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大麻合法化後のカナダ、急性精神症状による受診率に影響与えず

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カナダでは嗜好用大麻の合法化前後で、大麻由来の精神病や統合失調症による救急外来の受診件数に有意な変化は認められなかったと示す論文が、The Canadian Journal of Psychiatryに掲載されました。

カナダは2001年に医療用大麻を合法化し、2018年10月に嗜好用大麻を合法化しています。

大麻と精神病に関する論文は数多くあり、そのほとんどが大麻は精神病や統合失調症を引き起こす要因の1つになると指摘しています。この因果関係を検証するために、カナダで調査が行われました。

2015年4月1日〜2019年12月31日の期間、カナダのオンタリオ州(640万件/年)とアルバータ州(230万件/年)の救急外来のデータをもとに分析・評価されました。

2015年4月から2019年12月にかけ、大麻由来の精神病による受診件数は倍増したものの、統計分析の結果、嗜好用大麻の合法化による有意な変化は認められなかったといいます。

ただしこれらの州では、大麻の使用率は増加したものの(アルバータ州2.9%増、オンタリオ州2.0%増)、毎日あるいはほぼ毎日大麻を摂取する人の割合は、合法化前後でほとんど変化がありませんでした。

また合法化直後は、大麻を違法販売していた小売業者が正式な免許を取得するために閉店したり、政府公認の大麻が闇市場より高価であった等の影響により、大麻製品へのアクセスがしにくかったことがデータに影響されている可能性があると指摘しています。

さらに、今回の対象時期では「Cannnabis1.0」の規定により、政府公認の店でオイルと乾燥大麻しか購入できませんでした。2020年からは「Cannabis2.0」が運用されており、高濃度のTHCを含有する製品も購入できるようになっているため、現在ではまた違う結果になるかもしれないと説明しています。

多くの論文では、大麻を使用している人の一部が統合失調症を発症するリスクがあると指摘しています。その一部に関連があるものとして、遺伝的要素・未成年の使用・幼少期の虐待・高濃度のTHCを含有した大麻の頻繁摂取などが挙げられています。

2022年1月11日に発表された最新のメタ分析では、12〜18歳の思春期の大麻の使用は、統合失調症の発症リスクを有意に増加させると示されています。

現在カナダでは18歳以上の成人であれば、制限内で大麻の所持・栽培・購入が認められています。

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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