7月13日より、米国の首都ワシントンD.C.の雇用主は勤務時間外で合法的に大麻を使用している従業員に対し、たとえ大麻検査で陽性反応が出ていたとしても、雇用を拒否したり、人事処分を下すことが原則として禁止となります。
米国連邦政府直轄の独立行政区であるワシントンD.C.は昨年末、「Cannabis Employment Protections Amendment Act of 2022」を制定。
この法律では、雇用主は基本的に勤務時間外での合法的な大麻使用を理由として、求職者の雇用を拒否することや、従業員を解雇・停職・降格処分にしたり、昇進させないといった罰則を与えることが禁止されています。この保護は業務に支障が出ていない限り、大麻検査で陽性反応が出た場合でも適用されます。
「合法的な大麻使用」とは、個人使用目的での大麻の使用と、医療用大麻プログラムに登録した患者による大麻の使用のことを指します。なお、ワシントンD.C.では2010年より医療用大麻が合法化され、2015年には成人における2オンス(約56g)までの大麻の所持と最大6株までの栽培が可能となっています。
雇用主がこの法律を遵守しなかった場合、従業員はその根拠となる行為が発生してから1年以内に、ワシントンD.C.人権局(OHR)に苦情を申し立てることができます。
ただし、これらの保護には例外があり、「安全に配慮すべき職種」や「連邦法、連邦規制、連邦契約により大麻の使用が禁止されている職」には適用されません。また、職場や勤務時間中に大麻を使用した場合も例外となります。
安全に配慮すべき職種には、警察、警備、自動車や重機械の運転、大工、ガスや電線近くでの作業、危険物を扱う業務、投薬管理・手術や専門資格を必要とする医療行為を行う者などが該当します。
同法案は7月13日より施行となりますが、施行から60日以内に雇用主は従業員に対し、この新たな雇用保護について通知する必要があります。この通知には、自身の職場が安全に配慮すべき職種に該当するのかを知らせることも含まれます。これ以降もこの通知は毎年、または入社時に行われなければなりません。
米国では州レベルで大麻の合法化が進むにつれ、雇用において大麻使用者を保護する動きが活発化してきています。
このような保護を初めて法制化したのはネバダ州であり、コネチカット州、モンタナ州、ニュージャージー州、ニューヨーク州、カリフォルニア州、ロードアイランド州がこれに続き、最近ではワシントン州もこの仲間入りを果たしました 。
こういった動きは連邦機関でもみられており、例えば今年3月、米連邦政府の人事管理局(OPM)は雇用プロセスにおいて「過去の大麻使用」を寛大に扱うことをホワイトハウスに求めています。
4月には、米司法省内の連邦法執行機関である「アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局(ATF:Bureau of Alcohol, Tobacco, Firearms and Explosives)が雇用方針を更新し、州法を遵守して大麻を栽培、製造、販売した求職者を自動的に不適格とはしない方針を明らかにしました。
アメリカ合衆国シークレットサービス(USSS:The United States Secret Service)も同じく4月、雇用方針を更新し、大麻の使用に関する規定を緩和。
一方、農務省森林局(USDA Forest Service)の高官は最近、連邦政府機関において大麻検査による陽性反応者が増加しており、解雇されている職員が増えていることを明かしています。
D.C. Law Library「D.C. Law 24-190. Cannabis Employment Protections Amendment Act of 2022.」https://code.dccouncil.gov/us/dc/council/laws/24-190
National Law Review「District of Columbia Cannabis Employment Protections Amendment Act Goes Live July 13」https://www.natlawreview.com/article/district-columbia-cannabis-employment-protections-amendment-act-goes-live-july-13
US Forest Service「Federal employees and marijuana use: What you need to know」https://www.fs.usda.gov/inside-fs/leadership/federal-employees-and-marijuana-use-what-you-need-know