脆弱X症候群の患者、CBDの使用によって様々な症状改善を報告

脆弱X症候群の患者、CBDの使用によって様々な症状改善を報告

- アメリカの横断的研究

脆弱X症候群とは知的障害、独特な外見(細長い顔、大きな耳など)、巨大睾丸を3主徴とする指定難病であり、性染色体であるX遺伝子の異常が原因となり発症します。日本では1万人に1人の頻度で発症しており、およそ5000人の罹患者がいると推定されています。

症状は3主徴に加え、自閉傾向、多動、注意欠如などの自閉症スペクトラム症やADHDのような症状や、人によりてんかん、睡眠障害、心臓の弁の異常、胃食道逆流症などが認められたりします。成長に伴いうつ病や不安、攻撃性などの精神症状がみられることも多く、また50代を過ぎた頃には認知症やパーキンソン病、小脳失調症などを発症する可能性が高くなります。症状が認められるのは主に男性で、女性では症状は軽いか無症状となります。

2012年の研究では、脆弱X症候群モデルマウスにおいてエンドカンナビノイドシステムの異常が発見され、これを補正することにより行動異常が改善したことが報告されています。そのため、エンドカンナビノイドシステムに作用し、さらにてんかんや不安障害にも有効性を示しているCBD(カンナビジオール)に期待が集まってきています。

実際に2019年に公開されたケースシリーズでは、脆弱X症候群を有する3名がCBDを使用することにより様々な症状において改善を認めたことが報告されています。

同じく2019年には、アメリカとオーストラリアの研究チームが合同でCBDゲルによるオープン試験を実施。脆弱X症候群患者20名に対しCBDゲルを12週間、2回/日で使用したことにより、不安や気分などが有意に改善したことが報告されました。なお、現在このCBDゲルの有効性を評価するために、二重盲検ランダム化比較試験が実施されています。

このようにポジティブな情報がある中で、実際に脆弱X症候群に対しCBD製品を使用している人はいるのでしょうか?今回報告された研究はその疑問に答えるものとなります。

今月6日、脆弱X症候群に対するCBDの使用状況を調査した結果がアメリカの研究者らにより報告されました。

このオンライン調査に回答したのは、脆弱X症候群を有する子どもの保護者25名。このうち60%(15名)がCBD製品を使用していたことが明らかとなりました。

この15名の子どもには全員知的障害があり、その程度はほとんど(93%・14名)が中〜重度でした。またほとんどが中〜重度の不安障害(87%・13名)・注意の問題(93%、14名)・過敏性(87%・13名)を抱えていました。他に認められていた症状は軽〜中程度のてんかん(20%・3名)・自閉症スペクトラム症(53%・8名)・攻撃性(80%・12名)や、軽度の自傷行為(60%・9名)、さらには軽〜重度の睡眠障害(60%・9名)など。ほとんどの人が多動性、不安、攻撃性などの緩和のために処方薬を使用していました。

CBD製品の使用により改善を期待した症状として最も多かったのは不安(87%・13名)で、次いでイライラ(67%・10名)、注意の問題(40%・6名)、過敏性(40%・6名)、睡眠障害(33%・5名)、攻撃性(33%・5名)などでした。

ほとんどの人がCBD製品を使用することにより様々な症状の改善を報告。最も改善が報告された症状は不安(80%・12名)でした。注意力に関しては60%(9名)が改善を報告しましたが、1名でわずかな悪化が報告されました。

全体としてCBD製品の使用により47%(7名)がとても良くなった、20%(3名)が良くなったと回答

各症状における改善は以下の通り。

CBD使用による脆弱X症候群の各症状の改善

使用していたCBD製品はアイソレートが33%(5名)、0.3%未満のTHC(テトラヒドロカンナビノール)を含んだフルスペクトラムが40%(6名)、ブロードスペクトラムが13%(2名)を占めていました(残り2名は不明と回答)。

使用方法は様々で、オイルやチンキ剤が20%(3名)、グミなどの食用が27%(4名)、カプセルや錠剤が27%(4名)、経皮使用が13%(2名)という結果に。87%(13名)がCBDを毎日使用していると回答し、使用歴としては1〜2年が67%(10名)で最も多くなっていました。

CBDの使用量は10〜275mg/日と回答者によりばらつきがみられました。なお、275mg/日と回答した人は、てんかん発作の抑制のためにCBDを使用していました。

CBD使用による副作用は2名において報告され、その内容はイライラと落ち着きのなさでした。

CBDを使用し始めた理由としては「他の治療や薬であまり効果がなかったため」「医療機関や友人などから薦められたから」「自然由来の成分だから」といった回答が多くみられました。

一方、全回答者のうち40%(10名)はCBDを使用したことがない、あるいは使用したことはあるが中断したと回答。使用しなかった理由としては「CBDについてよく知らなかった」「脆弱X症候群に役立つとは思わなかった」などが挙げられ、中断理由としては副作用や有効性がなかったことが挙げられました。

また、この調査の最後には自由回答欄が設けられており、以下のような回答がみられました。

「これまで試してきたどの薬よりも効果があります。もはや私たちはこれなしではいられません」

「CBDは我が子の人生を変えました。難治性で悪くなる一方だったてんかん発作が、CBDを使い始めて1ヶ月で減っていったんです。それからもう5年近く発作が出ていません」

廣橋 大

精神病院に勤める現役看護師。2021年初頭より大麻使用罪造設に向けた動きが出たことをきっかけに、麻に関する情報発信をするようになる。「Smoker’s Story Project」インタビュアー。

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