大麻成分CBD、緑内障の治療薬として有効となる可能性を示す

大麻成分CBD、緑内障の治療薬として有効となる可能性を示す

- アメリカの基礎研究

緑内障とは、眼圧の上昇や視神経の脆さなどにより視神経が障害されることで視野障害をきたす疾患で、日本において失明の原因の第一位となっています。

眼圧の上昇は房水の流れが滞ることにより生じます。房水は水晶体や角膜に栄養・酸素を供給したり、老廃物を除去したり、眼球の形状を保つなどの役割を果たしています。

房水は毛様体で生成され、役割を果たした後、線維柱帯を通り、シュレム管から静脈系へ排出されます。この流れに異常が生じると、行き場を失った房水により眼圧が上昇し、視神経が圧迫されることで障害がもたらされます。

これまでの研究において、緑内障に対する大麻の有効性は主にTHC(テトラヒドロカンナビノール)において報告され、他にもCBN(カンナビノール)において報告されています。

そして今年9月27日、CBD(カンナビジオール)が房水の排出を促進し、緑内障の治療薬として有効となる可能性を示したことがアメリカの研究者らにより報告されました。

まずはじめにこの研究では、豚の眼球を用いて、CBD(1μM)が房水の排出に及ぼす影響を検証。その結果、ビヒクル(有効成分のない対照物)と比較し、CBDでは1時間後の房水排出量が2倍以上に増加し、この作用は5時間持続することが明らかとなりました。つまりこれは、CBDが眼圧を低下させ、緑内障の治療薬として有効となる可能性があることを意味しています。

続いて、線維柱帯におけるCBDの影響を検証。線維柱帯とは、房水の排出において主要な役割を果たしている網目状の組織です。この部分が目詰まりを起こすと房水の排出が滞り、眼圧の上昇がもたらされます。実際に緑内障の手術では、この部分を切除する術式が最も多く適応されています。

検証の結果、CBDは線維柱帯の収縮力を弱めることが明らかとなり、この結果はCBDが房水の流出を促進した理由を説明するものとなりました。

さらにこのメカニズムを詳しく調べた結果、CBDは線維柱帯におけるミオシン軽鎖(MLC)とミオシン軽鎖ホスファターゼ(MLPT1)といったタンパク質のリン酸化を抑制し、Rho(ロー)キナーゼと呼ばれる酵素の働きを阻害することによって、線維柱帯の収縮を弱めたことが示されました。

緑内障の治療薬の1つに「グラナテック」という点眼薬がありますが、この点眼薬はRhoキナーゼを阻害することで房水の排出を促進し眼圧を低下させます。つまり今回の研究では、CBDもこれと似たような作用により房水の排出を促進させたということになります。

マウスにおける過去の研究では、CBD使用により眼圧が不変あるいは低下したことが報告され、また逆に高濃度(5mM)では眼圧の上昇がもたらされたことも報告されています。これに対しては、今回の結果を含めて研究者らは「眼圧に対するCBDの作用は用量・濃度によって異なる可能性がある」と述べています。

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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