アムステルダムの赤線地帯(飾り窓地区)での大麻の屋外喫煙を禁止へ

アムステルダムの赤線地帯(飾り窓地区)での大麻の屋外喫煙を禁止へ

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アムステルダム市議会は2月9日、公共の場(路上)での大麻の喫煙を5月中旬から禁止する意向を発表。この政策は、アムステルダムの人気歓楽街「飾り窓地区(Red Light District)」を含むDe Wallen地区において実施される予定です。

法案はまだ正式に承認されていませんが、地元メディアによれば、ほぼ全ての議員がこの措置を支持しており、ほぼ確定事項となっています。

そもそもなぜ、今回このような政策が実施されようとしているのでしょうか?

オランダの首都であり、国際都市として知られるアムステルダムは、多くの水路や運河がめぐらされた美しい都市であり、美術館や博物館も多数存在する文化的な都市でもあります。

一方、性産業や大麻に対しリベラルなことでも知られています。売春宿は2000年に合法化。大麻に関しては寛容政策により、18歳以上の人は5g以下の大麻の所持や5株までの栽培が容認され、またコーヒーショップと呼ばれる大麻ショップで大麻の購入や使用も可能です。

多くの観光客は、芸術や文化のためではなく、こういったリベラルな側面を求めてこの地に足を踏み入れている傾向にあります。しかし、「性産業を観光の名所と見なすのは、今の時代にはふさわしくない」という声が上がっています。

かつて、アムステルダムの「飾り窓地区」では、売春宿の見学ツアーが行われていました。見学ツアーの団体は1グループあたり15〜20人で構成されており、毎週1000以上ものグループが来訪。売春宿の人々は酔った状態で訪れる観光客から多くの迷惑行為を経験し、またその混雑さにより、近隣住民にも悪影響が及んでいました。

その結果、アムステルダム市議会は2020年、「飾り窓地区」の見学ツアーを禁止しています。ですが、世界的にはコロナ禍が落ち着いた2022年にも約1,800万人もの海外観光客がこの都市に訪れており、その混雑さと賑わいにより、睡眠を妨げられるなど、飾り窓地区は居住区とすぐ隣り合わせの場所にあることから未だに近隣住民からの苦情が出ています。

また、飾り窓地区で働く人々からは「観光客が多すぎて仕事にならない」という声も上がっています。働く人々だけでなくサービスを受けようと訪れる人々も観光客の好奇の眼を恐れ、近寄りがたくなってしまっているのだとか。

このような状況から、近年アムステルダムでは、性産業やソフトドラッグに偏った観光のイメージを払拭しようとする動きが活発化しています。例えば、アムステルダム市長フェムケ・ハルセマ氏は昨年より、海外観光客によるコーヒーショップの出入りを禁止しようと奮闘しています。

そして今年春からは、売春、飲酒、ドラッグのために街を訪れる人々を思い留まらせるため、「アムステルダムに近づかないで」という広告キャンペーンを実施する予定です。

今回の「飾り窓地区」における大麻の路上喫煙を禁止しようとする方針は、このキャンペーンの一環ということになります。

法案では、他に以下のことが規定されています。

・レストラン、バー、ストリップ劇場は、金・土曜は午前2時までに閉店すること(現在、週末は3〜4時まで)。

・売春宿は午前3時までに閉店すること(現在、週末は午前6時まで営業可能。これに関しては4月1日より実施する構え)。

・販売時間外において、アルコール飲料は客の目に触れないようにするか、店から撤去すること(現在、木〜日曜において、午後4時以降のアルコールの販売は違法)。

・木〜日曜の午後4時〜午前1時において、大麻の持ち帰り販売を禁止することも検討中。

・迷惑行為が減らない場合は、コーヒーショップのテラス席における喫煙の禁止も検討。

このような一連の政策を通して、ハルセマ市長はアムステルダムを「ソフトドラッグや性産業」ではなく、「街の豊かさ、美しさ、文化施設」で魅了したいという考えを示しています。

DutchNews.nl「Amsterdam bans smoking cannabis outdoors in the red light district」https://www.dutchnews.nl/news/2023/02/blown-off-public-cannabis-smoking-ban-in-amsterdams-red-light-district/

NL Times「Amsterdam wants to ban smoking cannabis in the Red Light District from mid-May」https://nltimes.nl/2023/02/09/amsterdam-wants-ban-smoking-cannabis-red-light-district-mid-may

BBC News「Amsterdam bans cannabis in its red light district」https://www.bbc.com/news/world-europe-64591394

Mugglehead Magazine「Amsterdam may ban cannabis smoking around popular tourist areas」https://mugglehead.com/amsterdam-may-ban-cannabis-smoking-around-popular-tourist-areas/

The Guardian「Amsterdam considers banning ‘cannabis tourists’ from its coffee shops」https://www.theguardian.com/world/2022/oct/01/amsterdam-considers-banning-cannabis-tourists-from-its-coffee-shops

TABIZINE「2020年からアムステルダムの「飾り窓」グループツアー禁止に。なぜ?」https://tabizine.jp/2019/04/05/251210/

Time Out「Amsterdam could ban tourists from its cannabis coffeeshops」https://www.timeout.com/news/amsterdam-could-ban-tourists-from-its-cannabis-coffeeshops-011121

Time Out「Amsterdam is cracking down on rowdy tourists」https://www.timeout.com/news/amsterdam-is-cracking-down-on-rowdy-tourists-120622

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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