米国医師会、違法薬物の非犯罪化を支持

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現地時間6月12日、米国医師会(AMA)はシカゴで開催された年次総会において、違法薬物の非犯罪化を正式に支持する決議案を採択しました

米国医師会は世界で最も権威ある医学会の1つであり、全米の医師約24万人が会員となっています。米国医師会が発行している「Journal of American Medical Association(JAMA)」は、臨床医にとって欠かすことのできない医学雑誌として知られています。

今年の年次総会において、米国医師会の代議員は345対171で違法薬物の非犯罪化案を採択。この決議案では、「慎重に選択された結果を改善するために設計された、関連する一連の公衆衛生及び法律のより大きな改革の一環として、個人使用のための薬物所持に対する刑事罰を撤廃すること」が求められています。

この決議案は、米国医師会評議員会の報告書に記載されていた文言を変更したものとなります。報告書では、「個人使用のための薬物所持による犯罪行為を再分類する州及び連邦の政策の法的及び公衆衛生上の影響を監視し続けるべきである」とだけ記載されていました。

この文言の変更を提案したのは、米国依存症医学会(ASAM)のスティーブン・テイラー(Stephen Taylor)氏。米国依存症医学会は昨年に発表した声明において、違法薬物の非犯罪化に対して支持を表明しています。なお、同年には米国薬剤師会(APhA)も同様の考えを表明しました

米国医師会の代議員の一人であるライアン・イングランダー(Ryan Englander)氏は今回の決議について「私たちは何十年もの間、この国において薬物使用の危機から脱するために犯罪化を試みてきたが、うまくいかなかった。私たちはこれまでとは違う、より良く、実際に機能するものに移行する必要がある」と述べました

一方、オレゴン州では違法薬物の非犯罪化がうまく機能せず、今年4月には再び犯罪化する法案が承認されました。このことから、米国医師会の次期会長とされているボビー・ムッカマラ(Bobby Mukkamala)氏を始めとした一部の代議員は、違法薬物の非犯罪化案に反対する立場をとりました。

これに関して、イングランダー氏は「(それは)教訓となるが、ポルトガルの経験も同様だ。ポルトガルでは個人使用目的の薬物所持を非犯罪化、あるいは刑罰を撤廃したことで、実際に人々を治療に導くことができ、死亡率は低下した。したがって、我々が活用できる機能するモデルがある」と発言。

また、米国依存症医学会のテイラー氏は「非犯罪化が正しく行われれば、公衆衛生上の利益がもたらされるという証拠が実際に存在するからである。私たちは米国でそれが正しく行われているのをまだ目にしていないと考えている」と述べました。

違法薬物の非犯罪化は「薬物の使用はなくならない」という前提のもと、薬物使用者の人権や健康を守ることに焦点を当てています。近年世界では、このハームリダクションの考えに基づいた薬物政策を支持する動きが広がりつつあります。

国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は昨年、違法薬物の非犯罪化を緊急の課題とする声明を発表。さらに同機関は、刑罰による薬物政策が有害であることを訴えた報告書も発表しました。

また、世界薬物政策委員会(GCDP)も「機能する薬物政策に向けた5つの道筋」の1つとして、個人使用目的での違法薬物の使用と所持の非犯罪化を提案しています

国連麻薬委員会(CND)は今年3月、ハームリダクションに基づいた薬物政策の有効性を初めて認め、加盟国にこれを奨励する決議案を採択。これには世界の麻薬戦争に多額の資金を提供してきた日本も賛成票を投じています。

Marijuana Moment「American Medical Association Endorses Drug Decriminalization」https://www.marijuanamoment.net/american-medical-association-endorses-drug-decriminalization/

MedPage Today「AMA’s House of Delegates Says Yes to Drug Decriminalization」https://www.medpagetoday.com/meetingcoverage/ama/110619

UPI.com「American Medical Association delegates vote to decriminalize drug use, possession」https://www.upi.com/Health_News/2024/06/13/AMA-endorses-drug-decriminalization/9801718300625/

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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