メリーランド州知事、保護者の大麻使用を育児放棄としない法案に署名

メリーランド州知事、保護者の大麻使用を育児放棄としない法案に署名

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5月16日、米国メリーランド州知事は、保護者が合法的に大麻を使用することを子供へのネグレクト(育児放棄)と解釈されないようにする法案「HB232」に署名しました。同法案は、州内で嗜好用大麻が合法化される2023年7月1日から発効されます。

この法案は既存の法におけるネグレクトの定義に修正を加えるものです。具体的には、ネグレクトには「子どもの永久的または一時的な世話または親権、監督に責任を持つ親または個人による大麻の使用は含まない」という文言が追加されます。

ただし、大麻の使用により「子どもの健康や福祉が害される、あるいは害される実質的な危険にさらされている場合、または子どもが精神的な傷害を負う、あるいは精神的な傷害を負う実質的な危険にさらされている場合」は例外となり、ネグレクトとして判断され罰則を受けることになります。

メリーランド州では2023年7月1日から、21歳以上の成人による1.5オンス(約42g)までの乾燥大麻、12gまでの濃縮大麻、THC750mg未満までの大麻製品(所持製品全ての総量)の個人所持・使用が可能となります。また、既存の医療用大麻販売店は手数料を支払うことで、嗜好用大麻の販売が許可されます。これに合わせ、今回承認された法案「HB232」も発効されることになります。

アメリカでは州レベルで大麻の合法化が進んでいますが、依然として連邦法では禁止されていることもあり、大麻にはまだ「スティグマ(偏見)」が存在しています。例えば、子育て中の親が大麻を使用していると聞いて、「あの人は親としてちゃんと役割を果たしていない」とみなす人も存在します。

そのため、アメリカではこのような状況を打破するために活動する「大麻ママ」たちが存在します。彼女たちは、「大麻を吸うママは、アルコールと同様に普通であるべき」と主張しています。

なお、ミシシッピ大学の研究者らは昨年4月、嗜好用大麻の合法化により里親制度の利用率が少なくとも10%減少していたことを報告しています。特にこれは、親の薬物やアルコール乱用、身体的虐待、ネグレクト、親の投獄を理由とする利用において減少の効果が大きいと推定されています。この結果について研究者らは、アルコールなど他の物質の代替として、大麻が重要な役割を果たしている可能性があるとしています。

Marijuana Moment「Maryland Governor Signs Bill Protecting Parents Who Lawfully Use Marijuana From Child ‘Neglect’ Penalties」https://www.marijuanamoment.net/maryland-governor-signs-bill-protecting-parents-who-lawfully-use-marijuana-from-child-neglect-penalties/

NORML「Maryland: Governor Signs Law Providing Legal Protections for Parents Who Consume Cannabis」https://norml.org/news/2023/05/18/maryland-governor-signs-law-providing-legal-protections-for-parents-who-consume-cannabis/

Marijuana Moment「Marijuana Legalization Tied To Significant Decrease In Foster Care Placements, New Study Finds」https://www.marijuanamoment.net/marijuana-legalization-tied-to-significant-decrease-in-foster-care-placements-new-study-finds/

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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