ウィスコンシン州知事、大麻関連の前科者に恩赦を与える
ウィスコンシン州マディソンにある州会議事堂

ウィスコンシン州知事、大麻関連の前科者に恩赦を与える

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11月22日、米国ウィスコンシン州のトニー・エバース(Tony Evers)州知事は、同州で医療及び嗜好用大麻が違法となっている中、大麻関連で有罪判決を受けた人々に恩赦を与えたことを明らかにしました

ウィスコンシン州憲法において、州知事は有罪判決を受けた個人に対し恩赦を与える権限が与えられています。

恩赦は犯罪記録を抹消するものではありませんが、公的な許しを与えることで、陪審員を務める権利、公職に就く権利、特定の職業免許を保持する権利など、失われた権利を回復させることができます。

有罪判決を受けた者は、少なくとも5年前に刑期を終え、新たな犯罪歴がない場合に恩赦を申請することが可能。犯罪の性質が非暴力的であるなど、厳しい基準をクリアすることで恩赦が認められます。なお、性犯罪ではその資格はありません。

2019年に就任したエバース州知事は、歴代で最も多くの恩赦を与えています。今回新たに82件の恩赦を与えたことで、その数は1,111件となりました。

82件の恩赦のうち約3分の1(30件弱)は、大麻の所持・栽培・販売による前科者に与えられており、中でも大麻の単純所持に対するものが最多。また、大麻だけに留まらず、他の薬物関連の前科者も今回恩赦を受けた人々の約3分の1を占めました。

ニュースリリースでは以下のように、各人に恩赦を与えた理由について説明がなされています。

・ジョシュア・ハウス(Joshua Haus)氏は10代後半の頃、自宅からマリファナが発見された。現在ハウス氏は州外に住んでいるが、学際的研究の修士号を取得し、牧師となり、地域社会で活発なボランティア活動をしている。

・ラウル・ガルシア・ジュニア(Raul Garcia Jr.)氏は10代後半の頃、マリファナの所持で逮捕された。それからおよそ10年後、ガルシア氏は安定した雇用を維持し、献身的な父親であり、夫である。

・クリストファー・ヘンリー(Christopher Henry)氏は30代半ば頃、マリファナの所持で逮捕された。それから20年以上たった今、ヘンリー氏は林学の学位を取得するための課程を修了し、地元のソフトボールリーグでボランティアをしている。

エバース州知事は大麻改革を支持しており、今年も医療及び嗜好用大麻の合法化を盛り込んだ予算案を提出しましたが、共和党議員が支配する議会により否決されています。

また、ウィスコンシン州では、民主党上院議員メリッサ・アガード(Melissa Agard)氏が大麻の合法化を訴え続けています。エバース州知事の恩赦発表にあたり、アガード議員はXにて「ウィスコンシン州で大麻について最も危険なのは、それが違法であることだ」とポストしました。

アガード議員は今年9月に嗜好用大麻合法化法案を提出していますが、共和党が支配する議会において公聴会すら開かれていません。そのため、現在アガード議員は自身の法案の公聴会を行うよう議会に圧力をかけるため、州民に署名を募っています

2022年11月の世論調査では、ウィスコンシン州有権者の64%が大麻合法化を支持。民主党支持者(82%)、無党派層(75%)では支持が高くなっていましたが、共和党支持者では43%に留まっています。

ウィスコンシン州歳入局によれば、アガード議員の大麻合法化法案が施行されれば、同州では年間1億7,000万ドル(約254億円)近くの税収が見込めます。

なお、共和党のロビン・ボス(Robin Vos)下院議長は今年8月、限定的な医療用大麻合法化法案を今年の秋までに提出すると発言しましたが、未だに成し遂げられていません。

アメリカの多くの州は、単純所持を始めとした大麻の”非暴力的な活動”に対する犯罪化を過ちとし、これらの犯罪記録の抹消や法改正に取り組んでいます。

NORMLによれば、2018年から2022年にかけ、アメリカの州や自治体では大麻関連の犯罪に対し10万件以上の恩赦が与えられ、170万件以上の前科抹消が行なわれました。

2023年に入ってからもカリフォルニア州コネチカット州ロードアイランド州ミズーリ州など様々な州において、大麻関連の前科抹消が進められています。

さらに、今年にはデラウェア州ミネソタ州が嗜好用大麻を合法化。12月にはオハイオ州が全米24番目の嗜好用大麻合法州となります

バイデン大統領は2022年10月、大麻の単純所持で有罪となった人々に対し恩赦を与えることを発表

バイデン大統領は今年に入ってからも、キング牧師記念日黒人歴史月間を記念するイベントなどにおいて、「大麻を所持しているだけで、誰も刑務所に入るべきではありません」と繰り返し公言しています。

Official site of Governor Tony Evers「Gov. Evers Grants 82 Pardons, Bringing Total Pardons Granted to 1,111 」https://content.govdelivery.com/accounts/WIGOV/bulletins/37b8e90

Marijuana Moment「Wisconsin Governor Grants Dozens Of Marijuana Pardons As Advocates Pressure GOP Leaders To Advance Legalization」https://www.marijuanamoment.net/wisconsin-governor-grants-dozens-of-marijuana-pardons-as-advocates-pressure-gop-leaders-to-advance-legalization/

Marijuana Moment「Top Wisconsin Senate Democrat Circulates Petition Calling For Marijuana Legalization Hearing In GOP-Controlled Legislature」https://www.marijuanamoment.net/top-wisconsin-senate-democrat-circulates-petition-calling-for-marijuana-legalization-hearing-in-gop-controlled-legislature/

Marijuana Moment「Wisconsin Could See Nearly $170 Million Annually In Marijuana Revenue Under Top Democratic Senator’s Legalization Bill, State Analysts Estimate」https://www.marijuanamoment.net/wisconsin-could-see-nearly-170-million-annually-in-marijuana-revenue-under-top-democratic-senators-legalization-bill-state-analysts-estimate/

Wisconsin Watch「Do a majority of Wisconsinites support legalizing marijuana?」https://wisconsinwatch.org/2022/11/do-a-majority-of-wisconsinites-support-legalizing-marijuana/

Marijuana Moment「Top Wisconsin GOP Lawmaker Plans To File Medical Marijuana Bill ‘This Fall’ As State Becomes Island Of Prohibition」https://www.marijuanamoment.net/top-wisconsin-gop-lawmaker-plans-to-file-medical-marijuana-bill-this-fall-as-state-becomes-island-of-prohibition/

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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