バヌアツ共和国、輸出を目的とした医療用大麻・ヘンプ栽培に関する法案を可決

オーストラリアのケアンズから東に約1,800kmに位置し、83の島々が南北に約1,200kmの範囲で広がる群島国「バヌアツ共和国」。おそらく日本人にとって馴染みが薄いであろうこの共和国は、豊かな大自然や美しい海に囲まれながらも、島によって立派な宿泊施設も備えられており、「南太平洋の楽園」とも言えるリゾート地として知られています。

そんなバヌアツ共和国の政府は2月8日、医療用大麻とヘンプの輸入、栽培、加工、輸出に関する法案に署名。

バヌアツはすでに2021年、輸出目的で医療用大麻とヘンプの栽培を可能にする法案を可決しており、今回の法案ではその具体的内容が規定された形となります。

法案によれば、医療用大麻において2種類、ヘンプにおいて3種類のライセンスが運用されますが、取得できるのはこれらの栽培経験が10年以上ある事業者に限られています。

つまり、現時点においては、以前から大麻産業に従事している海外事業者しか参入できないということ。経験豊富な海外事業者のもとで高品質な大麻を生産する一方、バヌアツの人々はこれらのノウハウを学び、10年後の未来に活かしていくようです。

ライセンスの有効期限は10年間で、取得には各ライセンスにつき1,000万バツ（約1,132万円）の費用が必要で、さらに毎年更新料として同額の追加費用がかかります。

また、栽培は全ての島でできるわけではなく、医療用大麻はエファテ島、サント島、マレクラ島の3島、ヘンプはエファテ島、サント島、マレクラ島、タンナ島、エロマンゴ島の5島でのみ栽培が許可されます。

なお、大麻の栽培は輸出目的のみに限定されており、自国内に向けた栽培や販売は許されていません。

バヌアツ農業局長兼医療用大麻・ヘンプ諮問委員長のモーゼス・アモス（Moses Amos）氏は「政府は自国で利用可能な代替資源にとりわけ注目しており、それらの1つが医療用大麻とヘンプである」「これらは、私たちが利用し発展させていくことで将来性のある輸出商品となり得る資源であり、国にわずかな収入をもたらすだろう」などと述べ、外国からの投資を目的としていることを地元メディアに明かしています。

一方、今回の可決に対し反対の声も聞かれています。タンナ島タフィア県農業局長のサム・ナイウ（Sam Naiu）氏は、今回の政策は国に経済的な利益をもたらすものの、薬物乱用を招く恐れもあるとし、「バヌアツは地元の根菜類すら輸出していないのに、今回、マリファナのようなリスクをもたらすものを輸出しようとしている」などと述べています。

バヌアツ政府は2018年、糖尿病患者を対象に大麻製品を用いた臨床試験を実施するとしたアメリカの製薬会社フェニックス・ライフ・サイエンス（Phoenix Life Sciences International）からの提案を非公式に承認しましたが、この計画はフェニックス社の創業者マーティン・ティンダル（Martin Tindall）氏がアメリカで証券詐欺で逮捕されたことにより中止となっています。