、合法大麻小売店のない地域で大麻販売プログラムを確立するための助成金を倍増することを先月に発表しています。
アメリカではカリフォルニア州のように、大麻使用者の雇用保護を明確化する州や組織が増えてきています。
最近では、ミシガン州が州機関への求職者に対する大麻検査を廃止する雇用方針を承認。同法は10月1日より発効されています。
このような保護を初めて法制化したのはネバダ州であり、コネチカット州、モンタナ州、ニュージャージー州、ニューヨーク州、ロードアイランド州がこれに続き、今年に入ってワシントン州とワシントンD.C.がこの仲間入りを果たしました。
また、こういった動きは連邦機関でもみられています。
人事管理局(OPM)は3月、雇用プロセスにおいて「過去の大麻使用」を寛大に扱うことをホワイトハウスに要求。
4月には、米国司法省内の連邦法執行機関である「アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局(ATF)」が雇用方針を更新。公的責任のある地位に就いている時に州法を遵守して大麻を栽培、製造、販売した求職者を自動的に不適格とはしない方針を明らかにしました。
アメリカ合衆国シークレットサービス(USSS)も同月に雇用方針を更新し、大麻の使用に関する規定を緩和しています。
Marijuana Moment「California Governor Signs Bill Blocking Most Employers From Asking About Past Marijuana Use During Interview Process」https://www.marijuanamoment.net/california-governor-signs-bill-blocking-most-employers-from-asking-about-past-marijuana-use-during-interview-process/
Marijuana Moment「California Governor Vetoes Cannabis Cafe And Marijuana Labeling Bills, But Signs Others Into Law」https://www.marijuanamoment.net/california-governor-vetoes-cannabis-cafe-and-marijuana-labeling-bills-but-signs-others-into-law/
Ganjapreneur「California Gov. Vetoes Bills to Legalize Cannabis Cafes and Decriminalize Some Psychedelic Plants」https://www.ganjapreneur.com/california-gov-vetos-bills-to-legalize-cannabis-cafes-and-decriminalize-some-psychedelic-plants/
Marijuana Moment「California Bill To End Single-Use Plastic Tag Requirement For Marijuana Plants Heads To The Governor」https://www.marijuanamoment.net/california-bill-to-end-single-use-plastic-tag-requirement-for-marijuana-plants-heads-to-the-governor/