抗がん剤による末梢神経障害の緩和に有効なのは、CBDではなくTHCだった

抗がん剤による末梢神経障害を緩和したのは、CBDではなくTHCだった

- アメリカの基礎研究

抗がん剤であるシスプラチン(プラチナ製剤)は、副作用として末梢神経障害を引き起こすことで知られています。

10月12日、シスプラチン誘発性末梢神経障害モデルマウスにおいて、CBD(カンナビジオール)よりもTHC(テトラヒドロカンナビノール)のほうが高い有効性を示したことが、アメリカの研究チームにより報告されました

まず始めに、この研究ではTHCとCBD単体による有効性を検証(5、10、20mg/kg)。CBDはシスプラチン誘発性末梢神経障害に対しほとんど効果を認めませんでしたが、THCは用量依存的に症状を緩和させました。

さらにこの研究では、合計で6mg/kgとなるようにTHCとCBDを様々な割合で組み合わせ、有効性の違いを検証(THC:CBD=0:1、1:2、1:1、2:1、1:0)。その結果、雄・雌マウスにおいてそれぞれ反応が異なり、雄マウスではTHC:CBD=2:1の比率でのみ、雌マウスではTHC:CBD=1:2および2:1の比率で有意な改善が認められました。

最初の検証においてTHC5mg/kgの単独投与で有効性が認められなかったため、これらの結果はCBDがTHCの使用量を最低限にできる可能性を示しています。ただし、この検証で最も高い有効性を示したのはTHC:CBD=2:0の比率であり、THCとCBDの組み合わせよりもTHC単体のほうが優れていたことが明らかとなりました。

続いて成分単体ではなく、CBD主体またはTHC主体の大麻抽出物を使用し、シスプラチン誘発性末梢神経障害モデルマウスに対する有効性を検証。両抽出物とも症状を緩和しましたが、全体としてTHC主体の抽出物のほうが高い有効性を示しました。

なお、CBD主体及びTHC主体の抽出物はそれぞれ含まれていたカンナビノイドテルペンが異なり、特にテルペンはともにβカリオフィレン、フムレンを多く含んでいたものの、テルペンの総量はCBD抽出物が301.6mg/ml、THC抽出物が55.3mg/mlと大きく異なっていました(それぞれの詳しい組成は論文をご参照下さい)。

CBD単体では有効性を示さなかったにも関わらず、CBD主体の大麻抽出物では症状の緩和が認められたことついては、CBD主体とはいえ微量のTHC(0.04mg/ml)が含まれていたことや、テルペンの有効性が重なることによるアントラージュ効果が関係しているだろうと研究者らは述べています。

最後にこの研究では、CBD主体の抽出物にTHCを追加することにより、THC:CBDの様々な比率における有効性を検証。ここでも性別間で差異が認められ、雄マウスではTHC追加により効果の増強が認められましたが、雌マウスではTHCを追加しても効果に差が認められませんでした。ただし雌マウスでは、CBD主体よりもTHC主体の抽出物のほうが優れた有効性を示しました

また、雄マウスで認められたTHC追加による効果の増強は、THC濃度によって変化せず、THC:CBD=1:2、2:1、1:1の間で差が認められませんでした。

まとめると、この研究においては、シスプラチンによる末梢神経障害モデルマウスに対し有効性が高かったのはTHCであり、THCとCBDの組み合わせによる効果の増強には性差があることが示されたということになります。

ただし「痛み」の記事の中で述べていますが、別のマウスの研究ではCBDも抗がん剤誘発性の末梢神経障害を緩和したことが報告されています。これには急性投与(1回だけ投与)と慢性投与(数日間継続して投与)の差が関係しているかもしれないと研究者らは述べています(今回の研究は急性投与)。

また今年8月6日には、人を対象とした研究において、CBDが抗がん剤による末梢神経障害に予防効果を示したことも報告されています。

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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