THC使用が終末期患者の生存期間延長と関連

- ドイツの観察研究

ドイツの終末期患者のデータを分析した結果、THC治療を受けていた患者ではそれ以外の患者よりも生存期間が長かったことが明らかにされました。論文は「Medical Cannabis and Cannabinoids」に掲載されています。

ドイツでは2017年より医療用大麻が合法となっています。さらに、2024年4月1日に嗜好用大麻が合法化されたことに伴い、医療用大麻は麻薬として扱われなくなり、通常の処方箋で利用することが可能となりました。

Business of Cannabisによれば、2024年4月時点でドイツの医療用大麻患者数はおよそ30万人となっており、このうち約半数が健康保険から治療費の払い戻しを受けています。

医療用大麻やTHCを始めとしたカンナビノイドには、鎮痛食欲増進不安抑うつの緩和など、緩和ケアにおいて肝となる効果があることが明らかにされてきています。そのため、これらの使用は終末期患者のQOLや幸福度の向上に大きく寄与し、生存期間にも影響を与える可能性があります。

緩和ケア患者のデータを分析

ドイツの研究チームは、ブランデンブルク州の5つの医療機関における外来緩和ケア患者のデータを通して、THCが患者の生存期間に及ぼす影響について分析を実施。

解析対象に含まれたのは、緩和ケア利用開始後の生存期間が7日以上の患者9,419名。これらの患者の中には想定よりも長期間生存していた患者もいたため、緩和ケア利用後の生存期間が100日未満の患者データ(7,085名)もサブグループとして抽出されました。つまり、このサブグループは終末期患者のデータを強く反映していることを意味します。

THCを含む医療用大麻を使用していた患者は全体で310名、生存期間100日未満のグループで210名。生存期間100日未満のグループにおけるTHC投与量の中央値が4.7mg/日であったため、この研究ではTHC4.7mg/日の投与を基準とした分析も行われました。

なお、著者によれば、ドイツの緩和医療学会はTHCの使用にあたり、食欲増進のために5〜160mg/日、疼痛緩和のために30mg/日までの投与量を推奨しています。これらの推奨量と比べると、THC4.7mg/日という数値は低用量であることが分かります。

THCの投与量が多いほど生存期間が延長

THCの投与量に関わらず、医療用大麻による治療は生存期間の延長と有意に関連していました。

全体における生存期間の中央値は、医療用大麻を使用しなかった患者で38日間であったのに対し、医療用大麻を使用した患者では55日間。生存期間100日未満のグループにおける生存期間の中央値は、医療用大麻を使用しなかった患者では25日間、医療用大麻を使用した患者では33日間となっていました。

特にこの延長はTHC4.7mg/日を超える量で治療を受けた患者において認められ、これらの患者の生存期間の中央値は全体で74日間、生存期間100日未満のグループで40日間となっていました。

つまり、生存期間100日未満のグループにおいて、THC4.7mg/日を超える量で治療を受けた患者は、医療用大麻治療を受けなかった患者よりも15日間長く生存していたということになります。

統計分析(カプランマイヤー法、多変量解析)でも同様に、1日のTHCの投与量が多いほど生存期間が延長していたことが示されました。むしろ、THC4.7mg/日以下の投与では、生存期間の延長が有意とはなりませんでした。

これらの結果について、著者は「本研究のデータは7日以上生存し、4.7mg/日を超えるTHCを使用した外来緩和ケア患者において、THCが生存に有意な影響を与えることを示している。おそらく最も適した患者群(生存期間100日未満のグループ)では、生存期間の中央値が15日間延長された。この2週間以上の延長はかなりのものであると考えられる」

「生存期間だけでなく、THCを投与された患者は精神的にも肉体的にも活動的になるが、これはTHCや他のカンナビノイドの薬理学的効果にも一致している。活動性が高まり、生活の質が向上することで、患者は親族や友人との社会的な接触を取り戻し、死を迎える前に必要な用事を済ませることができるかもしれない」と述べています。

ただし、この研究は臨床試験ではないため、THCの効果について明確に結論づけることはできません。また、医療用大麻治療についての詳細データがないことに加え、THCがどのような症状にどの程度効果があったのかも不明です。

また、大麻やカンナビノイドは抗がん作用を有する可能性も指摘されていますが、著者は今回の結果と抗がん作用を結びつけるつもりはないとしています。

しかし、著者は「患者の生存期間を有意に延長するという観点から、THC治療は外来緩和ケア患者の第一選択治療に含められるべきである」と結論づけています。

医療用大麻が合法である国や地域において、がん患者を中心とした終末期患者における大麻の使用はますます広がっています。今回の研究結果を支持するように、これらの患者は医療用大麻の使用により様々な苦痛を緩和し、QOLの向上を実感しています。

例えば、米国オハイオ州の調査では、がん患者が大麻の使用により睡眠、痛み、吐き気などの症状において改善を実感していたことが明らかにされています

コロラド大学ボルダー校の研究では、がん患者が市販の食用大麻製品の摂取により痛み、睡眠、認知機能の改善を認めていたことが報告されています

ドイツの観察研究では、がんを含む様々な病気に苦しむ患者が医療用大麻の使用により病状、幸福度、QOLの改善を実感していたことが報告されています

なお、大麻やカンナビノイドは抗がん剤による悪心・嘔吐末梢神経障害などにおいても有効性が示されています。

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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