ヘンプ衣料の市場規模、2028年までに101億ドルに達すると予測される

ヘンプ衣料の市場規模が2028年までに101億ドルに達すると予測される

世界大手の市場調査会社Research and Markets社の調べにより、ヘンプ衣料品の市場規模が2028年までに101億ドルに達する見込みであることが明らかとなりました。

同社調べでは2022年から2028年までの間、ヘンプ衣料市場のCAGR(Compound Annual Growth Rate:年平均成長率)は26%まで上昇すると予測されています。

ヘンプとは、陶酔作用のある成分THCの含有量が少ない大麻のことで、日本でも古くから繊維のために活用されてきた歴史があります。つまり、ヘンプ衣料は昔から存在するにも関わらず、次世代を担う可能性を秘めているということです。

ヘンプ素材の衣服には、以下のような特徴があります。

・優しい着心地
・UVカット(紫外線遮断率90%以上)
・防カビ、消臭、抗菌性
・耐久性が強い
・通気性、保湿性に優れる(夏は涼しく、冬は暖かい)
・染色性が良い

これだけでもヘンプは優れた素材であることが分かりますが、Research and Markets社の報告では、市場規模拡大の最大の要因は「環境への配慮」にあるとされています。

環境保護への声が高まる昨今、「SDGs(持続可能な開発目標)」「オーガニック」「サステナブル」といった言葉を耳にする機会が多くなりました。環境への取り組みは企業としても必至のものとなり、消費者からもこういった製品の需要が高まっています。

ファッション業界では資本主義の中、服の”大量生産”が行われる一方で、服の”大量廃棄”も行われており、その廃棄量は1秒につきトラック1台分に及ぶと推定されているほどです。この数値が地球環境にどれほど悪影響を及ぼしているのかは、想像に難くないでしょう。

ヘンプは成長が早く、栽培開始から4ヶ月前後でおよそ3〜4メートルとなり、収穫が可能となります。また、農耕に適さない不良土でも育つことができます。そのため、人工的な肥料や農薬を使用する必要がなく、まさに「オーガニック」と言えます。

ヘンプは不良土でも育つどころか、土壌に蓄積した重金属、農薬、毒素などを浄化することで知られており、土壌改善(ファイトレメディエーション)においても有望視されています。

衣類の繊維に用いられるのは、ヘンプの茎の皮の部分です。ですがヘンプの利用価値はそれだけに留まらず、茎の芯からは建材、プラスチック、燃料などが、種からは栄養補助食品やオイルなどを作ることができます。

このことから、ヘンプは無駄のない再生可能な資源と言えるでしょう。実際に、ヘンプはサステナブルな繊維として、ジュート(黄麻)、リネン(亜麻)、オーガニックコットン、竹などと共にリストアップされています。

また、環境問題を語る上で欠かすことのできない「二酸化炭素の削減」においても、ヘンプは大いに役立ちます。

一般的に植物が二酸化炭素を吸収することは多くの人が知るところだと思いますが、特にヘンプはこの能力に優れており、成長するまでの間に1エーカー(約4,047㎡)あたり10〜20トンもの二酸化炭素を吸収できるとされ、これは人間1人が1年間に排出する二酸化炭素の量に相当します。

以上のことから、ヘンプ衣料は製品そのものがサステナブルで環境への負担が少ないだけでなく、栽培の段階で地球環境を癒やす力があるということが分かります。それゆえ、ファッション業界においてヘンプ衣料は「次世代を担う」といっても過言ではなく、これが今回の市場規模の予測につながったということになります。

なお、2021年のヘンプ衣料市場はTシャツがシェアの大部分を占めており、特に男性スポーツウェアの需要が高く、今後もこの需要は伸び続けると予想されています。

昨年9月に開催されたアメリカテレビ最大の祭典「プライムタイム・エミー賞」の授賞式では、「About Damn Time」や「Truth Hurts」といったヒット曲で知られる歌手でラッパーのLizzoが、ヘンプ繊維のつけまつげを付け、人々を魅了したことが話題となりました。

ヘンプ繊維のつけまつげはつけ心地が良く、耐久性にも優れており、20回まで装着が可能とのことです(通常のつけまつげだと、早いと2、3回でダメになる)。

最後に、言わずと知れたアメリカの老舗アウトドアウェアブランド「パタゴニア(Patagonia)」が制作した動画をご紹介。ヘンプについて分かりやすく説明されていますので、興味のある方はご覧下さい。

Research and Markets「Global Hemp Clothing Market Size, Share & Industry Trends Analysis Report By End User (Women, Men and Kids), By Type (Dress, Shirts, Pants, Coats & Jackets, Activewear, T-shirts), By Distribution Channel, By Regional Outlook and Forecast, 2022 – 2028」https://www.researchandmarkets.com/reports/5658924/global-hemp-clothing-market-size-share-and?utm_source=BW&utm_medium=PressRelease&utm_code=7s2mm5&utm_campaign=1800665+-+The+Worldwide+Hemp+Clothing+Industry+is+Expected+to+Reach+%2410.1+Billion+by+2028%3a+Low+Cost+of+Hemp+Fabric+Drives+Growth&utm_exec=jamu273prd

Pubmed Central「Potential of Industrial Hemp for Phytoremediation of Heavy Metals」https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8912475/

High Times Magazine「Lizzo Sports Hemp Eyelashes in Instagram Trend」https://hightimes.com/celebrities/lizzo-sports-hemp-eyelashes-in-instagram-trend/

MERRY JANE「False Eyelashes Made From Hemp Fibers Are Now a Thing, Thanks to Lizzo」https://merryjane.com/news/false-eyelashes-made-from-hemp-fibers-are-now-a-thing-thanks-to-lizzo?infinite=true

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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