メリーランド州、嗜好用大麻を2023年7月1日から販売開始へ
メリーランド州アナポリスにある州会議事堂

メリーランド州、嗜好用大麻を2023年7月1日から販売開始へ

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5月3日、米国メリーランド州知事は嗜好用大麻の販売を規制する法案に署名。計画通り2023年7月1日から、州内で嗜好用大麻の販売が開始されることになりました。

メリーランド州は2022年11月8日の住民投票により嗜好用大麻の合法化法案が可決。2023年7月1日から、21歳以上の成人は1.5オンス(約42g)までの乾燥大麻、12gまでの濃縮大麻、THC750mg未満までの大麻製品(所持製品全ての総量)の個人所持・使用が可能となります。また、個人及び1世帯で最大2株までの大麻の栽培も認められます。大麻の使用は個人宅でのみ認められ、公共の場での使用は禁止となります。

また、合法化された内容に関する過去の大麻関連の前科は自動的に抹消され、その内容が原因で服役中の人々も再判決を受けることができます。配布目的の所持で有罪判決を受けた人は、刑期を終えてから3年後に、裁判所に対し前科の抹消を申請することが可能です。

ただし、住民投票で可決となったこの法案には嗜好用大麻の販売規制に関する内容は含まれていませんでした。

そのため、今年に入り、メリーランド州議員らは7月1日から嗜好用大麻市場を確立させるため、規制法案の成立に向けて取り組んでいました。法案は上院(SB516)と下院(HB556)でそろぞれ提出され、両法案とも3月末に可決。その後、両法案の相違点が調整され、4月半ばに再度両院で可決され、州知事に送付されました。

ウェス・ムーア(Wes Moore)州知事は州都アナポリスにて開かれた署名式にて、ジェンダーや人工妊娠中絶を保護する法案などとともに、SB516とHB556に署名しました。

州知事は署名式で、この法律により 「私たちの州における娯楽用大麻市場の運用が、公平な方法で機会を促進することを保証します」と発言。加えて、「大麻の犯罪化は、低所得者や有色人種のコミュニティに深刻な害を与えました」「大麻の合法化により、これらのコミュニティが今や、大いに持ち上げられることを確かめていきたいです」と述べました。

SB516とHB556の主な内容は以下の通り。

  • 既存の医療用大麻販売店は手数料を支払えば、7月1日より嗜好用大麻の販売も可能となるデュアルライセンスに変更できる(現在、州内には102ヶ所の医療用大麻販売店がある)。

  • 嗜好用大麻の販売には9%課税される。医療用大麻は非課税となる。

  • 大麻の税収の35%は地域再投資基金に充てられ、さらに郡、大麻公衆衛生基金、大麻ビジネス支援基金にそれぞれ5%ずつ配分される。郡の税収はさらに分割され、そのうち50%は管轄内の大麻の売上に応じて、地方自治体に分配される。

  • 嗜好用大麻販売プログラムの管理は、独立した新機関「メリーランド州大麻管理局(Maryland Cannabis Administration)」が担当する。これに伴い、メリーランド州医療用大麻委員会は解散となる。

  • 規制当局は2024年7月1日までに、追加で大麻ビジネスライセンスの承認を開始する必要がある。

  • 最終的なライセンスの上限は、小売業者300件、加工業者100件、栽培業者75件となる予定。より小規模なマイクロビジネスについては、小売業者10件、加工業者100件、栽培業者100件が上限となる。

  • 社会的公平性の枠でライセンスを申請するには、過去10年間以内に少なくとも5年間不釣り合いな影響を受けた地域に住んでいる人、その地域の公立学校に最低5年間通った人、または格差調査に基づくその他の基準を満たす人が事業の65%を所有している必要がある。

  • 州内の商務省の下に、社会的公平性を求める申請者の産業機会を促進し、低金利融資を行うための資本アクセスプログラムを創設する。

  • 2025年以降、社会的公平性を求める申請者と有意義なパートナーシップを結ぶ既存の医療用大麻販売店に対し、指導、トレーニング、共有ビジネススペースなどのための助成金として、毎年500万ドル(約6億7,100万円)が充当される。

  • 一般市場において、デルタ8THCやデルタ10THCの販売を終了とする。陶酔作用のあるカンナビノイド製品を販売できるのは、認可された事業者のみとなる。

  • 医療用大麻患者は4株までの大麻の栽培が可能となる(現行法では2株まで)。

  • 学校、保育施設、遊び場、レクリエーションセンター、図書館、公共の公園から500フィート(約152m)以内において、新たなディスペンサリーの設置は不可。ディスペンサリー間は、少なくとも1,000フィート(約305m)離れていなければならない。

  • 単一の事業体は、5つ以上のディスペンサリーを所有できない。

  • ディスペンサリーの棚面積の少なくとも25%は、社会的公平性を有するライセンシーによる大麻製品のために確保する必要がある。

  • 規制当局は2025年7月までに、大麻のオンライン販売に関する規則を作成しなければならない。

この法案に加え、メリーランド州議会は4月上旬、大麻の匂いや少量の大麻所持、大麻の近くに金銭があることだけを理由として、法執行機関が人、自動車、船舶を停止・捜索することを禁止する法案を可決。この法案では、公共の場における大麻の使用に対する罰金を250ドル(約33,550円)から50ドル(約6,710円)に引き下げることも規定されています。この法案も州知事の元に送付されていますが、現時点でまだ署名には至っていません。

Marijuana Moment「Maryland Governor Signs Marijuana Regulation Bill Into Law, With Sales Set To Begin July 1」https://www.marijuanamoment.net/maryland-governor-signs-marijuana-regulation-bill-into-law-with-sales-set-to-begin-july-1/

MJBizDaily「Maryland adult-use marijuana sales to begin July 1 after gov signs rules into law」https://mjbizdaily.com/maryland-governor-signs-adult-use-marijuana-rules-into-law/

CBS Baltimore「Governor signs Maryland bills on abortion protection, cannabis reform, gender-affirming treatment into law」https://www.cbsnews.com/baltimore/news/governor-signs-maryland-bills-on-abortion-protection-cannabis-reform-gender-affirming-treatment-into-law/

Maryland Cannabis Administration「Adult-Use Cannabis Legalizaton」https://mmcc.maryland.gov/Pages/Legalization-of-Non-Medical-Cannabis.aspx

Marijuana Moment「Maryland Lawmakers Pass Bill Blocking Police Searches Based On Marijuana Odor, Sending It To Governor」https://www.marijuanamoment.net/maryland-lawmakers-pass-bill-blocking-police-searches-based-on-marijuana-odor-sending-it-to-governor/

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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