エピディオレックス（CBD製剤）を「抗精神病薬」として国際的な治験を今年実施へ

ジャズ・ファーマシューティカルズ（旧・GWファーマシューティカルズ）により開発されたCBD製剤「エピディオレックス」。

エピディオレックスは現在「抗てんかん薬」として用いられており、1歳以上（欧州では2歳以上）のドラベ症候群（乳児重症ミオクロニーてんかん）、レノックス・ガストー症候群、結節性硬化症に由来するてんかんに対し処方されています。

しかし、エピディオレックスに含まれる有効成分CBDはてんかんだけでなく、統合失調症、不安障害、うつ病、睡眠障害など、様々な精神疾患・症状においても有効である可能性が報告されています。

このような中、エピディオレックスを用いた新たな試みが実施されようとしています。

2023年下半期より、世界トップレベルの大学として知られるイギリスのオックスフォード大学主導のもと、ヨーロッパと北米を中心とした35箇所の医療施設で、精神病に対するエピディオレックスの治験が開始されます。

これは、精神病発症リスクの高い人、初回エピソード精神病患者、他の治療で改善が認められない精神病患者など、1000名の患者を対象とした大規模な3つの臨床試験を行う「STEP（Stratification & Treatment in Early Psychosis）」と呼ばれる研究プログラムです。つまり、精神病に対する治療効果だけでなく、予防効果についても検証されることになります。

有効性を正当に評価するため、対象患者は半数ずつエピディオレックス治療群とプラセボ（偽薬）治療群に振り分けられ、同時並行で治療が行われる予定です。

エピディオレックスの作用メカニズムを明らかにするため、血液検査、神経画像検査、認知検査など、様々な指標を用いて評価が行われます。また、治療により良好な反応を示すバイオマーカー（生物学的指標）を特定することも目的としています。

このプログラムのために、イギリス最大の医療慈善団体ウェルカム・トラスト（Wellcome Trust）はオックスフォード大学に対し、1,650万ポンド（約26億7千万円）の資金を提供。また、エピディオレックスはジャズ・ファーマシューティカルズにより無償で提供される予定です。

研究を主導するオックスフォード大学のフィリップ・マクガイア（Pillip McGuire）教授は「CBDは精神病患者に対し、最も有望な新しい治療法の1つです。この研究は、精神病や精神病症状を有する多数の患者において、CBDの有効性を評価する初めての研究となり、この分野で働く世界中の多くの主要な研究機関が参加することになります」「精神病患者の多くはCBDを試すことに前向きであり、これまでの小規模な研究でも有効性が示されています。この研究では、既に発症している精神病に対する治療だけでなく、精神病発症リスクの高い人々に対する予防効果も検証されます」とコメント。

ウェルカム・トラストのMental Health Translation部門の責任者であるリンジー・ビルスランド（Lynsey Bilsland）氏は「抗精神病薬は精神病の治療によく用いられていますが、副作用が大きいため服用を中止してしまう患者さんが多く、そして全員に有効性が認められるわけではありません。このことは、今回の研究のような新たな治療法を模索することの重要性を示しています」と述べています。

現在、主要な精神病として知られる統合失調症では、状態に応じて薬物療法、精神療法、リハビリテーションなどを組み合わせた治療が行われています。20〜30％の患者で病状コントロールは良好となっていますが、40〜50％は社会復帰しても症状が残り、20〜30％では生活水準が著しく低下し、社会復帰が困難になっていると言われています。