米国Amazonのヘンプ商品96%が虚偽の用量を表示

米国Amazonのヘンプ商品96%が虚偽の用量を表示

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大麻製品の安全性と透明性の向上に取り組む消費者調査企業「CBD Oracle社」の調査によれば、米国のAmazonで販売されているヘンプ商品の96%が偽りの用量を表示しています

これは調査で明らかになった”悲報”の一部にすぎず、このような現状はヘンプ市場に悪影響を及ぼすだけでなく、消費者に健康被害をもたらす危険性があります。

米国のAmazonでは基本的にCBD製品の販売は認められていません。例外として、適用される法律や規制の遵守を条件とし、外用のCBDクリームやローションのみ販売が許可されています。

CBDの販売禁止の理由として、州により規制が異なることや、全米でも「連邦食品・医薬品・化粧品法(FD&C Act)」で州をまたいだ食用CBD製品の販売が禁止されていることなどが挙げられています。

しかし、CBD Oracle社によれば、Amazonで「CBD gummies(CBDグミ)」と検索すると、数多くの商品がヒットします。これらの商品には「CBD」という用語は使用されておらず、「hemp(ヘンプ)」や「hemp extract(ヘンプエキス)」といった用語が用いられています。

つまり、現状は「CBD」という用語を避けることで、業者はAmazon内でCBD商品を販売することが可能となっています。

これらの背景から、CBD Oracle社はAmazonで販売中のヘンプ商品に含まれている成分や販売状況などを調査しました。

同社は2023年12月から2024年1月の間、Amazonで販売中の人気ヘンプ商品を56点購入(グミ45点、チンキ剤8点、外用クリーム2点、ミント1点)。これらの商品は成分分析や安全性検査を行うため、InfiniteCAL Labsに送られました。

商品の30%がCBDを含有

分析の結果、30%(17点)の商品からCBDが検出され、Amazonのポリシーや連邦食品・医薬品・化粧品法に違反していたことが明らかとなりました。

これら17点の製品は、1パッケージあたり平均547mgのCBDを含有。少ないもので28mgのものもあれば、多いもので1,582mg含まれている製品もありました。

また、6点の商品からはTHCが検出されましたが、これらは2018年の農業法で定めたデルタ9THCの制限値を下回っていました。

しかし、3点の商品からはデルタ8THCが検出されました(それぞれ1パッケージあたり641mg、2,507mg、3,028mg)。このうち含有量が多い商品には、グミ1個あたり76mgものデルタ8THCが含まれていました。

当然ながら、AmazonではTHC製品の販売も禁止されています。また、約半数の州でデルタ8THCは禁止あるいは規制対象となっています。さらには、嗜好用大麻が合法な州でも、エディブル製品のデルタ9THCの1パッケージあたりの制限値は100mgとされています。

デルタ8THCはデルタ9THCの50〜75%の効力しかないと推定されています。しかし、”グミ1個”にデルタ8THCが76mg含まれていたことは、デルタ9THCに換算してもエディブル製品の制限値を大幅に上回る量であることが分かります。

43%の商品でヘンプ成分なし

56点の商品のうち、62.5%の商品はカンナビノイドを含有していませんでした。ただし、「ヘンプ商品」はカンナビノイドを含む製品ではなく、ヘンプシード(麻の実)やそのオイルを利用した商品なども含まれます。

しかし、分析の結果、43%の商品にはヘンプのいかなる成分も含まれていないことが確認されました。

つまり、単純に考えれば、Amazonで販売されているヘンプ製品の半分近くは、高価な値段で売られている”ただのグミ”であったということです。

96%の商品が不正確な用量を表示

分析の結果、96%の商品が用法・用量を記載していないか、それらの情報が不正確であったことも明らかに。商品に含まれていたカンナビノイドの用量は、平均してラベルやパッケージに表示されている量のわずか25%でした。

ただし、そもそも表示には「カンナビノイド」と明記されておらず、何の含有量なのか不明です。しかし、「ヘンプ商品」という文脈の中では、消費者は通常カンナビノイドのことを指していると解釈すると考えられます。

ひどい場合は、商品そのものの総重量を超える用量が記載されていたり、「200,000,000」という数値のみで単位の記載がない商品も存在。

また、商品の95%が成分分析証明書(COA)を提供していませんでした。成分分析証明書はヘンプ商品に含まれる成分や品質を把握するための唯一の証拠であり、多くの州がヘンプ商品にこれを添付することを義務付けています。

なお、安全性検査の結果、これらの商品からは幸い、微生物汚染、残留重金属、マイコトキシン(カビ毒)、異物、農薬は検出されませんでした。

52%の商品が未承認の医療効果を主張

米国FDA(食品医薬品局)によれば、業者は食品やサプリメントの販売にあたり、「カルシウムは丈夫な骨を作る」といったように、身体の構造や機能に関してアピールすることは許される可能性がありますが、病気の診断・緩和・治療・予防を謳うことは禁止されています。

このことは日本でも「薬機法」により禁止されています。

それにも関わらず、調査対象となったヘンプ商品のうち、52%は販売ページでFDAが未承認の医療効果を主張していました。これらの主張として多かったのは、痛みの緩和不安の緩和睡眠促進風邪の予防など。

最も露骨な主張は、ペット用のヘンプ商品において確認されました(「てんかん発作を抑える」など)。

Amazonの現状はヘンプ市場を弱体化させるリスクがある

前述のように、販売中の人気商品のほとんどがAmazonのポリシーや法律に違反していました。

しかし、CBD Oracle社によれば、Amazon内で特に取締りが行われている様子はなく、違反している商品について第三者が報告しても、その商品がいつまでも販売され続けている状況となっています。

また、悪質な業者は違反により商品の販売が停止されたとしても、同じ商品に新たなラベルを貼ることで、再度同じ商品を販売ページにアップロードしています。

CBD Oracle社はAmazonのヘンプ市場を分析した結果、その規模は年間3,600万〜1億2,500万ドルになると推定。このことは多くの消費者がAmazonで”低品質のヘンプ製品”に接する可能性があることを意味します。

言い換えれば、規制や法律を遵守している米国の健全なヘンプ企業は、Amazonで販売されている”偽りのヘンプ製品”により、多くの顧客が奪われているかもしれないということです。

なお、Amazonに限ったことではなく、eBayやWalmartのような巨大なマーケットプレイスでも同様のケースが見られていると、CBD Oracle社は指摘しています。

つまり、Amazonの現状は、あくまでこの問題の典型例の1つにすぎないということです。

ある消費者がヘンプに興味を持ち、初めて手に取ったヘンプ商品が低品質なものであったらどうでしょうか?それが何の効果もない偽りの商品であると知った瞬間、その消費者は悲しいことに、ヘンプそのものに嫌悪感を抱くかもしれません。

最悪の場合、正確な用量・成分が表示されていないヘンプ商品は健康被害をもたらす可能性もあります。このような場合、ヘンプ市場全体の信頼が損なわれ、法律により市場そのものが閉鎖する危険性もあるでしょう。

そうなった場合、私たちが望んでいる大麻やヘンプの恩恵は、過度な規制の上で成り立つ合法市場か、違法市場の中でしか享受できなくなってしまいます。

解決策は監視の強化かCBD規制の緩和

CBD Oracle社はAmazonがこれらの問題を解決するために、2つの解決策を提案しています。

1つ目は、ヘンプ製品を販売する業者の取締りに人員を割き、入手可能なヘンプ製品について再評価を行い、市場を継続的に監視すること。

2つ目は、CBDに関するポリシーを緩和し、販売業者に定期的なラボデータの提供を義務付けることで、CBD製品の販売を認めることです。

CBD Oracle社は、適切な監視がない中でCBDを禁止するのは「嘘の温床」を生み出すだけであり、厳しい規制の中でCBDの販売を認めることは悪質な業者を退け、健全な業者が繁栄することを可能にすると主張しています。

AmazonジャパンではCBD製品の販売が認められている

米国とは異なり、日本のAmazon(Amazon.co.jp)では2022年よりCBD製品の販売が認められています

ただし、AmazonジャパンでCBD製品を販売するためには、以下の条件を満たす必要があります。

  1. 過去にTHCが検出されていない商品であること

  2. 発送を自社で行うこと(Amazonが出品者から在庫商品を預かり、商品が売れた場合に梱包から発送まで行うFBA[フルフィルメントby Amazon]は利用不可)

  3. CBD輸入にあたり厚生労働省から提示されている書類が全て提出されていること。またはカンナビノイド審査委員会による審査済証が付与された商品であること

  4. THC以外の違法な成分が入っていないこと

  5. 商品パッケージに薬機法、健康増進法その他の法令にて禁止されている効能効果表記、誇大表記などがないこと

  6. Amazonジャパンの営業担当経由でアカウント作成を行うこと

他にも、出品規約では許可されないCBD製品として、「法令により所持等が禁止されている大麻由来製品(例:THCが含まれている製品)」、「過去にTHC混入が発覚したCBD商品 (同ブランド品、シリーズ品を含む)」、「規制物質と類似した作用を及ぼすと考えられる物質(例:THCやHHCと類似した作用を及ぼす物質など)」が挙げられています。

日本でも消費者を守る取り組みが求められる

2023年12月、日本では「大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律案」が可決されました

同法では、違法な大麻の定義が「大麻草の茎・種以外の部位」から「THCを一定量以上含んだ大麻草やその製品」へと変更されます。

同法はまだ施行されていませんが、これが施行されれば日本でもCBDの国内生産が可能となるため、CBD市場が大きく拡大する可能性があります

矢野経済研究所のレポートによれば、日本のCBD市場は2019年に約47億円規模でしたが、2021年には185億円規模となっており、2025年には830億円規模になると予測されています。

しかし、このような中、適切な規制やガイドラインが存在しなければ、米国のAmazonと同様の事態が起こる可能性は極めて高いと考えられます。

そのため、CBD Oracle社の調査で明らかとなった事実は決して他人事ではなく、日本においても重く受け止めるべき内容と言えるでしょう。

High Times「False Dosage Labels on 96% of Tested Amazon Hemp Products, Many With No Hemp or CBD」https://hightimes.com/news/false-dosage-labels-on-96-of-tested-amazon-hemp-products-many-with-no-hemp-or-cbd/

Ganjapreneur「Review Finds Many Hemp and CBD Products Sold on Amazon Mislabeled」https://www.ganjapreneur.com/review-finds-many-hemp-and-cbd-products-sold-on-amazon-mislabeled/

CBD Oracle「Liars Ruling the Roost: Lab Testing Reveals the Reality Behind Amazon’s Hemp Market」https://cbdoracle.com/news/amazon-hemp-market-study/

CBD Oracle「Amazon’s Hemp Market: An Independent Analysis」https://cbdoracle.com/wp-content/uploads/2024/03/CBD-Oracle-Amazon-Hemp-Market-Study-2024.pdf

PR Newswire「CBD Oracle Lab Study Finds “Hemp Gummies” Sold on Amazon with Huge Doses of Delta-8 THC」https://www.prnewswire.com/news-releases/cbd-oracle-lab-study-finds-hemp-gummies-sold-on-amazon-with-huge-doses-of-delta-8-thc-302093754.html

Marijuana Moment「Florida Lawmakers Pass Bill To Restrict Hemp Products And Ban Delta-8 THC, Sending It To DeSantis’s Desk」https://www.marijuanamoment.net/florida-lawmakers-pass-bill-to-restrict-hemp-products-and-ban-delta-8-thc-sending-it-to-desantiss-desk/

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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