メリーランド州知事、大麻関連犯罪17万5,000件を恩赦

現地時間6月17日、米国メリーランド州のウェス・ムーア（Wes Moore）知事は、大麻関連犯罪で有罪判決を受けた約17万5,000名の人々に恩赦を与えたことを発表しました。

17万5,000件の犯罪記録には、大麻の単純所持による軽犯罪15万件以上と、麻薬道具の使用・所持による軽犯罪1万8,000件以上が含まれています。大麻関連犯罪に対するこの規模の恩赦は全米で最大級となります。

この歴史的な恩赦にあたり、ムーア知事は「メリーランド州は住民投票によって大麻を合法化し、歴史に名を刻んだ。しかし、合法化の恩恵を祝う一方で、犯罪化が招いた結果を忘れてはならない。メリーランド州民が違法でなくなった行為の前科によって、住居、雇用、教育において障害に直面することがあってはならない」

「今日、我々は全ての人に平等な正義を保障するために大きな一歩を踏み出した。しかし、これが最後の取り組みになることはないだろう。我々はより公平で、より公正で、誰一人取り残すことのない州や社会を築くために、協力し合って前進し続けなければならない」と述べました。

知事の恩赦に対し、同州の司法長官であるアンソニー・G・ブラウン（Anthony G. Brown）氏は「大麻法の施行は、有色人種のコミュニティに不釣り合いかつ多大な負担を強いてきた。有罪判決を受けた人々は雇用、教育、住宅において険しい障害に直面し、機会を否定されてきた」

「ムーア知事の恩赦によりこれらの障壁が取り除かれ、何千人ものメリーランド州民が前科による障害なしに生産的な生活を送ることができるようになる。公平性と平等性の名の下に、大胆かつ断固とした行動をとったムーア知事に感謝する」とコメント。

また、薬物政策と刑事司法制度の改革を目指す非営利団体であるThe Last Prisoner Projectは「今日の歴史的な恩赦はどの知事よりも大胆な措置であり、過去の烙印だけで住居、雇用、教育、さらには保険や金融商品を見つけることができないという前科の付随的な結果に直面している人々に、ようやくトンネルの先の光を提供することになる」と述べました。

アメリカ自由人権協会（ACLU）によれば、大麻の使用率が同程度であるにも関わらず、黒人は白人よりも大麻所持で逮捕される確率が3.6倍高いと報告されています。

なお、恩赦は法的に赦しを与えるものであり、犯罪記録を抹消するものではありません。しかし、恩赦はムーア知事らが述べているような障壁を取り除くことに加え、陪審員を務める権利、公職に就く権利、特定の職業免許を保持する権利など、失われた権利を回復させることができます。

メリーランド州は2023年7月より嗜好用大麻を合法化。この大麻法は、2024年7月1日までに大麻の単純所持による前科を自動的に抹消することも規定しています。しかし、大麻改革の擁護団体であるMarijuana Policy Project（MPP） によれば、同州がこの期限を守れるかどうかは不明であるとされています。

今回のムーア知事の大麻関連犯罪への恩赦は、マサチューセッツ州のマウラ・ヒーリー（Maura Healey）知事による大規模な恩赦に続くものとなりました。

大麻改革の擁護団体であるNORMLによれば、米国の州裁判所は2018年から2023年末にかけて、推定230万件の大麻関連の犯罪記録を抹消・封印しています。

4月に行われたYouGovの世論調査では、米国成人の58%が非暴力的な大麻関連の前科抹消を支持しています。