車椅子からローラースケートへ 医療大麻が著効した女性の話

車椅子からローラースケートへ 医療大麻が著効した女性の話

医学や医療技術が進歩し、多くの病気や症状の治療・コントロールが可能となってきた現代。その傍ら、これらの医療を持ってしても有効性が認められない病状に苦しんでいる人たちが、今もなお存在しています。

大麻は医療効果があることで知られており、特に現行治療で十分な効果が得られない痛みなどに対し、有効性が認められることが多くなっています。

今回ご紹介するのは、15歳の時からコデインを服用し始めたイギリスの女性ジェーン・ヒンチクリフ(Jane Hinchcliffe)氏(44歳)のお話。

彼女は医療用大麻を使用することで、車椅子生活からローラースケートに挑戦できるようになるほど、劇的な回復を遂げています。

この記事は、「WalesOnline」のインタビュー記事を整理し、和訳したものになります。なお、イギリスでは2018年以降、医療用大麻が合法となっています。

大麻と出会うまで

幼い頃から原因不明の痛みに悩まされていたジェーン。医師からは「成長痛」や「線維筋痛症」と診断され、15歳の時にその痛みはコデインを処方されるほどになった(約30年後の2021年には「転換性障害」と診断され、これらは誤診であったことが判明する)。

※転換性障害(機能性神経症状症)とは

特に身体的な問題がないにも関らず、運動機能や感覚に異常が認められる疾患。具体的に、身体が動かない、声を出せない、意思とは関係なく身体が動く、耳が聞こえない、目が見えないなどの訴えが聞かれる。心身の過労、不安やストレスなどが要因とされている。

そんな中でも、彼女はランニング、サイクリング、ウォーキングなどを取り入れたアクティブなライフスタイルを送っていた。しかし、2014年に自転車で転倒し膝にヒビが入ったことで、車椅子生活を余儀なくされることに。

これらの病歴が重なり、彼女は激しい痛みや筋肉のけいれんと闘うことになった。

オピオイド、抗うつ薬、ベンゾジアゼピン系薬など様々な薬を処方されたが、十分な効果は得られず。薬の副作用のせいか、体重もわずか1年で9ストーン(57kg)から18ストーン(114kg)にまで倍増。

「治るかと思いきや、さらに悪化し、痛みは激しくなりました。もはや、走ることはできませんでした。以前はよくやっていたのに、減らさなければならなかったんです」「以前まで私は、痛みを和らげるために何度も医師のもとに訪問しなければなりませんでしたが、結局自分の体を傷つけていただけでした」

このような状況から、ジェーンは今の治療に変わる新たな代替療法を、必死になって探し始めた。

大麻との出会い

2019年、ジェーンはイギリスのイースト・サセックス州ブライトンで開催された「グリーン・プライド(大麻の法改正を求めるフェス)」に参加。そこでTHCを含有したケーキを食べたことで、ジェーンは”目覚め”を得た。

「ハルからはるばる出向かなければならなかったので、処方されたモルヒネを1瓶持っていきました。一人で車椅子で電車に乗らなければならなかったので、その日のためにそのほとんどをとっておいたんです。到着したらすぐに、一定量のTHCを含んだ医療用大麻ケーキを1切れ食べようと思っていました」

「医療用大麻は私の痛みに信じられないほど効果的であったため、処方されたモルヒネが不要であったことに気づき、私は驚きました。正しく摂取することでもたらされる医療用大麻のポジティブな影響に、本当に目が覚めた思いでした」

車椅子は物置へ ローラースケートに挑戦

フェスでの経験以降、医療用大麻の処方について調べていたジェーンは、ライフェ・クリニック(Lyphe Clinic)にたどり着いた。

クリニックの医師は彼女の病歴を調べた上で、医療用大麻を処方。クリニックに予約の電話を入れてから15日後、ついにジェーンは医療用大麻を手に取ることになった。

ジェーンは以下のように語る。

「大麻のおかげで、痛みを効果的に管理できるようになりました。しかし、完全に痛みを取り除くには何年もかかりました」「最近では、絶対に無理だと思っていたローラースケートを始めました。車椅子は物置で暮らしてますよ」

「私にとって今重要なのは、慢性疼痛に苦しみ、(医療用大麻の)必要性に迫られた人々に貢献するために、医療用大麻にまつわる障壁やスティグマを打破することです。医療用大麻はしばしばひんしゅくを買い、医療従事者から処方されることもほとんどありません」

「ライフェ・クリニックを見つける前までは、正直なところ、自分には選択肢がないと感じていて、違法で大麻を購入していました。この方法で購入することは危険であるため、私のストレスと不安レベルは悪化していたことでしょう」

「私のニーズに正確に合った合法的な処方箋があることで、痛みが和らぐだけでなく、信じられないほどの安心感を得ることができます。私は今、再び自分の人生を完全に生きることができるようになりました」

また、彼女を担当したライフェ・クリニックのルイーザ・サール(Luisa Searle)院長は、以下のように語った。

「ジェーンのケースのように、医療用大麻は慢性的な痛みやメンタルヘルスに関連する様々な症状の治療に活用することができます。特に、他の薬や治療がうまくいかなかった場合に有効です。私たちスタッフは、医療用大麻が患者さんの生活に大きな変化をもたらしていることを、日々目の当たりにしています」

「彼女の話は医療用大麻を合法化することの重要性と、複数の異なる治療法を試みた患者に対し、医師がこの治療(医療用大麻)の処方を検討すべき理由を示しています」

ジェーンは現在、オンラインショップ「Sativa Dreamin’」を運営し、CBDの販売を行っている。

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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