ニューヨーク州、嗜好用大麻市場を全事業者に開放へ

ニューヨーク州、嗜好用大麻市場を全事業者に開放へ

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米国ニューヨーク州の規制当局は9月12日の会合で大手大麻企業を含む全ての事業者を対象とし、来月より嗜好用大麻市場のビジネスライセンスの申請受付を開始することを決議。これらの事業者が登場することで、現在足踏み状態となっているニューヨーク州の合法大麻市場は今後急速に拡大していく可能性があります。

2021年に嗜好用大麻を合法化したニューヨーク州は現在、大麻の禁止によって不釣り合いな影響を受けた人や大麻関連の前科を有する人、その家族、特定の非営利団体のみに限定して嗜好用大麻の小売ライセンスを発行しています(CAURDプログラム)。

このプログラムは大企業による市場の独占を防ぐことで「麻薬戦争」の被害者が正当な利益を獲得できるようにすることを目的としています。

なお、嗜好用大麻の栽培ライセンスの発行に関しては現在、ニューヨーク州農業市場省(Department of Agriculture and Markets)の「ヘンプ研究パイロットプログラム」のもとでヘンプの栽培が認可されている事業者に限られています(AUCCライセンス)。

CAURDプログラムのような社会的公平性に基づいた取り組みは称賛に値するものですが、2022年末に州認可の大麻小売店が初登場して以降、このような大麻小売店は未だ23店舗しか存在しません。

このような大幅な遅延により、栽培業者が生産した大麻は行き場を失うこととなり、違法な大麻小売店が急増する結果となりました。

これに追い打ちをかけるように最近、法律で成文化されていないCAURDプログラムが嗜好用大麻合法化法に違反しているとした訴訟が起きました。これにより現在、ニューヨーク州大麻管理局(OCM)は最高裁の命令のもと、嗜好用大麻小売ライセンスの発行の一時中断を余儀無くされています。

このような行き詰まりを見せる中、ニューヨーク州大麻管理委員会(New York State Cannabis Control Board)は10月4日より全事業者を対象とし、嗜好用大麻の栽培、加工、流通、マイクロビジネス、小売ライセンスの申請受付を開始することを決定しました。

当初の予定通り、退役軍人、マイノリティ、女性、経営難の農家などを対象とした「社会的公平性ライセンス」の申請枠も設けられます。該当者はライセンスの申請・発行にかかる費用が半額となり、技術的なサポートを受けることが可能です。

これらはニューヨーク州の大麻市場で旗揚げすることを心待ちにしていた人々にとって喜ばしいものとなります。しかし、同時にこれらの新規事業者は強大なライバルとの競争を強いられることになりそうです。

というのも、ニューヨーク州は今回、すでに同州で医療用大麻の販売と製造を行っている「登録組織(Registered Organizations)」にも、嗜好用大麻の小売ライセンスを開放することを決定しているからです。

登録組織は嗜好用大麻の販売が開始されてから3年間市場に参加できないことになっていましたが、これが約1年間に短縮された形となっています。加えて、新たな登録組織の申請受付も開始される予定となっています。

つまり、他州でも市場を展開しているコロンビア・ケア(Columbia Care)、クレスコ・ラボ(Cresco Labs)、キュラ・リーフ(Curaleaf Holdings)などの大手大麻企業が東海岸最大の市場に登場することを意味します。

登録組織のライセンス申請受付開始日は未定ですが、全事業者と同様に10月4日から開始される見込みとなっています。これらの事業者による嗜好用大麻小売店は、早ければ年内に登場する可能性があります。

大麻管理局(OCM)のクリス・アレクサンダー(Chris Alexander)局長は「今日はニューヨークの合法大麻市場が合法化以来最も大きく拡大した日です。ニューヨーク州民が州全体でより安全で規制された大麻にアクセスできるようにするという目標達成に向け、大きな一歩を踏み出しました」とコメント。

登録組織のうち8社が参加しているニューヨーク州医療大麻産業協会(New York Medical Cannabis Industry Association)の広報担当者であるバリー・カーモディ(Barry Carmody)氏は「本日は州の医療プログラムを拡大・維持し、ニューヨークにおける経済的に実行可能で公平な成人用大麻産業を創出するための極めて重要な一歩となります」と述べました。

今回のニューヨーク州の決定は、停滞していた同州の合法大麻市場を拡大させ、違法大麻市場を縮小させることを目的としています。

しかし、当然のことながらCAURDプログラムのライセンス取得者や今後ライセンス申請を行う予定の社会的公平性申請者及び中小企業は、既存の大企業が予定よりも早く市場に参戦することに対し不満を示しており、この新規制の修正を求めています。

なお、ニューヨーク州は今回、大麻研究ライセンスも許可していくことを決定。大麻研究ライセンス取得者は研究目的で大麻を生産、加工、所有、購入し、市場の大麻製品を研究する機会を得ることが可能となります。

合法市場の拡大と違法市場の縮小に向け、ニューヨーク州はこれまでも様々な取り組みを行っています。

3月には、嗜好用大麻の小売ライセンスの発行数を150件から300件にまで倍増することを発表。7月には仮の小売ライセンスが新たに212件発行され、州内で承認された大麻小売ライセンスは合計で463件となりました

さらに、同州では先月より大麻の「ファーマーズマーケット」が続々と開催されています。このプログラムは現時点で2024年1月までの暫定的なものとなっていますが、大麻栽培業者が抱える余剰な大麻を流通させるための「助け舟」として重要な役割を果たしています。

一方、ニューヨーク州は違法事業者に対する取締りも強化するために1,600万ドル(約24億円)の予算を計上。5月には大麻管理局に違法店舗を取り締まる権限を与える法律を成立させ、取り締まりをより一層強化しています

Marijuana Moment「New York To Open Adult-Use Marijuana Market To All Businesses, Including Large Multistate Operators And Medical Cannabis Companies」https://www.marijuanamoment.net/new-york-to-open-adult-use-marijuana-market-to-all-businesses-including-large-multistate-operators-and-medical-cannabis-companies/

MJBizDaily「It’s official: New York will open adult-use marijuana retail to multistate operators」https://mjbizdaily.com/new-york-will-open-adult-use-cannabis-retail-to-multistate-operators/

Business of Cannabis「General New York Cannabis Licence Applications to Open October 04」https://businessofcannabis.com/general-new-york-cannabis-licence-applications-to-open-october-04/

Benzinga「New York Expands Cannabis Licensing After Legal Delays And Tug Of War Between David And Goliath」https://www.benzinga.com/markets/cannabis/23/09/34502717/breaking-new-york-expands-cannabis-licensing-after-legal-delays-and-tug-of-war-between-david-and

New York Post「New York cannabis regulators opens pot licenses to disabled vets, women, minorities during legal battle: ‘It’s about time’」https://nypost.com/2023/09/12/new-york-cannabis-regulators-opens-pot-licenses-to-disabled-vets-women-minorities-during-legal-battle/

Spectrum News「New York state cannabis applications open to all this fall」https://spectrumlocalnews.com/nys/central-ny/politics/2023/09/13/ny-cannabis-applications-to-open-to-all-this-fall

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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