大腸ポリープに対するカンナビノイドの有効性と相乗作用

大腸ポリープに対するカンナビノイドの有効性と相乗作用

- イスラエルの基礎研究

食生活の欧米化が進むと同時に、罹患者が増加している大腸がん。最近公開された厚生労働省のデータによれば、令和3年における大腸がんの死亡者数はがんの中で2番目に多く、男女別では男性で2番目、女性では最も多くなっていました(全体あるいは男性で最も多かったのは肺がん)。

大腸ポリープとは、大腸の表面(粘膜)が隆起した病変の総称で、大きく腫瘍性と非腫瘍性(過形成や炎症性腸疾患などによるもの)に分けられます。さらに腫瘍性ポリープは良性腫瘍(腺腫)と悪性腫瘍に分類されますが、良性のものでも後にがん化することがあります。

大麻に含まれるカンナビノイドは、これまでの研究において様々ながんに対し有効性を示しており、大腸がんにおいても報告がなされています。ですが、大腸ポリープではまだ報告が少ない状況となっています。

そんな中で9月26日、大腸ポリープに対するカンナビノイドの有効性を検証した結果がイスラエルの研究者らにより報告されました。

この研究で用いられたのは、患者20名の体内に実在していた大腸ポリープです。つまり、手術にて切除されたポリープが使用されたことになりますが、正常な細胞に対する影響も検証するため、同時にポリープ周囲の大腸組織も一緒に採取されていました。

先に結論を述べたいところですが、結果が複雑であるため、順番にご紹介していきます。

大腸ポリープに対するカンナビノイドの有効性

6つの大腸ポリープを使用し、個々のカンナビノイドが大腸ポリープの生存率に及ぼす影響(毒性)を検証。

用いられたカンナビノイドはΔ9THC(デルタ9テトラヒドロカンナビノール)、Δ8THCCBD(カンナビジオール)、CBC(カンナビクロメン)、CBG(カンナビゲロール)、CBN(カンナビノール)、THCV(テトラヒドロカンナビバリン)CBDV(カンナビジバリン)、CBL(カンナビシクロール)と、脱炭酸する前のカンナビノイド(酸性カンナビノイド)であるTHCACBDA、CBCA、CBGA、CBNA、CBDVA。

大腸ポリープに対し最も毒性を示したのはΔ8THCで、6つの大腸ポリープの平均生存率は15%という結果に。次いでΔ9THC(平均生存率21%)、CBC(25%)、CBN(26%)、CBDV(39%)、CBD(40%)となりました。これらに比べ、酸性カンナビノイドは大腸ポリープの生存率にあまり影響を与えませんでした(THCA:66%、CBDA:67%、CBCA:83%、CBGA:89%)。

上記に記したのは大腸ポリープの平均生存率ですが、1つのカンナビノイドでもポリープによって生存率に差が認められました。例えばΔ9THCは、あるポリープでは生存率8%であったのに対し、別のポリープでは47%となっていました。

つまり、もしこの結果を臨床に応用するならば、個々のポリープに応じて有効性の高いカンナビノイドをそれぞれ選択して用いる必要があるということを意味しています。

正常な大腸組織も含めたカンナビノイドの有効性

続いて、正常な大腸組織に対するカンナビノイドの毒性を検証。ほとんどのカンナビノイドが大腸ポリープに対する毒性と同程度の毒性を示しました。

ですが、CBD及びCBDを主成分とした大麻抽出物は、大腸ポリープに対し毒性を示す一方、正常な大腸組織に対する毒性はそれよりも少ないことが明らかとなりました。

これらの結果は、CBDが腫瘍性ポリープのがん化防止や大腸ポリープに対する抗がん剤として用いられるだけでなく、ポリープ切除後に直接大腸粘膜に使用することによりポリープの再発を予防できる可能性を示していると、研究者らは述べています。

なお、CBDを主成分とした大麻抽出物に含まれていたカンナビノイドは以下の通り。

CBD76%、Δ9THC2.9%、CBC5.6%、CBG1.6%、CBDV0.3%、THCV3.1%、CBN0.1%、CBDA0.1%、CBCA5.9%、CBGA0.1%

大腸ポリープに対するカンナビノイドの相乗作用

最後に、カンナビノイドの組み合わせが大腸ポリープの生存率に与える影響を評価。

前述したように、CBCAとCBGAは大腸ポリープに対しあまり毒性を示していませんでしたが、この2つの酸性カンナビノイドはCBDV、またはTHCVと組み合わせることにより、著しく毒性が高まることが示されました。

大腸ポリープに対するカンナビノイドの相乗作用

他にも、カンナビノイドの組み合わせにより作用が異なることが明らかに。例えばTHCVはCBGAとの組み合わせで相乗作用、CBDVAとの組み合わせで相加作用、CBDVとの組み合わせで拮抗作用を示しました。

まとめ

以上の結果をまとめると

・大腸ポリープに対しTHCは高い毒性を示すも、正常な大腸組織にも影響を及ぼした。

・カンナビノイドの有効性は大腸ポリープの種類によって異なった。

・THCほどではないがCBDも大腸ポリープに毒性を示し、なおかつ正常な大腸組織にあまり影響を及ぼさなかった。

・酸性カンナビノイド(CBDA、CBGA)は単独では有効性が低かったが、他のカンナビノイド(特にCBDV、THCV)と組み合わせることで作用が著しく増強した。

これらの研究結果はカンナビノイドの複雑さを物語っており、今後もより多くの研究が必要であることを示していると言えそうです。

今回の研究ではカンナビノイド間での相互作用が報告されましたが、今年3月には大麻ときのこの成分が相乗作用することにより、大腸がん細胞を90%以上死滅させたことが報告されています。

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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