オランダ、政府承認の大麻をコーヒーショップに供給するプログラムを今年開始へ

2月20日、オランダ保健大臣エルンスト・カイパース（Ernst Kuipers）氏は、政府が承認した大麻を「コーヒーショップ」に供給するという試験プログラムを2023年後半より開始することを発表しました。

オランダで大麻は合法ではありませんが、5g以下の大麻の所持・5株までの栽培は容認されています。また、「コーヒーショップ」と呼ばれる店において、大麻の購入・使用が可能となっています。

オランダ政府の公式サイトによれば、オランダにあるコーヒーショップの数は現在570件。コーヒーショップは、最大で500gまでしか大麻を置くことができないなどの厳しいルールのもとで運営されています。

ここである疑問が生じます。正式に合法化されておらず、少量しか所持・栽培できない状況で、コーヒーショップはどのように大麻を仕入れているのか。つまり、表側（客への販売）は容認されているものの、裏側（店舗の仕入れ）はおそらく違法行為で成り立っているという矛盾が生じているということです。

以前からこのようなグレーゾーンを生み出す状況は、犯罪行為や公衆衛生上の問題を招くということが指摘されており、対応が求められていました。

そこで今回開始されようとしているのが「Weed Experiment」と呼ばれるトライアル。これは、政府が承認した業者が栽培した大麻をコーヒーショップに供給するというサプライチェーンを構築するという試みになります。

この計画は2019年に「Controlled Cannabis Supply Chain Experiment Act（規制大麻サプライチェーン実験法）」にて規定されています。トライアルは10ヶ所の自治体で実施され、この自治体のコーヒーショップは全て政府が承認した栽培業者からしか大麻を仕入れることができなくなります。その代わり、大麻をストックできる上限が500gから1週間分の量にまで引き上げられます。

政府が承認する栽培業者は全部で10軒となる予定です。

これにより、政府が承認した品質の保証された安全な大麻を問題なくコーヒーショップに供給することが可能なのかが検証されます。また、犯罪の抑止効果や公衆衛生に与える影響なども評価されます。そのため、コーヒーショップのスタッフは、業者から受け取った大麻の種類や量、大麻を受け取った日時、配送業者、在庫の数など、多くの記録を残す必要があります。

このトライアルは2021年より開始される予定でしたが、栽培業者が銀行口座を開設できないなど、主に金銭や物流の問題により、何度も延期され続けていました。また、栽培業者は当初10軒選ばれていましたが、1軒が認可を失い、なおかつ供給をスタートできるのは現時点でたった1軒のみという状況となっています。

このような状況ではありますが、今回保健大臣は今年の第4四半期（10〜12月）より、まずティルブルフ（Tilberg）とブレダ（Breda）にて6ヶ月間トライアルを開始する予定であることを明かしました。また、供給可能な栽培業者が3軒に達した時点で開始するとも述べています。

その後、2024年にこの2ヶ所でのノウハウを参考に、残り8ヶ所の自治体でも本格的にプログラムが開始されることになっています。

プログラムが実施される10ヶ所の自治体はティルブルフ、ブレダ、アルメレ（Almere）、アーネム（Arnhem）、フローニンゲン（Groningen）、ヘールレン（Heerlen）、ヘレヴートスライス（Hellevoetsluis）、マーストリヒト（Maastricht）、ナイメーヘン（Nijmegen）、ザーンスタット（Zaanstad）であり、オランダ最大の都市であるアムステルダムは含まれていません。

なお、アムステルダムでは2023年5月より、人気歓楽街「飾り窓地区（Red Light District）」を含むDe Wallen地区において大麻の屋外喫煙が禁止される予定です。