大麻成分CBD、留守番や車での移動時における犬のストレスに有効性示す

大麻成分CBD、留守番や車での移動時における犬のストレスに有効性示す

- イギリスの臨床試験

2月22日、大麻に含まれる成分CBDが飼い主から離れた時や車での移動時における犬のストレスを緩和する可能性が報告されました。この論文は「Frontiers in Veterinary Science」に掲載されています

今回研究を行ったのは、50年以上に渡りペットの健康に関する研究を行っているイギリスの「ウォルサムペットケア科学研究所(Waltham Petcare Science Institute)」。

この研究では、調教師から離れた時(分離試験)と車での移動時(自動車試験)で犬にストレス負荷がかかるのかを検証しつつ、そのストレスに対しCBDが有効なのかが調べられました。

検証が行われたのは、研究所で育てられていた平均年齢4.1歳の健康な成犬40匹(ラブラドール・レトリバー17匹、ビーグル8匹、ノーフォーク・テリア15匹:雄22匹、雌18匹)。

これらの犬はCBD群、プラセボ(偽薬)群にそれぞれ20匹ずつランダムに振り分けられ、21匹で分離試験(CBD群11匹、プラセボ群10匹)、19匹(CBD群9匹、プラセボ群10匹)で自動車試験が実施されました。

CBD(4mg/kg)及びプラセボは試験開始2時間前に、カプセルにて朝食とともに経口摂取。

分離試験は、慣れ親しんだ調教師から45分間離れ、部屋に1匹取り残されるといった内容。自動車試験では、急なUターンなどを含む10分間のドライブを実施。部屋や車内はカメラにてモニタリングされ、犬には評価に用いる専用モニターが装着されました。

評価は基本的なバイタルサイン(体温、心拍)、血液データ(コルチゾール、免疫グロブリンA[IgA]、血糖値)、行動観察によって実施。できるだけ正確な評価を行うため、評価者はどの犬にCBDが使用されているのか把握できないよう盲検化されました。

主な結果は以下の通り。

・分離試験・自動車試験ともに、心拍数・コルチゾール値の上昇やストレスを示す行動指標の増加が認められ、ストレス負荷が高いことが示された。これらの変化は、特に自動車試験で著しかった。加えて、分離試験では活動量、鳴き声、移動距離の増加、自動車では口を舐める行動の増加が認められた。

・自動車試験において、CBD群ではコルチゾール値の上昇が有意に低かった。分離試験でもCBD群で上昇が低かったが、統計的な差は認められなかった。

・分離試験において、CBD群はプラセボ群よりも移動距離が有意に長く、鳴き声が少なかった

・分離試験において、両群とも「不安」「探索的」「ストレス」「不快」が高得点となり、「リラックス」が低スコアに。これに加え、プラセボ群では「神経質」「悲しみ」「緊張」の増加が報告されたが、CBD群では「落ち着きの無さ」の減少が認められた。CBD群はプラセボ群よりも「悲しさ」「ストレス」「緊張」「不快」の評価が有意に低かった

・自動車試験において、両群とも「不安」「神経質」「落ち着きの無さ」「ストレス」「緊張」「不快」が高得点となった。これに加え、プラセボ群では「リラックス」「快適」が低下し、CBD群では「探索的」が増加した。全体として、CBD群では「悲しさ」のスコアが有意に低かった。また、ベースラインから試験実施にかけて、プラセボ群よりも「リラックス」「穏やか」「快適」の減少、「悲しさ」の増加の程度が有意に少なかった

これらの結果から、「調教師(飼い主)から離れること」や「車での移動」(特に後者)は、犬にとってストレスとなることが明らかに。そして、プラセボ群と比べ、CBD群ではストレス指標が低く、よりリラックスしていた可能性が示されました

研究者らは「本研究により得られた結果から、犬にとって分離期間や車での移動はストレスとなるイベントであり、車での移動ではより顕著なストレス反応が起こることが示された」「これらのイベントの2時間前に4mg/kgのCBDを単回投与すると、犬の急性ストレスのいくつかの指標が減衰し、犬の感情的なウェルビーイングが改善するようである。他の投与量や剤形におけるCBDの効果、そして反復投与が効果を向上させるかどうかをより理解するために、さらなる研究が必要となる」と結論づけています。

人や犬などの哺乳類には「エンドカンナビノイドシステム(ECS)」と呼ばれる神経系が存在し、このシステムはストレス反応と密接に関係しています。CBDはECSを活性化することで知られている成分であり、これまでの研究により、ECSの活性化はストレス反応を減衰させることが明らかとなってきています。(詳しくは、「不安とCBD・医療用大麻」の記事にある「ストレスとECS」「ECSを介したCBDの作用」の項をご参照下さい)。

そのため、CBDが犬のストレスに有効であるというのは、大いに考えられることでしょう。

なお、ウォルサムペットケア科学研究所は2022年9月に、健康な犬にCBDを4kg/mg/日の用量で6ヶ月間投与しても、忍容性が良好(多少副作用があるかもしれないが、基本的には安全)であることも報告しています

犬にCBDを使用することで得られたポジティブ報告は、今回が初めてではありません。

2022年1月に公開されたスロベニアの調査では、回答者の約4割が犬や猫といったペットにCBDを使用していたことが明らかとなり、CBD使用により健康状態の改善、幸福度の向上、リラックスの促進などが報告されています。

2022年7月に公開されたアメリカの研究では、難治性てんかんを有する犬にCBDとCBDAを主成分としたオイルを使用した結果、ほとんど副作用がみられることなく、発作頻度の減少が認められています。

また、2022年4月に日本の獣医師らは、CBD使用により犬のアトピー性皮膚炎のかゆみの発生が減少した症例を報告しています

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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