脆弱X症候群の子ども、CBDゲル使用により社交性など改善認める

脆弱X症候群の子ども、CBDゲル使用により社交性などが改善

- 米豪合同の臨床試験

11月25日、脆弱X症候群(FXS)の子ども210名を対象とした臨床試験においてCBDゲルが有効性を示したことがアメリカとオーストラリアの研究チームにより報告されました。

FXSは性染色体であるX遺伝子に存在する「FMR1遺伝子」の異常により知的障害、自閉傾向、多動など様々な症状を認める極めてまれな難病で、日本では約5000人の罹患者がいると推定されています。

FMR1遺伝子はFMRPと呼ばれるタンパク質を生み出します。このタンパク質は身体の中に存在するその他のタンパク質量に影響を与え、神経発達において重要な役割を果たしています。FXSではFMR1遺伝子の異常によりFMRPが産生されなくなり、上記のような多様な症状が認められます。

このFMRPの機能低下はエンドカンナビノイドシステム(ECS)にも異常をきたすことが明らかとなってきており、マウスの研究においてECSの補正が有効性を示したことも報告されています(FXSについてはこちらの記事も併せてご参照ください)。

このような背景から、ECSに作用するとされるCBDに期待が寄せられるように。2019年、アメリカとオーストラリアの研究チームはFXSの子ども20名を対象にCBDゲルによる臨床試験を実施し、不安や気分などが改善されたことを報告しました。

今回ご紹介する論文は、同じ研究者らがこの研究をさらに発展させたものとなります。

治験の対象となったFXSの子ども(3〜17歳)の数は210名にまで拡大。治療者及び治験者に分からないように、CBDゲルを使用するグループ(109名)とプラセボゲルを使用するグループ(101名)とで無差別に振り分け(二重盲検ランダム化比較試験)、12週間に渡り検証が行われました。

使用されたのは1包あたりCBD125mgを含有したゲル。35kg以下の子どもはCBD250mg(1包x2回/日)、それより体重が重い子どもは500mg/日(2包x2回/日)の用量で経皮的に使用しました。

有効性の評価に用いられたのは、自閉症スペクトラム症や知的障害の子どもの不適応行動を評価するための尺度「ABC-C(Aberrant Behavior checklist-community)」をFXS用に改良したもの(ABC-CFXS)。「攻撃性」「引きこもり」「常同性(同じ行動を繰り返すこと)」「多動性」「不適切な言語」「社会的回避(他者との交流を避けること)」の6項目を評価し、このうち「社会的回避」の項目が主要アウトカムとなりました。

他にも全体的な改善度を医師が評価する「CGI-I」や、親などの介護者が評価する「CaGI-S」「CaGI-C」といったスケールも用いられました。

全体的にCBDゲルはプラセボと比較し、ABC-CFXSの「社会的回避」「攻撃性」「引きこもり」といった項目において改善を示しましたが、統計的有意差には至らず。CGI-IやCaGI-Cにおいても傾向的な改善を示すのみで、統計的に有意差は認められませんでした。

さて、ここからが重要です。

この研究ではFMR1遺伝子の異常の程度が大きい(DNAのメチル化が90%以上)グループとそれ以外のグループ(DNAのメチル化が90%未満)における反応の違いも解析されました。

遺伝子の異常の程度が大きいグループ(全体の79.7%)では治験前の評価時において、それ以外のグループよりも重度の表現型を示していました。つまり、遺伝子の異常の程度が大きい(FMRPの産生が少ない)ほど重症度が高かったということになります(以下、DNAの以上の程度が大きいグループ=重症度が高いグループとする)。

重症度の高いFXSグループに焦点を当て分析した結果、主要アウトカムであるABC-CFXSの「社会的回避」は有意に改善。改善率の中央値はCBDゲルで40%、プラセボで21.1%であり、全体の解析と比較し2倍以上もの効果を示していました。逆に重症度が高くない(DNAのメチル化が90%未満)グループでは、プラセボと比較して有意な改善が認められていませんでした。

他にも重症度の高いグループでは、ABC-CFXSの「攻撃性」の項目や親による評価(CAGI-C)において有意な改善が認められ、医師による評価(CGI-I)でも傾向的な改善が認められました(プラセボ群37.7%、CBDゲル群51.1%)。

つまりこれらの結果は、重症度が高い(FMRPの産生が少ない)ほどCBDゲルが有効性を示したということになります。

さらにこの研究ではCBDゲルの安全性も評価。副作用の出現率はプラセボ(50.0%)とCBDゲル(57.8%)でほとんど差はなく、重篤な副作用もみられませんでした。

皮膚への影響も評価され、CBDゲル群では塗布部における中程度の痛みが2件、軽度のかゆみが1件、軽度の発疹が1件報告されました。

皮膚刺激を5段階で評価したスケール(0:赤みなし、1:最小限の赤み、2:塗布部に明らかな赤み、3:浮腫を伴う強い赤み、4:浮腫や水疱、びらんを伴う強い赤み)において、「0」の割合はCBDゲル群で89%、プラセボ群で97%。開始1ヶ月目ではCBDゲル群の17%で「2」と報告されましたが、3ヶ月目には1.9%にまで減少。「3」と報告したのは期間中2.8%で、「4」は認められませんでした。

また12週間の間、血液検査やバイタルサインにおいて有意な変化は認められませんでした。つまり、高濃度のCBDを含有するオイル「エピディオレックス」で報告されているような肝酵素の上昇も認められなかったということになりますが、これには経口摂取と経皮使用による差が関係しているだろうと研究者らは述べています。

これらのことから3〜17歳の子どもにおいて、CBDゲル(250mg/日あるいは500mg/日の12週間の使用)は副作用を認めたとしても軽度であり、忍容性が良好であることが示されました。

廣橋 大

精神病院に勤める現役看護師。2021年初頭より大麻使用罪造設に向けた動きが出たことをきっかけに、麻に関する情報発信をするようになる。「Smoker’s Story Project」インタビュアー。

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