ニューヨーク市(NYC)のビル・デ・ブラシオ(Bill de Blasio)市長と保健省は、全米で初めて薬物依存症の人々を救うためにハームリダクションの考えによる監視の下で違法薬物を使用できる施設を現地時間11月30日から利用できることをニューヨーク市公式ホームページで発表しました。
このOPC(Overdose Prevention Center:過剰摂取防止センター )と呼ばれる施設では、清潔な注射針の提供をすることで感染症を防いだり、人のいないところで薬物を摂取するのではなく施設に来てもらうことで過剰摂取を防いだり、様々な相談に乗ることが可能になり、医療の提供、依存症の治療につなげることができます。
現在、米国では処方箋薬である合成オピオイドの蔓延、過剰摂取による死者が急増しており、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)の最新のデータによると直近の1年間で約10万人が米国内で死亡しており、2021年は過去最悪の年となっています。
「ニューヨーク市は、COVID-19に対する全米の戦いをリードしてきましたが、コミュニティの安全を守るための戦いはそれだけにとどまりません。徹底的に調査した結果、我々は市の最も弱い立場にある人々を守るための正しい道筋を知りました。私たちは躊躇することなくその道を歩んでいきます。薬物使用施設は、オピオイド危機に対処する安全で効果的な方法です。何十年も失敗してきたこの国の都市に、よりスマートなアプローチが可能であることを示せることを誇りに思います」とニューヨーク市長はプレスリリース内で述べています。
この施設は、反対派からは薬物乱用の温床と見られていますが、賛成派からは効果的に依存症に対処できると評価されています。ニューヨーク市は、他国の同様の施設は過剰摂取による死亡を防ぐことが証明されていると述べています。
残るは、米国連邦政府がこの施設に対してどのような行動に出るかです。フィラデルフィア市が薬物使用施設を開設しようとした際には、司法省は開設を阻止するために訴訟を起こしました。現在もこの訴訟は続いており、判断は司法省に委ねられています。
米国にはクラックハウス法と呼ばれる連邦政府によって規定された法律があり、規制物質法によって禁止されている物質の製造、流通、使用を目的とした場所を故意に開設、賃貸、賃借、使用、維持することを重罪としています。
ニューヨーク市長は、「命を救うことがより重要である」と明確に述べています。
米国保健福祉省のトップであるザビエル・ベセラ(Xavier Becerra)長官は最近受けたインタビューの中で、薬物依存症の人々を救うために「待っていられないところまで来ている」と述べ、違法薬物使用施設を容認することを示唆しています。(インタビュー後、保健福祉省の広報担当者によって現在進行中の訴訟の問題であると発言を撤回)