CBDフルスペクトラムオイル、線維筋痛症の痛みや抑うつ状態を改善

CBDフルスペクトラムオイル、線維筋痛症の痛みや抑うつ状態を改善

- ブラジルの基礎研究

2022年8月18日、CBD(カンナビジオール)を主成分とした大麻抽出物が線維筋痛症モデルマウスの痛みや抑うつ状態を改善したことがブラジルの研究者らにより報告されました。

線維筋痛症とは全身の筋骨格系の慢性疼痛を主症状とした原因不明の疾患です。痛みだけでなく、頭痛やめまい、逆流性食道炎といった自律神経症状や、うつ病や不眠といった精神症状など多様な症状が認められます。40〜50代女性に好発し、日本でも約200万人の患者がいると推定されています。

今回の研究では、レセルピンを投与することにより機械的刺激(触るなどの刺激)や熱・冷感刺激に対し痛覚過敏やアロディニア(通常では痛みを感じない刺激で痛みを感じること。異痛症)を発症させた線維筋痛症モデルマウスに対し、CBDを主成分としたフルスペクトラムオイルを様々な経路(経口、足底内、髄腔内、脳室内)から投与することにより、有効性の検証が行われました。なお、オイルに含まれるカンナビノイドの割合はCBD:THC(テトラヒドロカンナビノール)=11:1(総カンナビノイド40.2%、オイル1mlにつきCBD15mg)となっていました。

検証の結果、このCBDフルスペクトラムオイルは全ての投与経路において機械的痛覚過敏を軽減。熱刺激に対する痛覚過敏は足底内と髄腔内投与でのみ緩和が認められました。冷刺激の痛覚過敏に対しては、少量(0.1mg/kg)で経口投与した2時間後でしか緩和が認められませんでした。

さらにこの研究では、マウスにオイルを10日間経口投与し、長期使用による有効性も検証されました。その結果、機械的痛覚過敏は有意に抑制され、さらに毛づくろいの回数や時間の増加といったセルフケアの改善や不動時間の減少など、無気力や抑うつ状態の改善も認められました。一方、熱・冷感刺激に対する痛みや不安には有効性が認められませんでした。

まとめると、レセルピン誘発性線維筋痛症モデルマウスにおいて、今回使用したCBDフルスペクトラムオイルは主に機械的刺激に対する痛覚過敏や抑うつ状態に対し有効性を示したということになります。

同年7月に公開されたカナダの研究においては、線維筋痛症患者323名が医療用大麻を使用することにより痛みの減少が認められましたが、これには抑うつや不安といった否定的感情や睡眠の改善が部分的に関係していたことが報告されています。

痛み、特に慢性疼痛には心理面が大きく影響します。大麻の鎮痛作用は様々な研究において報告されていますが、中でも線維筋痛症や神経障害性疼痛などといった「慢性疼痛」に対し有効性を示すことが多いのは、心理面に対する効果も大きく関係しているのかもしれません。

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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