ウォール街の名門金融機関が求職者や従業員への大麻検査を廃止

ウォール街の名門金融機関が求職者や従業員への大麻検査を廃止

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ニュースメディア「Business Insider」によれば、大手の銀行や証券会社が集まる世界的な金融街「ウォール街」では、もはや求職者や従業員に対する大麻検査が行われていません。

ウォール街のある米国ニューヨーク州は、2021年より嗜好用大麻を合法化。

同州では求職者に対する大麻検査の強要が禁じられています。また、大麻の使用による明らかな障害が認められない限り、雇用主は勤務時間外で大麻を使用した従業員に罰則を課すことはできません(安全性が重視される仕事[建築業や法執行機関など]や連邦法が大麻検査を義務付けている職種[運送業など]を除く)。

Business Insiderはウォール街の投資銀行7行に連絡をとり、求職者や従業員に対し大麻やその他の薬物検査を実施しているのかを取材。その結果、ほとんどの銀行はもはや大麻検査を行っておらず、その多くがその他の物質についても薬物検査を行っていませんでした。

各金融機関の返答は以下の通り。

バンク・オブ・アメリカ

世界最大の金融機関の1つであるバンク・オブ・アメリカの広報担当者は、新入社員や従業者の薬物使用について検査を行っていないことを明らかにした。

シティグループ

世界約160の国と地域に約2億の顧客口座を有する世界有数の銀行であるシティグループも、雇用条件として薬物検査を義務付けておらず、従業員に対しても同様の対応をとっていた。

ゴールドマン・サックス

世界で最も伝統のある大手金融機関の1つであるゴールドマン・サックスの広報担当者も、新入社員や従業員に対し、大麻やその他の物質に関する検査を行っていないと返答。

JPモルガン

世界有数のグローバル総合金融サービス会社であるJPモルガンの広報担当者は、薬物検査ポリシーについてのコメントを拒否。Business Insiderが2019年に入手した文書によると、同社は取引先の全従業員を対象に、取引先の費用負担で薬物検査を実施した過去がある。

モルガン・スタンレー

世界有数のグローバル総合金融サービス企業であるモルガン・スタンレーの広報担当者は、新入社員や従業員に対し、いかなる薬物検査も行っていないと述べた。

UBS

2023年にクレディ・スイスを買収したスイス最大の銀行UBSは、Business Insiderの取材に応じなかった。

ウェルズ・ファーゴ

サンフランシスコを拠点とする全米大手の金融機関ウェルズ・ファーゴは、新入職員や従業員に対して、大麻やその他物質に関する検査を行っていないことを明らかにした。

Business Insiderの記事では、米国民の大多数が大麻の合法化を支持している中、「ウォール街の最も堅苦しい金融機関でさえ、雇用前の薬物検査は過去のものになりつつある」と述べられています。

なお、最近公開されたロビー活動報告書では、アメリカン・エキスプレス、モルガン・スタンレー、PayPal、米国銀行協会といった金融企業や団体が大麻政策のために資金を投じていたことが明らかにされています

他にも、世界最大の電子商取引サイトを運営している巨大企業Amazonは、大麻検査を廃止するだけでなく、大麻の合法化を支持し、広範な大麻改革のためにロビー活動を行っていることで知られています。

ニューヨーク州だけではなく、アメリカでは雇用において大麻の使用を保護する州が増えつつあります

雇用における大麻検査は通常尿検査によって行われますが、1ヵ月前の大麻使用に対しても陽性反応が出ることがあるため、検査時に”ハイ”であったことを証明することはできません。

また、勤務中の大麻使用は業務に支障をきたす可能性がありますが、勤務時間外での使用についてはそうとも限りません。

全米経済研究所(NBER)は2022年末、嗜好用大麻の合法化が雇用や収入の低下と関連せず、むしろ部分的にこれらを増加させていたことを報告

シドニー大学の研究者らによって公開されたシステマティックレビューでは、大麻使用が翌日のパフォーマンスに悪影響を及ぼすとするエビデンスは非常に限られており、アルコールと比べてもその可能性が低いことが報告されています。

大麻の使用は意欲ややる気を損なわせる「無動機症候群」を引き起こす可能性があるという指摘もありますが、ロンドン大学とケンブリッジ大学の研究チームは、週4日程度の大麻使用が無動機症候群の発症と関連しなかったことを報告

カナダで行われた研究では、勤務時間外に大麻を使用した人と非使用者との間において、労災の発生率に有意差が認められなかったことが明らかにされています

Benzinga「Wall Street Waves Goodbye To Weed Testing: How Financial Giants Reshape Job Eligibility In The Cannabis Era」https://www.benzinga.com/markets/cannabis/24/02/36896965/wall-street-waves-goodbye-to-weed-testing-how-financial-giants-reshape-job-eligibility-in-the-ca

Business Insider「Prestigious Wall Street banks are ditching marijuana and other drug tests for job seekers」https://www.businessinsider.com/wall-street-big-banks-no-longer-testing-marijuana

NORML「New York: Statewide Regulations Limit Discriminatory Actions Against Employees Who Consume Cannabis While Away from Work」https://norml.org/news/2021/10/28/new-york-statewide-regulations-limit-discriminatory-actions-against-employees-who-consume-cannabis-while-away-from-work/

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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