ギリシャ、国産の医療用大麻が初めて患者の手に渡る

2月15日、医療用大麻合法化から約7年が経過したギリシャにおいて、ついに医療用大麻の処方が開始されました。

ギリシャは2017年に医療用大麻を合法化。2018年には医療用大麻の栽培・製造について規定した法律が施行されましたが、医療用大麻の国内生産はなかなか開始されませんでした。

個人的に政府から輸入許可を得ることでサティベックスやエピディオレックスのような大麻由来医薬品を利用することは可能だったものの、実際にアクセスできた患者はほんのひと握りのみでした。

さらに、ギリシャ政府は2021年に医療用大麻の輸入を禁止。これにより、大麻治療を求める国内の患者は違法市場に頼らざるを得なくなりました。

このような中、ギリシャ政府は2022年、薬局で医療用大麻の販売を可能にする計画を発表。2023年1月にはTikun Olam Europe社により、国内初となる医療用大麻生産施設が稼働を開始しました。

施設の稼働からおよそ1年後、念願の医療用大麻製品がついに処方可能となり、薬局で販売が開始されることになりました。

医療用大麻の適応症は化学療法や放射線療法による悪心・嘔吐、神経障害性疼痛を中心とした慢性疼痛、多発性硬化症や脊髄損傷に伴う痙縮、緩和ケアにおける食欲低下で、従来の治療で効果がない場合に処方が考慮されます。

医療用大麻の処方が可能なのは、麻酔科医、神経科医、がんや感染症の病理医、リウマチ専門医のみ。再処方はその他の医師でも可能ですが、半年ごとに専門医の再評価を受ける必要があります。

現時点で利用可能な医療用大麻製品は、CBD13%・THC9%を含有するドライフラワー製品のみですが、数カ月後にはTHC濃度の高い製品も販売される予定となっています。

これらの医療用大麻製品は保険適用外であり、患者は全額自己負担しなければなりません。現時点でその費用は5g入りで82.96ユーロ（約1万3,500円）、10g入りで165.91ユーロ（約2万7,000円）。ただし、これらの費用は今後より多くの大麻製品が市場に出回ることで引き下げられる見込みです。

2月15日、3児の母であり、乾癬性関節炎による慢性的な痛みに苦しんでいた60歳のアンナ・パガ（Anna Paga）氏は、電子処方システムからおそらく国内初であろう医療用大麻の処方箋を受け取りました。

「この日について何と言えばいいのだろう。とても大きな感謝、安心、正しさ、生きる自由。私は電子処方システムを通じて処方箋を受け取った最初の一人です。予想もしていなかったし、信じられなかった。涙がこぼれました・・（違法な大麻の入手による）リスクと恐怖に終止符が打たれたのです」

パガ氏は乾癬性関節炎と診断された当時、眠れないほどの痛みを抱えていました。彼女は生物学的製剤による標準治療を受けましたが、副作用に悩まされたため治療を中止。その後も別の生物学的製剤の利用が検討されましたが、深刻な副作用が懸念されたため断念し、別の治療法を探し求めました。

その後、パカ氏はギリシャの医療用大麻患者支援団体「MAMAKA」の設立者であり、自閉症スペクトラム症、脳性麻痺、痙縮、てんかんの子供を持つ母親であるジャックリーン・ポイトラス（Jacqueline Poitras）氏と出会いました。

パカ氏はポイトラス氏を信じて医療用大麻を使用したところ、すぐに痛みの大幅な改善を実感したと語っています。