大麻成分CBDが外傷性脳損傷ラットの死亡率を低下させ、回復を促進

大麻成分CBDが外傷性脳損傷ラットの死亡率を低下させ、回復を促進

- メキシコの基礎研究

2022年8月2日、大麻成分CBD(カンナビジオール)の事前投与により外傷性脳損傷ラットの死亡率が低下し回復が促進されたことがメキシコの研究者らにより報告されました。

脳は重要な部位であることから頭蓋骨や髄膜と呼ばれる膜に囲まれ、普段から固く守られています。

ですが、交通事故などの不慮の事故、格闘技やアメフトなどのコンタクトスポーツ、他にも転倒や転落などにより外部から頭部に強い力が加わると、脳組織がダメージを受けてしまいます。これを外傷性脳損傷(TBI)と呼びます。

脳震盪など一時的な障害ならともかく、損傷部位や程度によっては永久的な障害が残る場合があり、最悪の場合は処置が遅れると死亡するリスクもあります。

TBI後ではグルタミン酸の放出が急増し、それが予後や障害に関係することが指摘されています。グルタミン酸は神経細胞を興奮させる作用を持つ神経伝達物質ですが、放出が過剰な状態が続くと毒性をもたらし、二次的にてんかんパーキンソン病などを発症する原因となってしまいます。

大麻の主な成分の1つであるCBD神経保護作用を有することで知られていることから、今回重度TBIラットに対するCBDの有効性が検証されました。

この研究はCBDの事前投与(経口にて50mg/kg、100mg/kg、200mg/kgの3パターン)が重度TBI後のグルタミン酸放出にどのように影響するのかに焦点が置かれ、それにより死亡率や感覚運動機能障害、体重減少に変化が生じるのかが評価されました。感覚運動機能の評価にはNeuroscoreが用いられ、27〜28点は正常、15点以下であれば重度の感覚運動機能障害と判断されました。

※感覚運動機能と体重を評価?

重度のTBIでは直後から数日間に渡り感覚運動機能障害が認められ、その後徐々に回復していくが、一部では永久的な障害が残ることがある。また、食欲を調節する中枢が障害されることにより代謝が亢進するなどして、体重減少が認められることがある。

その結果、CBDの事前投与はTBI直後からグルタミン酸の過剰放出を抑制し、その効果は長期(30日間)に渡り認められました。この効果は特にCBD100mg/kgの摂取により顕著にみられました。

短期(TBI処置2日後)においては、CBD群と対照群(ココナッツオイル投与群)で共に感覚運動機能の低下(CBD50mg:16.4点、100mg:14.7点、200mg:15.1点、対照群:13.6点)、体重減少(CBD50mg:-6.1%、100mg:-7.7%、200mg:-9.6%、対照群:−9.7%)が認められましたが、死亡率はCBD群で有意に低くなっていました(CBD50mg:22%、100mg:22%、200mg:36%、対照群:50%)

長期(TBI処置28日後)においては、CBD群は対照群と比べ有意に感覚運動機能の改善(CBD群:22点、対照群:17.6点)、体重増加(CBD群:39.4%、対照群:21.6%)、死亡率の低下を認めました(CBD群:22%、対照群:36.3%)

研究者らは「今回の結果は重症TBIにおいてCBDが短期および長期に渡り神経保護作用を有していることを示しており、軍人やコンタクトスポーツの選手などTBIを発症するリスクがある人々にとって有益となる可能性がある」と述べています。

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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