南アフリカ共和国、嗜好用大麻市場確立に向け法改正の動き

2018年に南アフリカ共和国は、憲法裁判所が「成人が個人消費するために大麻を使用したり所持したりすることは、刑事罰の対象とはならない」という歴史的な判決を下したことで、大麻の個人使用・栽培を非犯罪化。

大麻の非犯罪化が認められたのはプライベート空間のみで、公共の場では違法。しかし、この「プライベート空間」の定義は不明瞭で、大麻の栽培や所持が可能な規定量も未決定のままとなっています。

これらを明確にするために作られている法案が「私用目的の大麻法（Cannabis for Private Purposes Bill）」です。この法案は2020年8月に国会に提出され、修正を繰り返しながら、現在も審議が行われています。

このような流れにも関らず、2022年12月14日から新たに施行された「2022年麻薬・麻薬取引法（Drugs and Drug Trafficking Act of 2022）」では、大麻が「望ましくない依存性をもたらす物質」に分類されています。

しかし、最近修正された「私用目的の大麻法」では、このスケジュールから大麻を削除することを規定。プライベート空間の定義も、公衆が立ち入れない建物、部屋、小屋、移動式住居などに加え、共有地が追加されています。

規定されたプライベート空間において、18歳以上の成人は600gまでの乾燥大麻の所持や4株までの大麻の栽培が可能となります（2名以上が同居する場合、1,200gまでの所持と8株までの栽培が可能）。

当初この法案は嗜好用大麻市場の確立を目指すものではありませんでした。しかし、最新の修正案では「大麻に関する商業的活動はここに認可される」と明記され、嗜好用大麻市場の規制法案を制定することが求められています。これにあたり、ハームリダクション、大麻使用に関する教育や意識向上キャンペーン、18歳未満の未成年による大麻へのアクセスの予防、大麻の広告・宣伝の禁止や制限などを考慮する必要があると記載されています。

また、この法案では大麻関連の軽犯罪記録の抹消についても定められています。

現在国会は4月28日までの間、この修正法案に対するパブリックコメントを利害関係者に求めています。

南アフリカ共和国では医療用大麻製品が合法化されており、2022年4月には国内初のディスペンサリーが開業しています。また、産業用大麻（ヘンプ）の栽培は認可された事業者のみ可能となっています。

2023年3月にシリル・ラマポーザ（Cyril Ramaphosa ）大統領は、2022年以降、南アフリカ医療製品規制庁（SAHPRA：South African Health Products Regulatory Authority）によって83件の大麻栽培ライセンス、4件の製造ライセンス、30件の研究ライセンスが、農業・土地改革・農村開発省（Department of Agriculture, land reform and rural development）によって371件の産業用大麻ライセンスが発行されたことを明かしています。