ペンシルベニア州、医療用大麻使用の主な理由は「不安の緩和」

ペンシルベニア州、医療用大麻使用の主な理由は「不安の緩和」

- 米ペンシルベニア州の横断的研究

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10月13日、米ペンシルベニア州の医療用大麻使用者に対しオンライン調査を行った結果が同州の研究者らにより報告されました。

現時点でペンシルベニア州は医療用大麻のみ合法となっており、嗜好用大麻は違法となっています。医療用大麻はアメリカにおいて37州・4準州・ワシントンD.C.において合法化されていますが、場所により適応疾患が異なっています。不安障害が適応となる州は限られており、ペンシルベニア州はそのうちの1つの州となっています。

今回のオンライン調査は2021年6月から7月にかけて行われ、有効回答者数は202名。平均年齢は36.7歳で、男性が61.4%を占めました。

医療用大麻による治療を目的とした疾患・症状の数は1人につき平均2.3。最も多く報告された主要適応疾患は不安障害(50.1%)で、次いで重度の慢性・難治性疼痛(22.3%)、PTSD(7.9%)。併存する疾患も不安障害が最も多く(69.3%)、PTSD(25.7%)、重度の慢性・難治性疼痛(25.7%)が後に続きました。

ただし、67.8%がメインではないものの痛みの緩和も目的として大麻を使用していたことを報告。このうち60.6%が首・背中の痛み、32.1%が頭痛・偏頭痛、30.6%が関節痛、23.3%が神経障害性疼痛の緩和のために大麻を使用していました。

医療用大麻の平均使用期間は約4.5年で、59.4%が1日に複数回使用、24.8%が週に6〜7回の使用を報告。大多数(89.6%)が全草リキッドおよびカンナビノイド濃縮物を気化し摂取していました。

最も有効だと報告した大麻の種類はTHC単体のもの(39.1%)、THC優位のもの(36.6%)が多く、CBD単体のもの(1.0%)、CBD優位のもの(2.5%)は少数となりました。また38.1%がハイブリッド、32.2%がインディカ優位、15.3%がサティバ優位の株を好んでいました。

※インディカ、サティバ、ハイブリッドとは

大麻草は品種によりインディカ種、サティバ種、ハイブリッド種の3種類に分けられる。

インディカはリラックス作用が強く落ち着く作用があるが、サティバは逆に高揚感により活動的になるとされている。ハイブリッドはインディカ種とサティバ種をかけ合わせた種のことをいう。

最近では、これらのネーミングは適切ではないとの指摘も存在する。

医療用大麻の耐性については、36.6%が「なし」、40.1%が「耐性はあるが使用方法、種類、量を変えることで対応」、23.3%が「耐性はあるが使用方法、種類、量は特に変えていない」と回答。

医療用大麻の有効性についての問いでは、目的とした疾患・症状が平均して79.2%改善したことを報告。また、メインの疾患・症状以外にも不安(74.8%)、睡眠(72.8%)、抑うつ(60.4%)などにも有効であるといった回答がみられました。

医薬品との比較では、48.5%が「大麻のほうがよく効く」、16.8%が「大麻のほうがややよく効く」、21.3%が「大麻しか効かない」と回答。

副作用や望ましくない作用を報告したのは5.5%で、不安、記憶障害、知覚の変化、吐き気などが挙げられました。ただし、81.2%が「副作用を理由として大麻の使用を制限することはない」と回答。

一方で、58.9%が「大麻に望ましくない作用はない」と回答し、「他の医薬品のほうが副作用がかなりひどい」(28.2%)、あるいは「ややひどい」(6.9%)と回答しました。

また、この研究では医療用大麻の使用によりたばこやお酒の消費量が変化したかについても調査。統計的に有意な変化は認められなかったものの、飲酒(133人)あるいは喫煙(65名)習慣のある人のうち、44%がアルコール及びたばこの摂取量が減ったと報告しました。

一般的に医療用大麻の使用理由として最も多く報告されているのは「痛み」です。ですが今回のペンシルベニア州での調査では、参加者は多くないものの、不安障害が最も多い適応疾患となっていました。医療用大麻ライセンス取得に必要な資格条件がない唯一の州であるオクラホマ州における調査でも、医療用大麻の適応疾患・症状として最も多かったのは、不安を中心とした「心の問題」でした。

これらの結果には、州ごとで医療用大麻の適応疾患が異なることや、新型コロナウイルスの流行が関係しているのかもしれません。

廣橋 大

精神病院に勤める現役看護師。2021年初頭より大麻使用罪造設に向けた動きが出たことをきっかけに、麻に関する情報発信をするようになる。「Smoker’s Story Project」インタビュアー。

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