パーキンソン病のイラスト

パーキンソン病

パーキンソン病とCBD・医療用大麻

老後の人生について考えたことあるでしょうか?

盆栽やゲートボールなど趣味を楽しむ、孫の面倒をみる、田舎でのんびり暮らすなど、それぞれ思い描いている生活があると思います。

そんな老後の楽しみを奪い去る可能性がある病気・・それが、パーキンソン病です。

パーキンソン病は徐々にからだを動かすのが難しくなり、最終的には寝たきりになる指定難病の1つです。発病する人のほとんどが高齢者です。難病というだけに、現時点で治療は対症療法しかなく、根治治療はありません。

治療薬の進歩により、寝たきりになるまでの期間は延長し、寿命にも影響しなくなってきています。ですが当然生活のしずらさはあるため、本来思い描いていた老後の生活を送るのが難しくなり、QOL(生活の質)は大いに低下すると考えられます。

そんなパーキンソン病に対し、海外ではCBD(カンナビジオール) や医療用大麻が有効であると言われてきています。

この記事ではパーキンソン病について、そしてパーキンソン病に対するCBDと医療用大麻の治療効果についてお話していきます。

 

目次

パーキンソン病とは

パーキンソン病の患者数は神経変性疾患の中で最も多く、人口10万人あたり100〜150人とされています。好発年齢は50〜70代で、60歳以上では100人に1人が発症しています。

パーキンソン病の原因

原因は明らかになっていません。

基本的に遺伝性ではありませんが、一部の人では原因遺伝子(Parkin、PINK1、DJ-1、LRRK2、GBA、ATP13A2などのさまざまな遺伝子の変異)による発症を認めています(遺伝性パーキンソン病)。

パーキンソン病のメカニズム

パーキンソン病は中脳の黒質(緻密部ちみつぶ)のドーパミン細胞が変性・脱落することにより、ドーパミンが欠乏していく病気です。 中脳の黒質はドーパミンを放出することで、大脳基底核と連携し、からだの動きを調節します。

※大脳基底核とは

大脳の深い部分にある神経細胞の集合体。主に運動調節機能を持つ。
淡蒼球たんそうきゅうと線条体(尾状核びじょうかく・被殻ひかく)から構成される。
運動を調節する際、中脳の黒質と間脳の視床下核も密接に連携することから、これらを含めて大脳基底核と呼ぶこともある。

私たちは大脳皮質からの命令によりからだを動かしていますが、実はそれだけだと安定したなめらかな動きはできません。

大脳皮質の働きに加え、大脳基底核と小脳による調節を受けることで、スムーズな動きを可能にします。

大脳基底核による運動調節はブレーキとして働き、運動の開始と停止、姿勢の保持に関わっています。

このブレーキは、黒質から放出されたドーパミンが線条体のドーパミン受容体(D1、D2)と結合することから始まり、2つの経路に分かれることにより調節されています。

1つ目はD1受容体を介して ”ブレーキを適度にゆるめよう” とする直接路。

もう1つはD2受容体を介して”ブレーキをかけよう” とする間接路です。

この2つの経路は大脳基底核の淡蒼球内節という場所で合流します。
それぞれの経路の情報をもとに適度なブレーキの度合いを決定し、淡蒼球内節から適量のGABA(γアミノ酪酸)が放出されることで、スムーズな運動が実現されます。

名前の通り、黒質は通常メラニン色素により黒くみえるのですが、パーキンソン病ではメラニンを含有したドーパミン細胞が脱落することで、色が薄くなっていきます。

この黒質の変性・脱落は、レビー小体という異常なタンパク質の出現を伴っていることが分かっています。

黒質からのドーパミン放出が減少すると、線条体から始まるブレーキ調節が行われず、淡蒼球内節が暴走し、強烈な運動抑制を引き起こします。

これにより、パーキンソン病の症状が出現するようになります。

また、大脳基底核における運動の調節にはドーパミンだけでなく、アセチルコリンもかかわっています。

アセチルコリンは積極的にブレーキをかけるように働きますが、前述したようにドーパミンはブレーキを適度に調節するように働きます。健康な人ではこの2つの神経伝達物質がバランスを保つことにより、スムーズにからだを動かすことができています。

パーキンソン病によりドーパミンの量が減少すると、アセチルコリンが優位に働いてしまうため、ブレーキが強くかかった状態となり、様々な運動障害を引き起こします。

大脳基底核による運動調節とパーキンソン病のメカニズム

パーキンソン病の症状

パーキンソン病の4大症状は安静時振戦、無動、筋強剛、姿勢保持異常です。運動障害としては歩行障害もみられます。

安静時振戦

じっとしている時だけ手足がふるえ、動く時にはふるえが止まる症状で、パーキンソン病の初期症状と言われています。

ふるえは左右非対称で起こり、指先で丸い薬を丸めるような動きや、かかとで床をタッピングするような動きがみられることもあります。

無動

無動(寡動かどう)とは、からだを思い通りに動かせない、あるいは動作が遅くなる状態のことをいいます 動きが遅くなるだけではなく、一点を見つめるようにして無表情だったり、声が小さかったりもします。

筋強剛

筋肉の緊張が亢進した状態です。

通常筋肉はゆるめたり収縮したりしますが、パーキンソン病では筋肉をうまくゆるめることができず、こわばってしまいます。

外部から手足を動かそうとすると、強い抵抗がみられます。

姿勢保持異常

バランスを崩した時に、体勢を立て直すことができない症状です。

他者により後方に押されたり引かれたりすると、通常は姿勢を立て直すことが可能ですが、パーキンソン病ではそのまま後ろに倒れるか、後ろに小刻みで歩いていってしまいます。

首が前に突き出て、膝が軽く曲がった前傾姿勢が特徴的です。

歩行障害

歩行にも以下のような障害が出現します。

・すくみ足

歩きだそうとしてもすくんでしまい、すぐに足を前に出せなくなります。

・すり足歩行・小刻み歩行

前かがみになりながら、床をするように小刻みで歩きます。

・突進歩行

歩きだすと前のめりになり、そのまま突進するように歩行が加速し、止まれなくなってしまいます。

これらの歩行障害は、聴覚や視覚を活用すると改善することがあります。

例えば、横断歩道のような目印や、メトロノームのようなリズミカルな音があると、すくみ足がでることなく、歩行に集中することができたりします。

パーキンソン病では姿勢保持異常と歩行障害により、転倒リスクが高くなります。特に高齢者は転倒により骨折しやすいため、そのまま寝たきりになってしまう危険性があります。

非運動性の症状

パーキンソン病では運動症状だけでなく、以下のようなさまざまな症状がみられます。

自律神経症状

自律神経が乱れることにより、便秘、切迫性尿失禁(尿を我慢できず漏らしてしまう)、起立性低血圧(立ちくらみ)などがみられやすいです。

また顔が油っぽくなったり、目やにが出やすくなったりします。

痛み

パーキンソン病においては様々な痛みが出現します。

過度な筋緊張により筋肉や関節が痛くなることもあれば、姿勢保持異常により神経が圧迫され、神経障害性疼痛がみられることもあります。

精神症状

抑うつ気分、不安が出現し、夜もあまり眠れず睡眠障害がみられることがあります。

認知症

パーキンソン病患者の約40%で認知症の合併が認められています。

パーキンソン病の重症度分類

パーキンソン病は不可逆性・進行性の病気であり、運動障害の悪化に伴い徐々に生活が困難になっていきます。

症状と生活レベルの程度に応じて、Hoehn & Yahr(ホーンヤール)の重症度分類が用いられます。

ステージⅠ

症状は片側のみで、日常生活にほとんど影響はみられない。

ステージⅡ

症状が両側にあり、日常生活はやや不便ではあるが、問題ない。

ステージⅢ

姿勢保持障害がみられ、活動が制限され始める。日常生活はなんとか自力で可能なレベル。

ステージⅣ

障害はあるものの、歩行はどうにか可能。日常生活を送る上で一部介助を必要とする。

ステージⅤ

立つことができなくなり、車椅子や寝たきりの生活となる。

ステージⅢ以降で指定難病として認定されます。

パーキンソン病の治療

現時点でパーキンソン病に根治治療はありません。そのため症状の進行を遅らせたり、コントロールするための薬物療法が中心となります。

あわせてリハビリテーションも行うことで、日常生活能力の低下を防ぎます。

薬物療法

最も効果が高いのは、レボドパ(ドーパミン前駆物質)によるドーパミンの補充です。また、ドーパミンのかわりに仕事をしてくれるドーパミン作動薬も効果が高いです。

レボドパ(ドーパミン前駆物質)

パーキンソン病による症状は、中脳の黒質が変性することにより、ドーパミンの放出が減ってしまうことにより起きています。

ドーパミンは水溶性であり、血液脳関門という脳にあるバリアを通過できず、末梢から脳に到達することができませんが、脂溶性のレボドパは脳へ通過することができます。

レボドパは脳で代謝されてドーパミンとなり、活用されます。

レボドパを代謝する酵素は末梢の血液中にも存在します。すると末梢でドーパミンとなってしまうため、脳内に入ることができず、薬効が弱まってしまったり、消化管や心臓での副作用(吐き気、嘔吐、不整脈)が生じやすくなってしまいます。

そうならないように、レボドパは末梢でドーパミンへと代謝されるのを防ぐ薬(カルビドパなど)と併用されます(はじめからこの成分が配合されたレボドパ製剤が多いです)。

ドーパミン作動薬

ドーパミンのかわりに受容体と結合し、ドーパミンの生理作用をもたらしてくれる薬です。レボドパに次ぐ効力を持ちます。

ドーパミン作動薬には麦角系と非麦角系があり、それぞれ出現しやすい副作用が異なります。

麦角系には心臓弁膜症という重大な副作用がみられることがあるため、基本的には非麦角系が用いられます。

ただし、非麦角系は眠気が強くでやすいため、本人の状況に応じて麦角系を用いることもあります。

麦角系では悪心・嘔吐、食欲不振といった副作用がみられることもあります。

レボドパは副作用により長期服用が困難なため、症状を劇的に改善しなければならない特別な理由がない限りは、ドーパミン作動薬の使用が優先されます。

また神経変性が進行しドーパミンを保持する能力がなくなると、レボドパの効果が持続しなくなることから、病期後半ではドーパミン作動薬のほうが用いられます。

その他の薬

以下の薬は有効ではありますが、レボドパやドーパミン作動薬ほどの効果はみられず、補助的に用いられます。

COMT阻害薬

レボドパが末梢から脳に移行する前に、COMTによる代謝を阻害することで、ドーパミンの量を増やす薬です。

エンタカポンやオピカポンなどが該当します。

MAO-B阻害薬

神経細胞から放出されるドーパミンを分解するMAO-Bを阻害することで、脳内のドーパミン濃度を高める薬です。

セレギリンやラサギリンなどが該当します。

抗コリン薬

大脳基底核による運動調節はドーパミンとアセチルコリンのバランスによりコントロールされていますが、パーキンソン病ではドーパミンの不足によりアセチルコリンが優位となり、運動抑制が強くなっていると言われています。

抗コリン薬はアセチルコリンの働きを弱めることでドーパミンとのバランスを保ち、抗パーキンソン作用をもたらします。薬剤性によるパーキンソン症状(詳しくは後述)や、軽症のパーキンソン病で用いられ、特に手足の震えに有効とされています。

ですが抗コリン薬は高齢者にみられやすい前立腺肥大症や緑内障を増悪させる危険があるため、これらの疾患を持つ人では禁忌となります。また、パーキンソン病の人はもともと便秘になりやすいですが、抗コリン薬は便意を助長する危険があります。

トリヘキシフェニジルやビペリデンなどが該当します。

ドーパミン遊離促進薬

神経細胞からのドーパミンの放出を促進すると言われています。初期や軽症のパーキンソン病に用いられることが多いです。レボドパの副作用であるジスキネジア(詳しくは後述)にも有効とされています。

アマンタジンという薬が該当します。

レボドパ賦活薬

ドーパミンの合成を促進したり、MAO-Bを阻害する作用があると言われています。レボドパと併用され、振戦やレボドパの長期内服によるwearing off現象(詳しくは後述)にも有効とされています。

ゾニサミドというてんかんにも用いられる薬が該当します。

ノルアドレナリン前駆物質

パーキンソン病ではノルアドレナリンの減少も認められます。これにより起立性低血圧(立ちくらみ)やすくみ足がみられます。

ノルアドレナリン前駆物質は末梢および脳でノルアドレナリンへと変換され、これらの症状を緩和してくれます。

ドロキシドパという薬が該当します。

アデノシンA2A受容体拮抗薬

アデノシンA2A受容体はGABAニューロンにある受容体で、GABA(γアミノ酪酸)の放出を促進する働きがあります。

アデノシンA2A受容体拮抗薬はこの受容体の働きを抑えることで、ドーパミン不足により過剰となったGABAの放出を減らし、運動抑制を軽減します。

レボドパの長期服用によるwearing off現象やon-off現象(詳しくは後述)に有効と言われています。

イストラデフィリンという薬が該当します。

レボドパによる副作用

レボドパはドーパミン量を増やすことで劇的にパーキンソン症状を改善させますが、投与量が多いと副作用が生じます。

また、長期使用による弊害もみられます。

ジスキネジア

自分の意思とは関係なく体が動いてしまう症状です。レボドパの投与量が多かったり、あるいは長期使用によりみられることが多いです。

口をもぐもぐと動かしたり、舌を出したりひねらせたり、首や手足が勝手に動いたりします。

生活に支障がなければそのまま様子をみますが、対応が必要な場合にはレボドパの量を調節したり、少量ずつ内服するようにしたり、あるいはグラマリール(チアプリド)というドーパミン受容体を遮断する薬を少量で使用することもあります。

消化器症状

末梢でドーパミンへと代謝され、消化器でのドーパミン量が過剰になることで悪心、嘔吐、食欲不振といった症状が生じることがあります。

レボドパを食事の直前に内服したり、制吐剤を使用したり、末梢でドーパミンへと代謝する酵素を阻害する薬を使用したりすることで対応します。

心臓の症状

末梢でドーパミンへと代謝され、不必要に心臓のドーパミン受容体と結合することで、不整脈や動悸、起立性低血圧といった症状がみられることがあります。

末梢におけるレボドパの代謝を防ぐ薬を併用したり、血圧を上げる薬を使用することで対応します。

精神症状

線条体だけでなく、中脳辺縁系におけるドーパミンの量が過剰になることで、幻覚が出現することがあります。特に虫や小動物といった幻視がみられることが多いです。

基本はレボドパの減量で対応しますが、ドーパミンの働きを抑える薬を少量で使用することもあります。

wearing off(ウェアリングオフ)現象

レボドパの作用時間が1、2時間と短くなり、薬効がなくなった時にパーキンソン症状が出現・悪化する現象をいいます。

レボドパを長期に服用することで生じます。

通常ドーパミン神経細胞はシナプス小胞という場所にドーパミンを貯蔵します。ですがパーキンソン病では時間とともに黒質のドーパミン細胞の脱落・変性が進行します。

これによりレボドパを投与しても、神経細胞がドーパミンを貯蔵できず、一気に放出し使い果たしてしまいます。

そのためレボドパ内服1時間後では、逆にドーパミン量が過剰となりジスキネジアを出現させることもあります。

対応としては、レボドパを少量ずつ回数を増やして服用する、ドーパミン作動薬への変更、MAO-B阻害薬・COMT阻害薬・レボドパ賦活薬の併用などがあります。

On-off(オンオフ)現象

レボドパの服用時間に関係なく、パーキンソン症状が急によくなったり、悪くなったりする現象です。生じるのはまれとなっています。

レボドパを少量ずつ回数を増やして服用する、MAO-B阻害薬やCOMT阻害薬の併用などで対応します。

悪性症候群

レボドパの服用を突然中断することによって生じる、重篤な副作用です。

高熱、筋肉の硬直、意識障害などの症状がみられ、重症化すると死に至ることがあるため、早期に対処する必要があります。

点滴管理をしながらレボドパの投与を再開し、治療薬であるダントロレンナトリウムを服用します。

悪性症候群は統合失調症の治療薬(ドーパミンを作用させなくする薬)でもみられる副作用です。

手術

脳深部刺激療法(DBS)という脳のペースメーカーのようなものを植え込む手術が代表的です。

脳内に電極を入れ、電気刺激を送ることで症状の改善を図ります。

パーキンソン症候群

パーキンソン病の安静時振戦、筋強剛、無動、姿勢保持異常などの症状は、パーキンソン病以外でもみられます。

パーキンソン病以外(黒質ドーパミン神経細胞の変性・脱落を伴わないもの)でこれらの症状を認めるものを、パーキンソン症候群といいます。

パーキンソン症候群は脳血管の異常や一酸化炭素中毒、脳炎などにより生じることがあります。

進行性核上性麻痺や大脳皮質基底核変性症といった別の病気でみられることもあります。

またパーキンソン病様の症状は薬の副作用でもみられます。

最も代表的なのは統合失調症治療薬である抗精神病薬です。

他にも胃潰瘍の治療薬としても使用されるスルピリド(統合失調症治療薬でもある)やプリンペラン、一部の降圧薬でもパーキンソン症状を出現させるリスクがあります。

パーキンソン病の診断

まずは臨床症状(安静時振戦、筋強剛、姿勢異常、歩行障害の有無など)を診察にて確認します。

次に臨床症状がパーキンソン病によるものなのか、それともパーキンソン症候群によるものなのかを鑑別します。

パーキンソン症状を起こしうる薬剤を服用中かを確認し、薬剤性によるものでないことを確認します。その後、MRIやCTといった画像検査を行い、その他の脳・神経疾患との鑑別を行います。

最後にレボドパを服用することで症状の改善が確認されれば、パーキンソン病と診断されます(改善がなければ画像上明らかでない神経変性疾患と考えられます)。

パーキンソン病とCBD

パーキンソン病のためのCBDのイラスト

パーキンソン病に対し、海外では大麻由来成分であるCBD(カンナビジオール)が有効である可能性が指摘されてきています。

前臨床試験でポジティブな結果がみられていることから、実際に臨床試験も行われています。

CBDによる臨床試験

はじめに行われた臨床試験は1986年で、ジストニアを有する患者5名に、CBD100〜600mg/日を摂取してもらっています。

※ジストニアとは

持続的に筋肉が収縮することにより、自分の意思とは関係なく勝手に動いてしまう運動障害で、パーキンソン病でも認められることがある。首が斜めになったり、まぶだが震えたり、からだがウネっとねじれるような動きが生じたりする。原因が不明な一次性ジストニアと、パーキンソン病などの疾患や薬の副作用などによる二次性ジストニアがある。

全ての患者において用量依存的にジストニアの改善がみられました。ただしパーキンソン病の患者2名では、CBD300mg/日以上で運動能力の低下と安静時のふるえが悪化しました。

直接的にパーキンソン病のために行われた臨床試験ではありませんでしたが、これによりいったんパーキンソン病に対するCBDの有効性はないと考えられるようになります。

ですが研究が進むにつれ、パーキンソン病にはエンドカンナビノイドシステムの乱れ、脳の炎症、酸化ストレスなどがかかわっていることが分かり、これらにポジティブな作用をもつCBDが再び注目されるようになります。

2014年の研究では、パーキンソン病患者21名をプラセボ投与群、CBD75mg/日投与群、CBD300mg/日投与群の3群に、それぞれ7名ずつ割りあてて治療を行いました。

パーキンソン病の運動症状や神経保護のスコアに改善は認められなかったものの、CBD300mg/日投与群では幸福度やQOLのスコアに有意な改善を認めました。

2020年に行われたコロラド州の研究では、パーキンソン病患者13名に対し、高濃度CBD製剤エピディオレックスによる治験が行われました。CBD5mg/kg/日から漸増し、10〜15日のあいだに最大25mg/kg/日まで増量されました。

3名は副作用により治療を中断しましたが、残りの10名は運動・睡眠・感情におけるスコアの改善が認められました。

副作用は全員に認められましたが、ほとんどが軽度なもので重篤なものはありませんでした。具体的には多いものから下痢(85%)、眠気(69%)、疲労(62%)などがあり、20〜25mg/kg/日の高用量では5名に肝臓の異常を示す酵素の上昇が認められました。

以上のことから、CBDの投与量が多いほど軽度な有害現象は生じるものの、パーキンソン病に対する治療効果が高くなる可能性があるということがわかります。

CBDがパーキンソン病に有効だと考えられている理由

臨床試験が少なく、まだはっきりと有効性が結論づけられていませんが、なぜCBDがパーキンソン病に有効だと考えられているのかをお話していきます。

その理由としては大きく「エンドカンナビノイドシステムを整える作用」、抗酸化作用や抗炎症作用による「神経保護作用」が挙げられます。

エンドカンナビノイドシステムを整える

パーキンソン病は中脳の黒質のドーパミン細胞が変性・脱落する疾患です。からだの動きは、黒質と大脳基底核の連携により調節されています。

大脳基底核にはCB1受容体が高密度に存在することが明らかになっており、サルやマウスでは線条体においてドーパミン(D1,D2)受容体とCB1受容体が共発現していることも発見され、大脳基底核の運動調節機能にCB1受容体が関与していると考えるようになっています。

大脳基底核による運動調節は、黒質と線条体の間でのドーパミンのやり取りにより、最終的に淡蒼球内節からのGABAの放出量を調節することによって行われています。

パーキンソン病ではドーパミンの不足によりこのGABAの放出が過剰となり、過度な運動抑制が生じます。図を再掲しますが、詳しくは上記の “パーキンソン病のメカニズム” の項をご参照下さい。

大脳基底核による運動調節とパーキンソン病のメカニズム

エンドカンナビノイドを介したCB1受容体の作用は、GABA(神経細胞を抑制する方向に作用)およびグルタミン酸(神経細胞を興奮する方向に作用)といった神経伝達物質の放出を調整します。

これらの理由からエンドカンナビノイドシステムはパーキンソン病と密接に関係していると考えられ、治療標的として注目されています。

実際にパーキンソン病モデルの研究において、エンドカンナビノイドレベルの増加、CB1受容体の増加が報告されているものが多いです。

2001年の研究では、パーキンソン病モデルのマーモセット(リスほどの小さなサル)において、線条体のCB1の増加を認めました。このCB1受容体の増加は、レボドパを投与することにより正常化しています。

実はCB1受容体の活性化は、運動においては抑制的に働くため、パーキンソン病においてはマイナスに考えられています。例えば2001年の研究では、パーキンソン病モデルのカニクイザルにCB1作動薬を使用したところ、無動の増悪がみられています。

2000年の研究2005年の研究では、パーキンソン病モデルのラットの黒質、線条体、淡蒼球においてエンドカンナビノイドレベルが上昇し、レボドパやドーパミン作動薬を使用することにより、淡蒼球におけるエンドカンナビノイドレベルが正常化したことが報告されています。

そしてこれらのラットにCB1受容体の働きを阻害するリモナバントという薬を使用することで、パーキンソン症状の改善を認めています。

つまり黒質-線条体間のドーパミンの減少により、代償的にエンドカンナビノイドシステムが過活動状態となっており、これを調節することがパーキンソン症状の改善につながる可能性があるということです。

なお、アカゲザルでの研究マウスでの研究では、それぞれレボドパとリモナバントを併用により抗パーキンソン作用が増強され、運動機能が改善されたと報告されています。これはレボドパの低用量での使用を可能にし、副作用を軽減する可能性があることを示しています。

ただしCB1受容体拮抗薬であるリモナバントは、うつ病のコンテンツでもお話したように、重度な精神症状を引き起こす副作用が確認されているため、現在市場からは撤退しています。よってパーキンソン病の非運動症状には不利益と言えそうです。

では、この中でCBDはどのように関わっていくのでしょうか。

CBD自体はCB1受容体との親和性は低く、むしろ負の方向に調節すると言われています。これがTHCの精神作用を弱める理由ともなっています。

一方で、CBDはエンドカンナビノイドの分解や再取り込みを阻害する作用があるため、体内に留まるエンドカンナビノイドの量を増やす働きもあります。

2016年の研究では、パーキンソンモデルのマウスに対しFAAH(脂肪酸アミドヒドラーゼ:アナンダミドの分解酵素)を5週間投与したところ、運動障害の改善がみられたと報告しています。この作用はカンナビノイド受容体の働きを阻害することで打ち消されています。

また2004年の研究では、パーキンソンモデルのマウスに対しアナンダミドの利用率を高める薬を投与したところ、運動障害の改善が認められました。この作用はカンナビノイド受容体ではなく、セロトニン1B受容体を介していることも明らかになりました。

つまり、CB1受容体の作用を弱めながら、アナンダミドの分解を阻害して脳内での利用率を高めるCBDは、パーキンソン病の治療において有効である可能性があると考えられます。

神経保護作用

CBDは神経保護作用をもち、さらに神経新生を促進することでも知られています。CBDは酸化ストレスを軽減し、過剰な炎症を抑制し、その他神経毒性のある物質からも守ることで、パーキンソン病に有効であると考えられています。

抗酸化作用

パーキンソン病では、マロンジアルデヒドや過酸化脂質の増加、グルタチオンの減少、スーパーオキシドジスムターゼ活性の上昇といった、酸化パラメーターの上昇を示す所見が認められています。

酸化ストレスはフリーラジカルという廃棄物を生み出し、細胞にダメージを与えてしまいます。

つまりパーキンソン病においては、酸化ストレスにより黒質のドーパミン細胞がダメージを受け、どんどん病気を進行させてしまうことを意味します。

CBDは強力な抗酸化作用を有することで知られています。

例えば2000年の研究では、CBDとTHCがグルタミン酸の過剰投与によるダメージを軽減させることが分かりました。この作用はカンナビノイド受容体を介したものではなく、抗酸化作用によって認められた可能性があると結論づけられています。

グルタミン酸は生体内において重要な神経伝達物質ですが、刺激が過剰になると神経細胞にダメージを与えることで知られており、このグルタミン酸の毒性は抗酸化物質により軽減されると言われています。

この研究では、抗酸化作用によるCBDの神経保護能力はビタミンEやビタミンCよりも優れていることが示されています。

敗血症(重症感染症)により認知機能障害を引き起こしたマウスの研究では、CBDは酸化パラメーターを改善するとともに認知機能を回復させ、かつ死亡率を低下させています。

またパーキンソン病は脳内鉄の蓄積とも関連性が指摘されています。過剰な鉄は脳内の酸化ストレスを増大させ、神経細胞にダメージを与えます。

2012年の鉄過剰により認知機能障害を引き起こしたマウスでの研究では、高用量のCBDにより認知機能の改善が認められています。

これらのことから、CBDは抗酸化作用によりパーキンソン病の進行を抑制し、かつパーキンソン病で併発しやすい認知症を予防する可能性もあると考えられます。

抗炎症作用

パーキンソン病では脳内において免疫システムが過剰に働いていることが分かっています。

脳内の免疫システムはミクログリアという細胞が担っており、パーキンソン病ではミクログリアが有害な方向で活性化しています。

ミクログリアの活性化にはM1型(炎症性)とM2型(抗炎症性)という2つの型が存在します。

M1型は炎症性サイトカインを放出し免疫システムを活性化させ、バイ菌をやっつける攻撃的な型です。

一方M2型は逆に抗炎症性サイトカインを放出して炎症を抑制し、組織の回復を促進する型です。

2017年の論文では、活性化したミクログリアをM1型からM2型へと変えることは、パーキンソン病の治療に有効であると結論づけています。

このミクログリアの型を変える標的となるのが、PPARγ受容体という核内受容体とカンナビノイド受容体(特にCB2受容体)と言われています。

例えば、PPARγ受容体を活性化する糖尿病治療薬ピオグリタゾンをパーキンソン病モデルのマウスに投与した研究では、ミクログリアの活性化を抑制するとともに線条体・黒質の神経細胞の損失を減少させています。

また2015年の研究において、PPARγ受容体の活性化はレボドパによるジスキネジアを軽減することも示されています。

CB2受容体は主に末梢に存在しますが、脳にも少ないものの存在します。さらにCB2受容体は活性化したミクログリアに出現することが分かっており、多くの神経変性疾患においてアップレギュレーション(受容体の増加や感受性の増大)を認めています。

2016年の研究では、パーキンソン病モデルのマウスにおいてミクログリアの活性化とともに、黒質と線条体におけるCB2受容体の発現上昇を認めました。このマウスに対しCB2受容体作動薬を使用したところ、線条体での炎症性サイトカインが抑制され、保護作用が認められています。

CBDはPPARγ受容体を活性化することで抗炎症作用をもたらすことが分かっています。CBDは他にもアデノシンの再取り込みを阻害し、アデノシンA2A受容体を活性化することで、抗炎症作用をもたらします(参考論文)。

CBDはCB2受容体と親和性が低いものの、その働きを負の方向に調節すると言われています。ですが同時に間接的に作用を増強するとも考えられています。

そのメカニズムははっきりしていませんが、CBDは前述したようにエンドカンナビノイドの利用能を高めるため、CB2受容体を活性化するというのが1つ考えれると思います。

興味深いのは、2010年の研究において、虚血により脳障害を引き起こしたマウスにCBDを投与することにより、炎症反応が弱まり、障害が軽減されましたが、この作用はCB2受容体あるいはアデノシンA2A受容体の働きを阻害することで消失しています。つまりCBDの抗炎症作用はCB2受容体も介していることを意味しています。

一方、薬物療法でお話ししたように、パーキンソン病に対してはレボドパと併用してアデノシンA2A受容体拮抗薬を使用することがあります。アデノシンA2A受容体の活性化はGABAの放出を促進し、運動抑制を高めることになります。

これだけで考えると、アデノシンA2A受容体を活性化するCBDは、パーキンソン病の運動障害を悪化させることもあるかもしれません。

非運動性の症状にも有効

パーキンソン病の主要症状は運動障害ですが、その他にも筋緊張や姿勢異常に伴う痛み、疾患そのものに伴う不安や抑うつ症状もみられやすいです。

これらの症状や自律神経の乱れによる睡眠障害も認められることが多く、また、治療に伴い精神病症状がでることもあります。

さらにはパーキンソン病患者の約4割で認知症が併発するとも言われています。

これらの症状に対しても、CBDが有効である可能性があります。

不安・抑うつ

セロトニン1A受容体を刺激することで抗不安作用をもたらすタンドスピロンという薬がありますが、CBDもセロトニン1A受容体を活性化することにより、抗不安作用をもたらすと言われています。

よってCBDはうつ病にも有効であると考えられています。

パーキンソン病の不安に対しては2020年に臨床試験も行われています。

パーキンソン病患者24名にCBD300mgまたはプラセボを摂取してもらい、不安や緊張を誘発させるパブリックスピーチテストを受けてもらったところ、CBDはプラセボと比較して、スピーチにおける不安やそれに伴い生じる手足のふるえを軽減させました。

痛み

CBDは鎮痛効果があることも知られています。2020年のCBDの鎮痛作用に焦点を当てた論文では、侵害性疼痛・神経障害性疼痛・その他の疼痛におけるCBDの有効性について述べられています。

2020年の研究では、パーキンソン病モデルのマウスに対しCBDを使用することにより、痛み刺激を軽減することが示されています。

睡眠障害

パーキンソン病の睡眠障害は自律神経の乱れ、痛みや不安といったものが原因となりやすいです。CBDが持つ抗不安・抗うつ作用や鎮痛作用は不眠の改善にもつながると考えられます。

パーキンソン病ではレム睡眠行動異常症という睡眠障害がみられることがあり、これに対するCBDの臨床試験が行われています。

※レム睡眠行動異常症とは

通常睡眠は急速眼球運動を伴うレム睡眠と、それを伴わないノンレム睡眠のサイクルを繰り返している。人が夢を見るのはレム睡眠の最中であり、この間筋肉は完全にゆるんでいる。

レム睡眠行動異常症では夢をみている間も筋緊張が保たれており、悪夢をみることも多いため、夢をみながら大声を出したり、体を動かすことがある。

この症状はパーキンソン病やレビー小体型認知症でみられることが多い。

2014年の研究では、パーキンソン病患者4名にCBDを服用してもらったところ、レム睡眠行動異常症の頻度が大幅に減少したと報告しています。

逆に2021年の研究では、レム睡眠行動異常症を持つパーキンソン病患者33名にCBD75〜300mg/日あるいはプラセボを使用してもらったところ、プラセボとCBDとの間に有意な変化は認められませんでした。ですが一方で、CBD300mg/日の服用で一時的な睡眠満足度の向上が報告されています。

認知症

CBDの持つ抗炎症・抗酸化作用による神経保護は、認知症に対しても有効である可能性があります。

抗酸化作用の項で述べたように、CBDは過剰な鉄や虚血により脳障害を起こしたマウスの認知機能の改善を認めています。

また2016年の研究では、虚血により認知・情動行動障害を引き起こしたマウスに対しCBDを投与したところ、海馬の神経変性や損傷を抑制し、さらにBDNF(脳由来神経栄養因子)の上昇や神経新生も認められています。

つまりCBDは脳を保護しながら神経の修復を促進することにより、認知症に有効である可能性があります。

レボドパによる精神症状

パーキンソン病において治療効果が最も高いレボドパですが、用量が多いと幻視や幻覚といった統合失調症のような症状が出現することがあります。

CBDはこのレボドパによる精神症状の緩和にも役立つ可能性があります。

2009年の研究では、パーキンソン病でかつ精神病を併発している6名の患者に対し、CBD150mg/日以上を4週間摂取してもらったところ、運動障害を悪化させることなく精神症状を改善させました。

実はこれはとてもすごいことです。なぜなら通常レボドパにより幻覚や幻視が出現した場合、レボドパの減薬やドーパミン受容体の働きを阻害する薬を使用しなければならないからです。

これらはパーキンソン病の治療としてはマイナスになってしまいます。

この研究おいてCBDは、パーキンソン病の治療を邪魔することなく、精神症状を抑え込むことができることが示されたわけです。

パーキンソン病と医療用大麻

パーキンソン病と医療用大麻

現在日本では違法となっている医療用大麻ですが、海外ではパーキンソン病に対し医療用大麻を使用しているところがあります。

例えばタイでは、医療用大麻の適応リストにパーキンソン病が含まれています。

以前公開した記事にあるように、タイの医療用大麻使用者の約8割が治療効果を実感していますが、パーキンソン病において効果があると回答した人の割合は79.1%でした。

2021年アメリカで行われたパーキンソン病患者に対するアンケートを分析した研究では、有効回答者1064名のうち24.5%(261名)が過去6ヶ月以内に大麻を使用し、このうち201名(76.6%)は現在も症状緩和のために大麻を使用していることが分かりました。

大麻によって治療しようとした症状として多かったのは、運動症状では筋肉のこわばり(43%、86名)、手足のふるえ(42%、84名)で、非運動症状では不安(45.5%、91名)、痛み(44%、83名)、睡眠障害(44%、88名)でした。

そして大麻の使用により症状が中程度以上改善したと回答した人は、筋肉のこわばりで64%(55名)、ふるえで63.1%(53名)、不安で78%(71名)、痛みで71.6%(63名)、睡眠障害で76.1%(67名)と大半を占めていました。

一方で過去6ヶ月以内に大麻による治療を中断した人は261名中60名で、理由として最も多かったのは、治療効果が得られないため、でした。

これらのことから、パーキンソン病にとって医療用大麻は効果に個人差があるものの、一部の運動障害を改善するだけでなく、痛みや不安、睡眠障害を改善し、QOLを向上する可能性が高いと考えられます。

実はここには少し矛盾があります。

大麻にはTHC(テトラヒドロカンナビノール)という成分が含有されており、日本では取り締まりの対象となりうるものとして扱われています。

THCはCB1、CB2受容体に対し部分作動薬として直接作用します。

CBDの項で述べたように、CB2受容体の活性化はパーキンソン病に対し有効と考えられていますが、CB1受容体の活性化はパーキンソン病にとってはマイナスになる可能性があります。

つまり、大麻はパーキンソン病を悪化させるのではないかという疑問が浮かぶと思います。

実際に2013年のマウスでの研究では、CB1作動薬によりカタレプシーを誘発しています。

※カタレプシーとは

受動的にとらされた姿勢を変えようとせず、そのままの姿勢を保ってしまう状態。統合失調症やパーキンソン病、統合失調症治療薬の副作用によって生じることがある。

興味深いのは、CBDがこのカタレプシーを予防・改善したということです。CBDはCB1受容体の働きを弱めることからも推測できるように、THCの酩酊や不安誘発といった治療にとって有害な作用を打ち消すと言われています。

THCやCBDは大麻草に含まれる主なカンナビノイドです。

大麻草には他にも100種類以上ものカンナビノイドを含有していることが分かっています。

その中の1つであるTHCV(テトラヒドロカンナビバリン)というマイナーカンナビノイドは、CB1受容体に対しては拮抗作用、CB2受容体に対しては活性化する作用があり、パーキンソン病の治療において注目されています。

2011年の研究では、パーキンソン病モデルのマウスに対しTHCVを投与したところ、運動障害を改善し、黒質のドーパミン細胞の脱落も減少させていました。この研究では、THCVが抗酸化作用やミクログリアの抑制作用を有することも示されています。さらにTHCVとCBDの併用は強力な神経保護作用をもたらす可能性があるとも述べられています。

大麻草にはカンナビノイドだけでなく、テルペンという植物由来の精油も含有されています。その中の1つであるβカリオフィレンは、CB2受容体を活性化することで知られています。

2016年の研究では、パーキンソン病モデルのマウスにβカリオフィレンを投与したところ、CB2受容体への作用を通してミクログリアと炎症性サイトカインを抑制し、さらに酸化パラメーターを改善することで、ドーパミン神経細胞を保護することが示されました。

大麻草に含まれるカンナビノイド、テルペンといった成分は、全て一緒に摂取することによって相乗効果を生み、単体では発揮し得ない治療効果を生み出すと言われています(これをアントラージュ効果といいます)。

例えば2017年の研究では、神経障害性疼痛モデルのマウスにおいて、THCとCBDはそれぞれ単体で鎮痛作用を認めましたが、それらを併用すると低用量で200倍もの鎮痛作用を示すことが分かりました。

THC単体ではパーキンソン病の運動症状を悪化させるかもしれません。ですがTHCは催眠作用や鎮痛作用があり、非運動性の症状には有効です。

この上でCBD、THCV、βカリオフィレンをはじめとした様々なカンナビノイドやテルペンを一緒に摂取したら・・つまり大麻草そのものを摂取したら、どのような効果が生まれるでしょうか?

それがタイやアメリカにおけるアンケート結果に反映されているのかもしれません。

まとめ

パーキンソン病とCBD・医療用大麻の治療効果についてみてきました。

・パーキンソン病は中脳の黒質における神経細胞が変性・脱落し、ドーパミンの放出が減少することで運動障害を引き起こす難病

・運動障害だけでなく、痛み・不安・抑うつ・睡眠障害・認知症などの非運動症状やレボドパによる副作用も認められる

・大脳基底核ではCB1受容体が高密度で存在し、パーキンソン病の治療標的として注目されている

・CBDはエンドカンナビノイドシステムの調整や、抗酸化・抗炎症作用による神経保護により、パーキンソン病に有効である可能性がある。

・海外では医療用大麻の使用によりパーキンソン病の運動症状・非運動性症状の改善を実感する人が多い

・CBDやTHCといったカンナビノイド単体ではなく、大麻草そのものの全草摂取がパーキンソン病においては望ましいと考えられる

理想の老後の生活を思い描いていたにもかかわらず、パーキンソン病になってしまったとしたら・・・

体を自由に動かせず、痛みも発生する。そうなると夜は眠れないし、精神的にもどんどん落ちこんでいく。そしてそれがどんどん進行していくという恐怖感や不安感。QOLが大幅に低下することは想像に難くないと思います。

現時点でレボドパよりも効果のある治療薬はありません。ですがレボドパは長期使用に伴い様々な弊害が生じ、やがて効力も減退します。

こんな時にもしかしたら医療用大麻が役に立つかもしれません。あるいはレボドパの使用期間を短くしたり、使用量を少なくすることもできるかもしれません。

パーキンソン病の非運動症状に対しては、鎮痛剤、睡眠薬、抗不安薬や抗うつ薬といった薬が使用されていますが、有効性が認められないケースもあります。

こういった時にも大麻が救世主となるかもしれません。

確かに医療用大麻はまだまだ研究が不足しており、治療効果に一貫性がありません。

ですが ”大麻も使える” という選択肢があれば、高齢者のQOLをより高い確率で維持することができるのではないでしょうか?

廣橋 大

精神病院に勤める現役看護師。2021年初頭より大麻使用罪造設に向けた動きが出たことをきっかけに、麻に関する情報発信をするようになる。「Smoker’s Story Project」インタビュアー。

Recent Articles

大麻成分CBDA、肥満症に対し有効性を示す

2022年5月17日、CBDA(カンナビジオール酸)が肥満症に対し有効性を示した論文が、イスラエルの研究者らにより公開されました。 近年、世界的に欧米食中心の食生活が広まり、加えて技術進...

CBDが新型コロナ重症化を早期から抑制か

2022年5月16日、CBD(カンナビジオール)を主成分とした大麻抽出物「CBD-X(詳しくは後述)」が新型コロナウイルス感染による重症化を早期から抑制する可能性を示した論文がイスラエルの研...

光線力学的療法(PDT)とCBD

日本人の死因の第一位となっている、がん。 がんの主な治療は手術、化学療法、放射線療法ですが、これらの標準治療には侵襲や副作用がついて回り、高齢者では治療を受けるのが難しい場合があ...