フィジー、医療用大麻の輸出で経済回復を目指す

フィジー政府は、新型コロナウイルスの蔓延により低迷した観光産業に代わる収入源として、”世界の医療用大麻産業への参入”を挙げています。

南太平洋のオセアニアに位置し、およそ330の島国からなるフィジー共和国では、嗜好用大麻も医療用大麻も違法。しかし、他の国々と同様、大麻は最も一般的に使用されている違法物質の1つとなっています。

産業用大麻（ヘンプ）に関しては、昨年8月より麻薬取締法から除外され、非犯罪化されています。これにより、認可された業者・農家はTHC1.0%以下の大麻の所持、栽培、輸出入が可能となっています。

人気の高い観光地であるフィジーは、経済的に大きく観光産業に依存してきました。しかし、近年では特に新型コロナウイルスによるパンデミックの影響により国内の観光産業は大きく衰退。このことから、フィジーでは新たな収入源を確保することが急務となっています。

このような中、フィジーの副首相兼貿易・協同組合・中小企業・通信大臣であるマノア・カミカミカ（Manoa Kamikamica）氏は、観光産業に代わる収入源として医療用大麻産業への参入を検討していることを明らかにしました。

カミカミカ副首相は政府のウェブページで、「観光業だけに頼ることは、私たちの経済にとって持続可能ではありません。収入を生み出し、経済を多様化させるための新たな道を探さなければならないのです」

「私たちが検討している有望な分野のひとつは、医療用大麻の栽培です。ただし、明確にしておきたいのですが、これはフィジーで大麻が合法になることを意味するものではありません」

「この試みは厳重に規制され、安全な施設に限定されることを理解しておく必要があります。国内での販売やマーケティングは行われず、収穫、加工、輸出が行われます」と述べています。

つまり、医療用大麻の栽培は国内で流通させるためではなく、数十億ドル規模と言われる世界の医療用大麻市場に参入することを目的としています。

とはいえ、カミカミカ副首相は「ある品種は発作の管理に効果的であることが証明されており、ドラベ症候群やレノックス・ガストー症候群などの患者に希望を与えています」「医療用大麻はPTSDに関連する症状を緩和し、フラッシュバック、悪夢、不安を和らげることができます」と語り、医療用大麻の有効性を認めています。

また、医療用大麻産業への参入は「単に収入を生み出すだけでなく、雇用を創出し、経済を強化し、困っている人々の生活を向上させる可能性がある」とも述べています。

すでにフィジー内閣は今年8月、医療用大麻産業の創出に向けたフィージビリティ・スタディ（採算性や実現可能性などに対する調査・分析）の実施を承認しています。

今後フィジー政府は透明性の確保と国民から意見を集めることを目的とし、10月9日〜19日にかけて全国的な協議を行う予定。

なお、すでに国外の大麻企業2社がフィジー政府の取り組みに関心を持ち、フィジー国内で医療用大麻の栽培・抽出を行う意向を表明していることも明らかにされています。