バイデン大統領、「誰一人として大麻を所持しているだけで刑務所に入れられるべきではない」と再度公言

バイデン大統領「誰一人として大麻を所持しているだけで刑務所に入るべきではない」と再度公言

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バイデン大統領は昨年10月、大麻の単純所持による前科を持つ人々に対し恩赦を与えるとする大統領令に署名

この声明の中でバイデン大統領は「大麻の使用や所持だけで刑務所に入るようなことはあってはならない」と明言。白人と大麻使用率が変わらないにも関わらず、不釣り合いな割合で有色人種が逮捕、起訴、有罪判決を受けてきたことについても言及していました。

バイデン大統領は1月16日、公民権団体National Action Network(NAN)が主催する「マーティン・ルーサー・キング・ジュニア朝食会」に参列。イベント内で行われたスピーチの中で、「誰一人として。もう一度言う。誰一人として、大麻を所持しているだけで連邦刑務所に入れられるべきではない。誰一人として、だ」と公言しました。

続けて大統領は「彼ら(大麻関連の犯罪者)は刑務所から釈放され、完全に恩赦を受け、全記録が抹消されるべきである。そうすれば彼らは『前科はありますか?』と尋ねられても、正直に『いいえ』と答えることができる」と述べました。

1月16日。1月の第3月曜日にあたるこの日は、アメリカでは「キング牧師記念日」という祝日に該当します。

キング牧師(マーティン・ルーサー・キング・ジュニア)は1950〜1960年代における公民権運動・黒人解放運動の指導者です。おそらく多くの人が「I have a dream(私には夢がある)と訴えた彼のスピーチを、一度は耳にしたことがあるでしょう。

では、なぜバイデン大統領はキング牧師記念日に、大麻政策について言及したのでしょうか?

それは黒人差別と大麻取締りとの間に、密接な関係があるからです。

アメリカでは植民地時代より、アフリカ出身の黒人が連れてこられ、奴隷として扱われてきた歴史があります。1863年にリンカーン大統領は「奴隷解放宣言」を出し、これにより全ての人種は平等な市民となり、奴隷制度による負の歴史に終止符が打たれるはずでした。

しかし、これは表面上のものとなってしまいます。これまで当たり前のように黒人を奴隷として利用してきた白人にとって、これは受け入れがたい事実だったからです。そこで(特に南部の)白人たちは、法律の抜け穴を活用し、黒人を事実上の奴隷として扱ったり、白人が黒人よりも優位であることを知らしめるようになりました。

いわれのない理由で黒人を逮捕し、白人の陪審員で独占された裁判所で有罪判決を言い渡し、過酷な労働を強要。「ジム・クロウ法」という人種隔離法を制定し、学校、交通機関、トイレなどの公共施設が「白人用」と「黒人用」に分離されるなど。

このような状況に対し立ち上がったのが、キング牧師です。インド独立の父マハトマ・ガンジーにならい「非暴力、非服従」で人種間の平等を訴えた彼の運動は、全米を巻き込むほど大きなものとなり、ついに1964年に公民権法が制定。これにより、あらゆる人種や宗教などにおける差別が禁止となりました。

しかし、人の心の奥底にあるものはそう簡単には変えられません。

2012年には、黒人の少年トレイボン・マーティンを射殺した白人警察が無罪判決となり、これをきっかけに2013年より、BML(Black Lives Matter:黒人の命は大切だ)運動が開始。

2020年には、コンビニで偽札を使おうとした黒人男性ジョージ・フロイドが警察に取り押さえられ、手錠をした状態にも関わらず首を抑え続けられ、死亡。その映像はSNSを通して拡散され、BML運動が爆発的に広がるきっかけとなりました。

このように、特に法執行機関においては、まだ黒人に対する差別が根強く、これは大麻を始めとした薬物の取締りにおいても同様です。

例えば、2020年のアメリカ自由人権協会(ACLU)の報告では、黒人と白人で大麻の使用率が同じであったにも関わらず、黒人は白人よりも大麻所持で逮捕される確率が3.64倍高かったといいます。

このことから、大麻の非犯罪化や合法化は、法執行機関による不当な差別を減らす可能性があると言うことができます。だからこそ、バイデン大統領はキング牧師記念日に大麻改革について言及したのでしょう。

残念ながら日本でも、アメリカほどではないにしろ、法執行機関による差別は起きています。その代表が「職務質問」です。

警察官職務執行法によると、職務質問は「合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者または既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者」に対し、警察官が実施できるとされています。

しかし現実には、外国人、タトゥー、服装、髪型など、見た目での判断によって職務質問が行われることが多くなっています。2021年には、在日米国大使館より「日本の職務質問は人種差別の疑いがある」と警告も発せられています

これらを考慮すると、今回のバイデン大統領の演説は、同じく大麻が違法である日本においても、全く無関係とは言えないでしょう。

最後に。日本に住んだことのある黒人にインタビューを行ったBuzzFeed Japanの動画をご紹介。「日本で暮らしている時に差別されたことはありますか?」という質問に対し、回答しています。

Marijuana Moment「Biden Touts Fulfilled ‘Promise’ On Marijuana And Calls For Expungements At MLK Day Event」https://www.marijuanamoment.net/biden-touts-fulfilled-promise-on-marijuana-and-calls-for-expungements-at-mlk-day-event/

The Dales Report「President Biden Reiterates Commitment To Federal Cannabis Pardons And Expungements」https://thedalesreport.com/cannabis/president-biden-reiterates-commitment-to-federal-cannabis-pardons-and-expungements/

High Times Magazine「Racial Injustice Persists in Marijuana Arrests Despite Legalization, ACLU Reports」https://hightimes.com/news/racial-injustice-persists-marijuana-arrests-despite-legalization-aclu-reports/

廣橋 大

精神病院に勤める現役看護師。2021年初頭より大麻使用罪造設に向けた動きが出たことをきっかけに、麻に関する情報発信をするようになる。「Smoker’s Story Project」インタビュアー。

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