大麻は、ほぼ全ての部位を利用することができ、食品、繊維、建材など地球上で最も用途の広い作物の一つです。
その大麻が食品加工業界、特にプラントベースミート(植物肉:植物性原料を使用した代替肉)の製造に革命をもたらす可能性があることが日本での新しい研究で明らかになりました。
茨城県の国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構の研究チームによる論文「Hemp: A Sustainable Plant with High Industrial Value in Food Processing(ヘンプ:食品加工において高い産業価値を持つサステナブル植物)」は、「MDPI」のオープンアクセスジャーナルである「Foods」に2月2日に掲載されました。
「SDGsの時代には、貴重な産業生産物を提供し、同時に環境への負荷が少ない有用な植物を探索する必要があります。ヘンプは、そのような要求に応えるために、グルテンフリーの作物として最も適した植物の一つと思われます。」と研究者は述べ、「ヘンプは、栽培に必要な水や農薬が少ない持続可能な植物です。生育期間は短く、ほぼ全ての部位が多目的な利用価値を持ちます。ヘンプの種子は高タンパク、低糖質で、食物繊維や不飽和脂肪酸を豊富に含んでいます。種子から油を圧搾した後に残留する塊は、食品加工に有用なタンパク質豊富な素材です。また、麻の実タンパク質は、乳化剤、植物性肉、ガス保持膜など新しい食品の開発に適した特徴的な性質を有しています。また、システインに富むタンパク質の特徴は、ジスルフィドを介した他の供給源のタンパク質とのユニークな相互作用を実現するため、新しい食品素材の開発を促進することが期待されます。一方、ヘンプタンパクは他の植物性タンパク質と比較して、溶解性が低く、処理に高温が必要であることが報告されています。そのため、今後の食品産業への応用に向け、適切な反応条件を検討する必要があります。科学的な理解が進めば、大豆タンパク質に比べて研究が遅れているこのタンパク質の利用拡大が促進されるでしょう。以上のことから、ヘンプはSDGsの時代において、汎用性の高い植物として適していると言えます。ヘンプの種子とそのタンパク質は、食品産業における有望な食品素材となることが期待されます。」と結論付けています。