健康な犬に対するCBDの長期連日使用、十分な忍容性を示す

健康な犬に対するCBDの長期連日使用、十分な忍容性を示す

- イギリスの臨床試験

大手製菓メーカーUHA味覚糖がCBD(カンナビジオール)グミを製造したり、日本国内において地上波テレビで紹介されるなどCBDの認知度は日に日に高まってきています。

CBDは人において様々な治療効果が期待されていますが、それは犬においても同様で、実際にてんかんアトピー性皮膚炎のかゆみ変形性関節症などにおいて有効性が報告されています。

ですが、CBDがそういった病気や症状に有効だとしても、実際に自分の愛犬に使用するとなったら「犬にCBDを使用しても大丈夫なのだろうか?」と心配になるのではないでしょうか?今回ご紹介する論文は、そんな方々にとって参考となるものです。

今月21日、健康な犬に対するCBDの長期使用の安全性を評価した結果がイギリスの研究者らにより報告されました。

この研究に参加したのは、同じ環境で飼育されたラブラドール・レトリバー17匹、ビーグル8匹、ノーフォークテリア15匹の合計40匹。

これら40匹の犬をCBD投与群20匹とプラセボ(偽薬)投与群20匹に分け、それぞれを比較することでCBDの安全性を検証。公平な評価のため、獣医やブリーダーといった評価者はどの犬がCBDを摂取しているのか分からないよう盲検化されました。

最初の8週間でベースの健康状態を把握し、その後CBDを6ヶ月間(26週間)に渡り毎朝体重1kgあたり4mgの量でソフトジェルカプセルにて経口投与。その後CBDの投与を中止し、4週間状態を観察する流れで研究は進められました。

この間、CBDの安全性の評価は血液検査(CBD投与開始2、4、10、18、26週間後、投与中止2、4週間後)、尿検査(CBD投与開始4、10、18、26週間後、投与中止4週間後)、ブリーダーによる健康状態の評価(2回/日)やQOLの評価(1回/日)、獣医師による診察(2週間に1回)により行われました。またこれに併せ、血液、尿、便中(便も尿と同じ頻度で採取)のCBD濃度も測定されました。

健康状態・QOLの評価

ブリーダーによる1日2回の状態観察と獣医師による2週間に1回の診察において、CBD群とプラセボ群との間で健康状態に有意差は認められず、有害現象も観察されませんでした。

QOLの評価は「幸せ」「活発さ」「移動」「リラックス」「社交性」の5領域における7段階評価で行われましたが、これも両群で差が認められず、CBDが健康な犬のQOLに悪影響を及ぼさないことが示されました。

血液検査

研究期間中のある時点においてのみ、総蛋白やカルシウム値の平均が基準値より低値となりましたが、特に臨床症状が認められなかったことから、臨床的な関連はないと判断されました。

CBDの使用では肝酵素の上昇がよく報告されますが、この研究においてもCBD投与後4、10、18、26週間後にALP(アルカリフォスファターゼ)の上昇が認められました(4.7〜15.1U/Lの範囲)。この値は投与中止4週間後に基準値まで回復しました。

ですが、その他の肝機能の指標となるALT(GPT)、AST(GOT)、γ-GTP、総ビリルビン値、総胆汁酸値はいずれもCBD群とプラセボ群との間で有意差が認められませんでした。アルブミン(肝臓で合成されるタンパク質)はCBD投与後18、26週間後においてのみCBD群で有意に低値となっていましたが、全体の平均値が基準値の範囲内であることから、臨床的な関連性は低いとされました。

CBD投与群で上昇が認められたALPですが、ALPは肝臓の異常だけでなく、骨の代謝異常を発見する際の指標ともなります。そのためこの研究では、骨代謝マーカーであるBAP(骨形成の指標)とCTX(骨吸収の指標)も調べられました。

※骨代謝とは

骨は成長しきった後も常に新陳代謝を繰り返し、良好な状態を維持している。この骨代謝は骨芽細胞による骨形成(新しい骨を形成)と、破骨細胞による骨吸収(古い骨を分解)のバランスにより保たれている。

その結果、BAPのみ有意な上昇が認められ、この上昇はALPと正の相関関係にありました。これに関して研究者らは「なぜBAPが上昇しているかについては詳しく調べる必要があるが、CTXが上昇していないことを考慮すると、骨の健康をサポートするために作用している可能性がある」と述べています。

実際マウスにおける研究では、CBD使用により骨折治癒の促進骨密度の改善が報告され、また細胞株による研究でも骨形成を促進する可能性について報告されています。

尿検査

CBD投与期間中、尿比重やpHは両群において有意差が認められず、糖、タンパク、ビリルビン、潜血などが検出されたという報告もありませんでした。

血液・尿・便中のCBD濃度

全体として、CBD投与開始に伴い血中濃度は増加し、そのまま安定し経過。投与中止2〜4週間後には急激な減少が認められました。

ただし、犬によってCBDの血中濃度に大きな差がみられ(2週間後:28〜165ng/ml、4週間後:33〜157ng/ml、10週間後:31〜167ng/ml、18週間後:23〜234ng/ml、26週間後:28〜188ng/ml)、小型犬であるノーフォークテリアは、大型犬であるラブラドール・レトリバーよりも血中濃度が低い傾向にありました。

便中のCBD濃度も血中濃度と同様に安定した増加を示し、個体間で濃度にばらつきがみられました。尿中のCBD濃度は少なく、検出されたのはCBD投与群20匹のうち12匹にとどまりました。

これらのことから、今後より多くの犬において、あるいはそれぞれの犬種において、体内のCBD濃度を検証していく必要があると研究者らは述べています。

まとめと注意点

以上の結果から、6ヶ月に渡るCBD4mg/kg/日の経口投与は健康な犬にとって忍容性が良好である(多少副作用があるかもしれないが、基本的には安全)と研究者は結論づけました。

ただしこの結果は全ての犬に当てはまるものではありません。特に大切なのは、この研究に参加した犬はみな健康だということです。

例えば肝臓が悪ければ悪影響が懸念されますし、他にも病気により服薬が必要な場合、CBDが薬によって代謝に影響を与えることを考慮すると、結果が異なってくることは十分に考えられます。

そのため、何らかの疾患や症状に対してCBDを使用したい場合は、自己判断ではなく、獣医師に相談して使用することが望ましいです。

人においての説明にはなりますが、CBDの代謝や排泄、薬との相互作用についてはこちらの記事をご参照下さい。

廣橋 大

精神病院に勤める現役看護師。2021年初頭より大麻使用罪造設に向けた動きが出たことをきっかけに、麻に関する情報発信をするようになる。「Smoker’s Story Project」インタビュアー。

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