これまでの研究により、大麻に含まれるカンナビノイドには抗がん作用があることが明らかとなってきており、当メディアでも肺がん、大腸がん、皮膚がん、胆管がん、悪性中皮腫について記事を掲載してきました。
今回は口腔がんにおける報告です。
10月8日、口腔がん細胞に対しカンナビノイド混合物が抗がん作用を示したことがカナダとサウジアラビアの研究チームにより報告されました。
口腔がんとは文字通り、口の中にできる悪性腫瘍のことを指します。舌がん、歯肉がん、口腔底がん、硬口蓋がん、頬粘膜がんなどが該当し、罹患率は舌がんが6割で最も多くなっています。発症の危険因子には喫煙、飲酒、虫歯、入れ歯などが挙げられています。
今回この報告をした研究チームは、Δ9THC(デルタ9テトラヒドロカンナビノール)とΔ8THCが歯肉がん由来細胞株Ca9-22に対し、それぞれ抗がん作用を示したことを以前に報告しています。
今回の研究では、同様の細胞株(以下、口腔がん細胞と記載)に対する抗がん作用を、8種類のカンナビノイドによる混合物を用いて検証。
混合物に含まれていたカンナビノイドは、以下の通りです。
CBD(カンナビジオール)
CBG(カンナビゲロール)
CBN(カンナビノール)
CBC(カンナビクロメン)
CBDV(カンナビジバリン)
THCV(テトラヒドロカンナビバリン)
Δ8THC
Δ9THC
※それぞれ500μg/mlの量で均一。
カンナビノイド混合物は1μg/ml以上の用量で口腔がん細胞の増殖を約50%抑制。一方、カンナビノイド混合物は正常な細胞株である口腔上皮細胞(GMSM-K)に対しては毒性を示さず、口腔がんに選択的に作用することが示されました。
口腔がん細胞に対しカンナビノイド混合物がどのように作用するのかを調べた結果、酸化ストレスの誘導とそれに伴うミトコンドリア機能の阻害、オートファジーの促進、カスパーゼの活性化によるアポトーシス(細胞死)の誘導、DNAの損傷といった、様々なメカニズムにより抗がん作用をもたらしていたことが明らかとなりました。
※ミトコンドリアとは?
酸素を利用してエネルギー(ATP)を生み出す細胞小器官。がん細胞のミトコンドリア機能の阻害は抗がん作用に寄与するとされる。
※オートファジーとは?
細胞が自身のタンパク質を分解し、新陳代謝などを行うリサイクルシステム。
オートファジーの活性化はがん細胞のアポトーシスにおいて相反する結果が報告されている。最近東京理科大学の研究チームは、オートファジーは進行期ではがんの増殖を促進するが、初期では進行を抑制したことを報告した。
※カスパーゼとは?
アポトーシスを誘導するタンパク分解酵素。
さらに検証の結果、カンナビノイド混合物(1μg/ml)は口腔がん細胞の遊走を抑制し、がんの増殖や進行に関与するシグナル伝達分子(NF-κB、STAT1、STAT3、STAT5、p38、ERK1/2)の発現も有意に低下させたことが報告されました。