25種類の高THC大麻抽出物の抗がん作用・抗炎症作用に関する研究結果

25種類の高THC大麻抽出物の抗がん作用・抗炎症作用に関する研究結果

- カナダの基礎研究

大麻にはカンナビノイドテルペンフラボノイドなどの様々な成分が含まれており、それぞれが医療効果を有しているとされています。

大麻そのものを使用するとこれらの成分を全て一緒に摂取することになりますが、それは時としてそれぞれの成分を単独で摂取するよりも、より大きな作用をもたらします。つまり一口に大麻と言っても、含まれる成分の違いや含有量などにより発揮される効果が異なってくる可能性があるということになります。

9月16日、25種類の大麻抽出物において抗がん作用・抗炎症作用を検証した結果、種類によって発揮される効果に違いがあることがカナダの研究者らにより報告されました。

25種類の大麻抽出物(#1〜#25)は全て高濃度のTHC(テトラヒドロカンナビノール)を含有しており(26.5〜36.9%)、他にもCBD(カンナビジオール)0.58〜3.62%、CBGA(カンナビゲロール酸)0.64〜1.71%といったカンナビノイドを含んでいました(それ以外のカンナビノイドは不明)。

テルペンは全体としてリモネンが最も多く、次いでβ-カリオフィレンが多く含まれていました。

抗がん作用の検証

抗がん作用は乳がん細胞株(HCC1806)を用いて検証。この細胞株に対し、25種の大麻抽出物を0.007、0.01、0.015μg/μLの濃度で使用した結果、全ての抽出物が濃度依存的に乳がん細胞株の増殖を抑制することが明らかとなりました(66〜92%)。なお、最も強力な抗がん作用を認めたのは#24でした(詳しくは記事の最後に記載)。

続いて120時間後に至るまでの効果を検証。0.015μg/μLの濃度では正常な細胞にも影響する可能性が認められたため、この検証は他の2つの濃度(0.007μg/μL、0.01μg/μL)で、#21〜#25においてのみ実施されました。その結果、120時間後にはがん細胞の増殖がより抑制され、ここでも#24は96.5%という最も高い抑制効果を示し、加えて正常な細胞にもほとんど毒性を示しませんでした。

次にこの抗がん作用がTHCによるものなのかが分析されましたが、大麻抽出物の抗がん作用とTHCの含有量との間に相関関係は認められませんでした。実際にTHC単独による抗がん作用を検証したところ、乳がん細胞株に対する抑制作用は最大45%であり、研究で用いられたいかなる大麻抽出物よりも劣ることが示されました。つまり、大麻抽出物に認められた強力な抗がん作用はTHCのみでは説明できないということになります。

なお、用いられた大麻抽出物の抗がん作用とカンナビノイド総含有量との間でも相関関係は認められず、CBGAにおいてのみ若干ながら正の相関関係が認められました。

抗炎症作用の検証

抗炎症作用の検証はTNF-α(腫瘍壊死因子)、IFN-γ(インターフェロン)といったサイトカインによって炎症を誘発させた肺線維芽細胞(WI-38)を用いて実施。有効性の評価は炎症を誘導する酵素COX-2(シクロオキシゲナーゼ)や炎症性サイトカインIL-6(インターロイキン)を測定することにより行われました。

その結果、炎症を抑制(COX-2、IL-6を減少)した大麻抽出物は一部であり、多くが逆に炎症を増悪させたことが示されました。

続いて小腸上皮細胞(HSIEC)においても検証を実施し、細胞株の種類で作用が異なるのかが調べられました。ここでは全ての大麻抽出物ではなく、肺線維芽細胞に対し優れた抗炎症作用を示した5つの抽出物(#2、#7、#17、#19、#24)が用いられました。

これにより、この5つの大麻抽出物が小腸上皮細胞よりも肺線維芽細胞に対し優れた抗炎症作用を示すことが明らかとなり、特にCOX-2に対する効果は顕著で、平均して3.5倍の減少を認めました。

抗がん作用と同様、THC単独で肺線維芽細胞に対する抗炎症作用を検証した結果、0.00314 μg/μL(10μM)までの濃度では抗炎症作用が認められましたが、それ以上の濃度ではCOX-2やIL-6は増加するという結果に(炎症増悪)。前述の5つの大麻抽出物はTHCが0.00314 μg/μL(10μM)以上含有された量でも抗炎症作用を認めていたため、これらの抽出物による抗炎症作用もTHCのみでは説明できないことが示されました。

有効成分の同定と成分間の相互作用

使用した大麻抽出物に認められた抗がん作用・抗炎症作用と総カンナビノイド、あるいは個々のカンナビノイド(THC、CBD、CBGA)との間に有意な関連性は認められませんでした。

テルペンも同様に、抗がん・抗炎症作用とテルペンの総量との間で相関関係が認められませんでした。個々のテルペンにおいては、抗がん作用ではテルピネンとの間に、抗炎症作用ではIL-6の減少とシミン、ミルセンとの間にわずかな正の相関関係があることが示された一方、カンファーと抗炎症作用との間では負の相関関係があることが示されました。

続いて、個々のカンナビノイドとテルペンとの間の相互作用を検証。この検証は抗炎症作用(IL-6の減少)においてのみ行われました。その結果、CBDではα-ピネンと、CBGAではシミン、テルピノレン、リナノールとの間に正の相関関係が認められました。逆にCBGAではイソプレゴールとミルセンとの間で負の相関関係が認められました。THCと個々のテルペンとの間では特に関連性が認められませんでした。

なお、含有されるカンナビノイドやテルペンなどにより25種類の大麻抽出物をグループ分け(クラスター分析)した結果、10種類の抽出物が1つのグループに分類される一方、最も高い有効性を認めた#24と同じグループに分類される抽出物はありませんでした。

まとめ

以上の結果をまとめると

抗がん作用(乳がん細胞株)

・高THCの大麻抽出物全てにおいて抗がん作用が認められたが、この作用はTHCのみでは説明できなかった。

・全体として、大麻抽出物の抗がん作用とカンナビノイド濃度との間に相関関係は認められなかった。ただしCBGAが作用を増強している可能性はわずかに示された。

・テルペンでは、テルピネンが抗がん作用を増強している可能性がわずかに示された。

抗炎症作用(肺線維芽細胞・小腸上皮細胞)

・高THCの大麻抽出物は一部で抗炎症作用を認めたが、逆に悪化をもたらすものもあった。この作用もTHCのみでは説明がつかなかった。

・これらの抗炎症作用は、腸よりも肺に対し特異的であった。

・抗炎症作用とカンナビノイド濃度との間に相関関係は認められなかった。

・テルペンでは、シミン、ミルセンで抗炎症作用を増強するわずかな可能性、カンファーで炎症を増悪させる可能性が示された。

・CBDとα-ピネン、CBGAとシミン、テルピノレン、リナロールの組み合わせで、抗炎症作用が増強される可能性が示された。

これらの結果に対し研究者らは「25種類の大麻抽出物を調べても、有効成分や成分間の相互作用を明確にするには、まだ不十分のようだ」と述べています。

今回の研究ではTHC、CBD、CBGA以外のカンナビノイドや、他にもフラボノイドなども同定されていなかったため、これらの成分も含めた検証が必要になると考えられるでしょう。もしくは、まだ明らかとなっていない大麻成分が有効性を示している可能性も否定できません。

最後に、この研究で最も高い有効性を示した大麻抽出物#24に含有されていたカンナビノイドとテルペンについて記載します。全ての抽出物について知りたい方は、論文内に記載があるため、そちらをご参照下さい。

カンナビノイド

THC30%弱、CBD・CBGA5%未満(棒グラフによる表記のため、明確な数値は不明)

テルペン(計33.15μg/μL)

イソプレゴール 0.54
オシメン 0.16
β-カリオフィレン 1.25
カリオフィレンオキシド 1.67
カレン 0.2
カンファー 0.78
カンフェン 0.46
グアイオール 2.99
ゲラニオール 0.13
シネオール 0.48
シメン 0
α-テルピネン 0
γ-テルピネン 8.47
テルピノレン 0.28
ネロリドール(シス型) 0.03
ネロリドール(トランス型) 0.02
バレンセン 0.59
ビサボロール 2.28
α-ピネン 1.5
β-ピネン 2.8
フェンコン 0.29
フムレン 0.06
ミルセン 4.08
リモネン 2.78
リナノール 1.31

廣橋 大

精神病院に勤める現役看護師。2021年初頭より大麻使用罪造設に向けた動きが出たことをきっかけに、麻に関する情報発信をするようになる。「Smoker’s Story Project」インタビュアー。

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