タイ、観光客向けに大麻ガイドを発行

タイ、観光客向けに大麻ガイドを発行

/

2022年6月、タイは規制麻薬リストから大麻を除外し、アジアで初めて大麻を非犯罪化した国となりました。

ただし、公共の場における嗜好目的での大麻の喫煙が違法であるように、これは「嗜好用大麻の合法化」を意味しているわけではありません。

現在、タイ政府は大麻の使用と販売を規制する法案の審議を行っている最中。つまり、まだ法整備は未完成な状態となっています。

それにも関わらず、タイの街では嗜好目的の製品を含む大麻の販売店が急増。これに伴い、日本人も含め海外から大勢の観光客が集まるようになりました。

このような状況に対し、タイ保健省は昨年12月23日、タイの法律ではどのようなことが認められているのかを明確に伝えるため、観光客向けにガイドを発行しました。

このガイドでは、タイにおける大麻の規制状況などに加え、「タイで観光客が大麻について知って欲しい10のこと」が記載されています。

ガイドは現在英語のみとなっていますが、今後日本語、中国語、韓国語、ロシア語など様々な言語でも発行される予定です。

以下、具体的内容を抜粋してご紹介。

大麻について

大麻を含むタイの伝統医療は、痛み、睡眠障害、食欲不振を和らげるために用いられてきた。料理においても、食欲増進や血行促進のため、他の香辛料とともに大麻の葉を使用。麻薬に指定されるまでの約60年間、大麻の葉、根、茎、種子、花などあらゆる部位が、様々な病気のために活用されてきた。

タイ政府が2019年に医療用大麻を合法化したことには、このような歴史的に重要な背景がある。

大麻の規制状況

・大麻草は規制麻薬リストから除外されているが、大麻の花については規制対象となり、20歳未満の未成年や妊娠及び授乳中の女性への販売、自動販売機やオンラインでの販売は禁止。

THC0.2%以上を含む大麻抽出物(第5類)、合成THC(第1類)は現在も規制麻薬リストに分類されている。

・大麻健康製品はタイの食品医薬品局(FDA)によって認可されたもののみ、合法的に販売が可能。

観光客に知って欲しい10のこと

①個人使用目的でタイ国内外に大麻の種子やそれ以外の部分を持ち運ぶことは禁止

規制麻薬リストから除外されているのは、タイ国内で栽培された大麻のみ。輸入した大麻に関しては、現在審議が行われている最中。

大麻の種子の輸入には、農業協同組合省の許可が必要。

②大麻の栽培は合法だが、FDAアプリ「Plook Ganja」や政府ウェブサイトにおいて登録が必要
③研究、輸出、販売、製造目的で大麻の花を使用するには、正式なライセンスが必要

大麻の花は規制ハーブとして扱われているため、無料配布を含むビジネス目的での使用または研究での使用には、タイ伝統・代替医療局の認可が必要。

④20歳未満、妊娠および授乳中の女性が大麻を使用することは、医療従事者の監督がある場合を除いて、認められない
THC0.2%以上を含む大麻抽出物や合成THCの所持には許可が必要
⑥大麻料理を食べることができるのは、認可されたレストランのみ

タイの食品法では、大麻の花を料理や食品に使用することは禁止されているが、他の部位に関しては認められている。

飲食店は大麻料理について、未成年や妊娠・授乳中の女性には提供できないなど、消費者に対し警告を行う必要がある。

⑦認可された大麻健康製品は、決められた手段でのみ入手可能

洗い流すタイプの化粧品、食品(乳幼児を除く)、ハーブ製品は、大麻の花を除く部位、CBD、ヘンプシードオイルや抽出物を使用したもののみ許可される。

医療用の大麻抽出物を購入するには、医師の処方箋が必要。処方箋があれば、政府系の病院、民間クリニック、薬局で購入できる。

※大麻抽出物の適応

THCCBD=2.7%:2.5%の大麻抽出物、THC主体の大麻抽出物

多発性硬化症の痙縮、難治性の神経障害性疼痛、アルツハイマー型認知症、標準治療でコントロールできない末期がんの痛み・食欲低下・睡眠障害など

CBD主体の大麻抽出物

難治性てんかんパーキンソン病など

⑧公共の場(学校やショッピングモールなど)で大麻を喫煙することは違法

公共の場において嗜好目的で大麻を喫煙すると、3ヶ月以下の懲役または25,000バーツ以下の罰金、あるいは両方の刑が科せられる。

⑨大麻製品・食品を消費した後の車の運転は避ける

大麻製品・食品の消費後は判断能力、運動能力、反応時間に影響を及ぼすことがあるため、交通事故を起こすリスクが高くなる。

⑩大麻製品・食品の消費により深刻な健康問題が生じた場合は、速やかに医療機関を受診する

一般的な副作用(口渇、めまい、血圧の変化など)であれば、水分を多めにとったり休憩することで、症状は落ち着いていく。

ただし、胸痛発作、不整脈、胸部不快感、失神、重度な嘔吐など重篤な副作用が生じた場合は、医師による緊急治療が必要となる場合がある。

Bankok Post「Cannabis guide for tourists issued 」https://www.bangkokpost.com/thailand/general/2476014/cannabis-guide-for-tourists-issued

Newsweed「La Thaïlande publie un guide du cannabis pour les touristes」https://www.newsweed.fr/thailande-publie-guide-cannabis-touristes/

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

Recent Articles

モロッコ、合法大麻製品の公式ロゴを発表

モロッコ政府は4月発行の官報において、合法大麻製品の公式ロゴを発表しました。 大麻のシンボルをモロッコ国旗と同様の赤色で縁取り、その下に「CANNABIS」と表記したこのロゴは、国外に輸出...

イギリス、ヘンプの栽培規制を緩和

4月9日、イギリス政府は経済的・環境的可能性を最大限に引き出すため、ヘンプの栽培規制を緩和することを発表。この新たな規制は2025年の栽培シーズンより施行されます。 イギリスにおいてヘン...

マラウイが高THC大麻の栽培を承認

マラウイ共和国の議会は、認可された栽培業者が輸出を目的とし、THC濃度の高い国産大麻を栽培することを承認しました。 アフリカの南東部に位置するマラウイはタバコの主要な生産国であり、国...