米国、大麻常用者数がアルコール常用者数を超える 最新研究で明らかに

- アメリカの観察研究

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Addiction」に掲載された最新の研究によれば、米国では2022年時点において、日常的に大麻を使用する人の数が飲酒をする人の数を上回っています。

米国では1971年より「麻薬戦争」と呼ばれる薬物政策が採用され、大麻を含む麻薬の生産、流通、消費が取締りの対象となってきました。しかし、このような懲罰的な薬物政策に対する疑問の声が高まる中、米国では現在24州で嗜好用大麻、38州で医療用大麻が合法化されています

加えて、連邦政府は大麻の医療的価値やリスクの低さを認め、連邦法における大麻の規制緩和に向け現在本格的に動いています

このように米国で大麻政策が変化を続ける中、ペンシルベニア州のカーネギーメロン大学ハインツ・カレッジの研究者は「薬物使用と健康に関する全米調査(NSDUH)」から得られたデータを分析することで、国内における大麻の使用状況の変化を明らかにする研究を行いました。

その結果、米国では2008年以降大麻の使用量が大幅に増加しており、2008年から2022年の間で、1人あたりの過去1年以内の大麻使用が120%、1人あたりの大麻使用日数が218%増加していたことが明らかにされました。

最も顕著な増加が認められたのは過去1ヶ月以内に21日以上大麻を使用した「大麻常用者」であり、1992年から2022年にかけて15倍の増加が認められていました。過去1ヶ月以内の大麻使用を報告した人は約5倍(790万人から4,190万人)に増加し、このうち大麻常用者の割合は約4倍(11%から42%)にまで膨れ上がっていました。

これに伴い、2022年のデータでは、調査が開始されて以降初めて大麻の常用者数がアルコールの常用者数を上回っていたことが明らかとなりました(1,770万人vs1,470万人)。なお、1992年時点では、大麻常用者の数はアルコール常用者の10分の1程度(90万人vs890万人)でした。

このような変化は大麻の使用パターンでも観察されており、過去1ヶ月以内の飲酒を報告した人の飲酒頻度の中央値は4〜5日であったのに対し、過去1ヶ月以内の大麻使用を報告した人の大麻の使用頻度の中央値は15〜16日となっていました。

一方、2022年のデータにおいてもタバコの常用者は依然として圧倒的に多く、過去1ヶ月以内に喫煙を報告した人の58.7%(2,410万人)が常用者であったと報告されています。

なお、飲酒をする人自体は大麻使用者よりもはるかに多いとされています。しかし、月10日以上の消費を報告した人の割合は、大麻使用者では飲酒をする人の2倍となっていました(60%vs30%)。

また、過去1ヶ月以内の大麻使用を報告した人は飲酒をする人と比べ、毎日の使用を報告した人の割合が7.4倍多いことも明らかにされました(28.2%vs3.8%)。

これらの結果について、著者は「大麻の消費パターンはアルコールのようなものから、タバコに近いものへと変化している」と述べています。

他にも、2022年のデータでは、35歳以上の人々では35歳未満の人々よりも大麻使用日数がわずかに多くなっており、大麻がもはや若者の嗜好品ではないことも示されていました。

今回の研究結果を支持するように、投資銀行「TD Cowen」の調査では、米国における2023年の大麻の売上が290億ドルとなり、米国民のアルコール離れが加速していたことが報告されています

また、コロラド州イリノイ州ミシガン州など嗜好用大麻を合法化したいくつかの州では、すでに大麻の税収がアルコールの税収を上回っています。

カナダの研究チームは、嗜好用大麻の合法化により国内においてビールの販売量が有意に減少したことを報告。この研究によれば、嗜好用大麻の合法化直後(2018年10月)にビールの販売量は人口10万人あたり9,600リットル減少し、その後も毎月400リットルずつ減少し続け、2020年2月には月の平均減少量が人口10万人あたり13,600リットルに達したとされています。

ギャラップ社は2022年の調査において、同社で調査を開始して以来初めて、米国で大麻の喫煙率がタバコの喫煙率を上回ったことを報告

いくつかの世論調査によれば、米国成人の多くは大麻についてお酒やタバコよりも安全であると認識しており、このような傾向はカナダにおいても報告されています

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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